トップ «前の日記(2009-08-04 [J]) 最新 次の日記(2009-08-24 [J])» 編集

さらしものな日記

2004|10|11|12|
2005|01|03|04|08|09|10|12|
2006|01|03|04|05|06|07|08|10|11|
2007|01|02|05|06|07|08|09|10|
2008|07|08|09|10|11|12|
2009|01|02|04|05|06|08|09|10|
2010|02|03|
2012|09|
2013|08|

2009-08-22 [J] 「任務、完了」

_ 長年の懸案事項だった、「新機動戦記ガンダムW」全LDのDVD化を、夏休みのうち3日を費やして一気に完了しました。

思えば、「バイファム13」に始まり、「ガラット」「ダグラム」「ザブングル」「エスカフローネ」「Vガンダム」等のLDを、パソコンでキャプチャし、レーベル表示やおことわりなどの不要な部分を削除し、DVD−Rに書き込んできたわけですが、パソコンのHDDが小さいのでキャプチャした動画ファイルを残しておくわけにも行かず、書き込んだDVD−Rが正常に動作することを確認した上でHDD上の動画ファイルを削除するしかなく、結果、キャプチャ→編集→DVD作成→DVD視聴までを集中してこなす必要があるため、時間のあるときにしか実施できません。で、残る2作品のうち、(春頃に感じた嫌な思いを払拭するためにも)今回は「ガンダムW」を選んで、作業を行ないました。

_ 都合、(いつもの事ながら)3日間ぶっ通しで「ガンダムW」を観る(か、キャプチャやDVD作成のタイミングで空いた時間はもちろん高校野球や世界陸上、バレーボール等を観る)ことになりましたが、いい作品はついつい観続けてしまいますね。

_ 結果的に女性向けとなってしまった主人公キャラ達やトンデモ展開のオンパレード、エキセントリックな各登場人物の奇行や、そこかしこにあふれるガンダムパロディ等々、賛否両論、特に宇宙世紀のファンの間ではいろいろ非難轟々言われ続けている「ガンダムW」ですが、この作品程ストレートに「世界平和」を視聴者に突きつけているガンダム作品はないと思っています。作品内でも直接、各キャラがうるさいほどに口にしているでしょう? その一点において、ガンダムという枠の中では貴重な存在なのではないでしょうか?

なんだかんだといって、ガンダムは戦闘を、戦争を必要悪として半ば肯定してしまうところがありますからね。紛争根絶のために武力介入する人達だって、結局は戦闘行為でしか解決手段を持たないわけですし。ガンプラも売りたいでしょうしね。

そんな中、「ガンダムW」においては放送話数のかなりの期間を一貫して、敢然と世界平和の理想を掲げ続ける登場人物がいます。我らがヒロイン、リリーナ様です。他のガンダム作品との決定的な差は、リリーナ様の存在の有無、この一点に尽きます。そう、きっぱり言い切ってしまいましょう。「ガンダムW」とは、「リリーナ様の物語」なのです。

遊びたい盛りにパパにくっついて宇宙に行くも遊ぶ時間もなくつまんなかったとシャトルの中で愚痴る帰り道、いきなり流星に偽装したテロリストの銃口が向けられるところから話が始まります。そうです。いきなり命を狙われるヒロインなのです。地球に戻ってもパパは相手にしてくれず、グレる寸前と自己申告するリリーナ様の前で、海岸に打ち上げられたドザエモンが自爆→失敗→自分を救うはずの救急隊を張り倒し→救急車を奪って逃走。学校に行ってみれば例のドザエモンがやってきて「お前を殺す」。こうやって書き出してみたら、知らない人はまさかこのドザエモンが主人公ヒイロ=ユイで、これだけ並べた内容がたった「第一話」だけの内容(の、しかも半分くらい)だとは思うまい。

この様にスピーディなのに濃厚な展開かつ異色な人間関係で話が進むのですが、ガンダムWの巧みなところは、「人を殺めることしかできない」ヒイロと、「人を殺めることができない」リリーナ様の、最終的な目標が共に「世界平和」ということです。

回を重ねるにつれ、任務のため人を殺め、任務のため破壊と殺戮を続け、ついにはその任務を全うする形で自爆し、自らの命すらも奪うことを厭わなかったヒイロ。対照的に、父をテロで奪われ、敵を討つチャンスで引き金を引いてもなお人を傷つけることのなかったリリーナ様。彼女は自分の出生の秘密を知り、協力する者が現れ、徐々に一族の願いであり内なる想いでもある「完全平和主義」に目覚めていく。そう、彼女とて、物語の最初は結構乱暴な考え方をしていたわけで、話が進んでいくにつれて、きちんと自我が整っていくように描かれています。そのペースが異常に早いので、視聴者は追いつくのが大変ですが(笑)。

やがて、「完全平和主義」が、サンクキングダムという国家として一つの形になろうとしていたが、異常に早い物語の展開のせいで、あっという間に、今ある世界のかたちと矛盾していることにさっさと気づく。形あるものを自ら投げ捨て、利用されるかもしれないことを覚悟の上で、彼女は「世界女王」の座にのぼりつめる。これも、異常に早い物語の展開のせいで、あっという間に失脚してしまうが、「国を作って理想ばかり唱えていてもダメ」「世界を強引にひとつにまとめて力で押さえつけてもダメ」こうやってリリーナ様は完全平和主義の実現の方法を一つ一つ学んでいくこととなるのです。本放送当時はみんなこのトンデモ展開の速さに「メチャクチャだ」「ジェットコースターな感じでおもろい」など、それこそ賛否両論飛び交ってましたが、リリーナ様が着実に成長していることを感じ取って、その成り行きを重点的に楽しんでいこうと思った視聴者はどれだけいたんでしょうかね? 「デュオ〜」とか「カトルさまラブ〜」とかいうのはよく見ましたが。

そして、最後は兄の愚行を止めにあがった宇宙で、戦争の悲惨さを肌身に感じることになるのです。サンクキングダムの戦闘やらなにやらいろいろあったので、初めて見る戦場というわけではなかったのでしょうけど、戦うことでしか自分を表現できない、血を分けた兄と、最後の最後まで不思議な関係だった、生粋のテロリストにしてちょっと気になる同級生との、無意味にさえ思える最後の戦いを見て、この物語の中で最も胸を痛めることになるのです。ここで初めて本当の「戦争の悲しみ」を味わってしまったのかもしれません。よく当時は「最後はリリーナ様は普通に戻っておもしろくなかったよな」とか「世界女王から落ちぶれたなぁ」とか言われていましたが、ここが、この時に受けた悲しみこそが、戦争終結後の彼女の行動理念になっていくのだと思うと、とても重要な展開だったと言って間違いないでしょう。ラストシーンは微笑ましいものでしたが、これらのリリーナ様の歩んだ道の結果がきちんと示されていたので、とても好感の持てるものでした。手渡ししろよヒイロ。第一話ではリリーナ様はお前に手渡ししたぞ?

_ そして、舞い込んできた「OVA」のうわさ。もしかしたら放送終了時点で発表されていたのかもしれませんが、少なくともエンディングからガンダムXの予告までの間に「OVA決定」のような感動の余韻をぶち壊す無粋な一コマはありませんでしたので、後日知ったときは驚きましたっけ。

_ OVA「Endress Waltz」は、綺麗な作画、リファインされたMS、各主人公の過去がわかる等、これまた話題騒然でしたが、もしこれらの内容に終始していたとしたら、今私はこれほど「ガンダムW」を推すこともなかったかもしれません。このOVAも、間違いなくリリーナ様の活躍と成長の結果がはっきりと示された、由緒正しき「ガンダムWの続編」だったのです。

_ 戦争終結1年後に武装蜂起したマリーメイア軍。その象徴として祭り上げられたマリーメイアに対して、外交次官の執務中に捕らわれの身となったリリーナ様は、戦争の無意味さ、むなしさをひたすら説いていく。彼らが元「世界女王」の地位・肩書きを利用しようとしたことと対照的に、リリーナ様は肩書きなどではなく、世界女王の経験も含めた、物語の中で学び培ってきたことを最大限発揮しようと、捕らわれの身でありながら努力します。そして、あるひとつの思いにたどり着きます。この時のリリーナ様のお言葉「私は間違っていました。〜」から、全世界の人々へ向けたメッセージ(途中で遮られてしまいますが、その意味を遮ることはできなかった)は大変秀逸で、ここまで付き合った視聴者には悶絶モノの喜びでしょう。普段から「あなたは間違っています」が口癖?のリリーナ様が、完全平和主義に足りなかった最後のピースを、ついにこの究極の状態で見つけ出したのです。

世間ではやれ「ウィングゼロの羽根が美しい〜」だの「火消しのウィンドって誰だ?(笑)」だの、いろいろ話題に事欠かないOVAとして捉えられていますが、リリーナ様の物語が、正しく成長・行動した結果としてきちんと完了し、(嘘のようですが)以降の歴史でモビルスーツは作られなかった、と締めくくることのできた、素晴らしい物語の結末だったと思います。MSがなくなった… これを言い切ったガンダムの物語がかつてあったでしょうか? OVAまで待たなければならなかったのがわずかに残念ですが、終わることのない戦いの歴史「Endress Waltz」をリリーナ様の決死の呼びかけと、その声に呼応した人々の決心と行動が断ち切った、ということに、この作品の比類なき価値を感じることはできないでしょうか?

_ ガンダムWで貫徹したテーマ「世界平和」は、非常に難しいことです。現に、今の世の中はモビルスーツがなくとも「Endress Waltz」なのですから。でも、可能性がないわけではないこと、そして、その方法のひとつが、(展開が乱暴とかジェットコースターとか散々言われた)この作品できちんと提示されているのです。私達はリリーナ様の声を聞きました。決心するか、行動するかは私達次第なのです。

_ あ、映画「Endress Waltz特別篇」も観ましょうね。ただのOVAの寄せ集めとあなどることなかれ。実はリリーナ様の声だけでは少し弱かったというのが明らかになりますから。「私の知っている男は墓の下か、あそこにしかいないわ」これも名台詞ですなぁ。

_ ね? やっぱりリリーナ様の物語でしょ? まあ、もしおっさんの物語でも、へたれ王子の物語だったとしても、この一貫したテーマ「世界平和」が完結する形で描かれていれば、やはり私は「ガンダムW」のファンになるでしょうけど、あの世界ふし○発見でわくわ○動物ランドなエンディングも含めて、やはりリリーナ様でなければありえないですね。以前どこぞの王女さまについて「セカンドシーズンで出すべきではなかった」と言った時の想いを、この文章で少しでも汲み取っていただければ幸いです。

_ よし、とっても長いがそれなりに思いがまとまったぞ。さて、残るLDは「マクロス7」シリーズのみとなりました。LDプレーヤーもくたびれつつあるので、ある程度急がなければいけないのですが、枚数も多い(TV第1巻が2枚、第2〜13感が1枚、アンコール、映画、OVAが4枚)ので、なかなか踏ん切りがつかない状態です。はてさて、DVD化はいつになることやら。「銀河よ、オレの歌を聴けーっ!」

お名前:
E-mail:
コメント:

README日記の書き方