銀河漂流バイファム13
へなちょこストーリーダイジェスト
第7話
「ううっ、お腹痛い…」
乗せる? 乗せない?
13人の大決断
「待って。もうちょっとで出る…」
「今なんか聞こえなかったか?」
「さぁな」
ロディとバーツは赤ちゃんの前でぼぉっと立っていた。
「待って。もうちょっとでできる」
一瞬デジャヴを感じる二人。
とにかく、カチュアがミルクを作ってくれなければ、彼らは何も
出来ないのだ。
いや、彼らはお腹のすいた赤ちゃん’Sを取り押さえるという、
崇高にして重要な役割を担ってはいるのだが… やけに激しく泣く
赤ちゃん’Sを前に、なすすべのない二人。
その新米カップルに、さりげなくカチュアが提言する。
「お尻が濡れてるんじゃない? ロディの方だと思う」
「お、俺の方?」
「らしいぜ! ほれ、脱げ! さっさと脱げ!」
「え? な、何するんだ!?」
バーツのズボン脱がし攻撃に対し、三歩後ろへ逃げるロディ。
「ちょ、ちょっと待て、バーツ! 脱ぐ必要あるのか!?」
「隠してるってこともあるだろ? ほれ!?」
「後ろでそんな楽しそうなことしないでください!」
やけに激しく怒鳴りつけるカチュア。さすがは清純派。
その迫力にただひたすらに頭を下げるロディとバーツ。
「Jrってつけてくれなきゃわかんねーよ…」
「そういうなよ。俺達だって悪かったんだから」
いじけたバーツと、それを見守る優しげなロディに、カチュアは
容赦無くシャロン謹製ほ乳ビンを手渡す。
「はい」
「え? 俺達が?」
「そうよ、当番だもの。ほぉら、あなた達のパパですよ〜」
今度はやけに嬉しそうなカチュア。
もうついていけない二人だった。
「それにしてもカチュア、その子達をどこで見分けてるの?」
「お尻にアザがある方がバーツJr」
ギクッ!
「おいバーツ、お前アザがあるのか?」
「お、俺の事じゃねーよ! それにホクロの間違いじゃねーのか!?」
「慌てるところが怪しい! ちょっと見せてみろよ!」
「や、やめろって!!」
「もう! いい加減そんなうらやましいことはやめてくださいっ!」
やっぱり清純派、ご機嫌斜めのカチュアが割り込む。
ロディにとっては単なる割り込みでしかなかったのだが…
ふぅ… あぶないところだったぜっ!
でも、なんでカチュア、そんなこと知ってるんだ!?
何やら一人で勝手に焦っているバーツだった。
「どうしたんだ!?」
「まったく、せっかく寝かしつけたとこだってのによぉ。もう少し
静かに呼び出せねーのか?」
艦内放送で呼び出されたロディとバーツ。
「あんた達、それで遅れたの?」
マキの問いかけに、バーツなりの反論を試みた。
「そりゃもう大変だったぜ。また起きて泣かれりゃ壁にヒビ入るし、
ラウンドバーニアン食われたりすりゃたまったもんじゃねーからな。
で、スコットは?」
ごまかされた気もするが、マキはとりあえずありのまま答える。
「お腹が痛いんだって。やっぱりあのククトウシかククトヘビが…」
「だったらなんで俺達は大丈夫なんだ!?」
ケンツのするどい突っ込みに対して、
「ウナギの蒲焼きとかは駄目なのよ、スコットの身体。昔からそう
だったわ…」
と、クレアがさらりと&理不尽に会話を流す。
実はこの旅を通して、彼らの消化器官が日々頑丈になっていった
という事実を、闇に葬り去ろうとしていたのである。
か弱き乙女は計算づくでなければいけないのだろうか?
「それで、また時報ねーちゃんか?」
「今度はもっとちゃんと話をしたいみたいなの」
交わし合うバーツとクレアの会話も、どこか宙に浮いていた。
<あなたがたの艦の中に、コンタクトをとってきた人がいます>
「そんなやつ、いたか?」
「さぁ…」
<しらばっくれても駄目よ! さあ、早くお出しっ!>
「なんか時代劇入ってんな、あのねーちゃん… あっしらには全く
身におぼえのないことでさぁ」
冷めた態度のバーツを筆頭に、皆知らぬ存ぜぬの一点張り。
その陰でフッ… と不気味に微笑むペンチ。
実は、ジェイナスクルーは本当に知らないのである。
あの時のペンチの言動を思い出してみよう。(第3話参照)
…なるほど、確かにバレてはいない。
フレッドも何がなんだかわからないまま幸せな気分になっている。
ペンチ=イライザ、さすがはジェイナスきっての魔性の女である。
<どうしてもしらばっくれるのねっ!? いいわっ! こっちから
乗り込んでやるんだから!>
<ちょっと、アン=ホルテ!>
<ええい、はなせはなせぃ!>
…
だんだんと相手をするのが嫌になってきた子ども達。
マルロとルチーナが遊びまわっているのはいいとして、ケンツと
ジミーは軍人将棋に精を出し、クレアなどは「ヤッくんへ」という
メッセージを編み込んだマフラーの続きを編み始める始末。
それもこれも、あのスコットがいないせいなのだ。
皆のびのびと過ごしている。
彼の存在が皆の自主性を奪い取っているとしたら、これは問題で
ある。
それはともかく、ブリッジの緊張感は少しもなくなっていた。
…いや、それは間違いだと、この瞬間に気付くことになる。
「みんな、聞いてくれ!」
その勇敢な指導者は誰あろう…
「ロ、ロディ!? 気は確かか!?」
「ちょっと、どうしたの?」
「こんな大それたことして大丈夫なの、兄さん!?」
「私、そんなことしてません! え? 違うの?」
「無理しねー方がいーんじゃねーのか?」
「敵の謀略だって言ってんだろ!?」
「アタイさぁ、そろそろ眠くなってきちゃった。ふわぁ…」
「メリーの餌探してるんだけど… 牧草がなくなってきたから…」
「そういえば、いい紙があるわよ? あのね…」
「わーい、しゅっぽ! しゅっぽ!」
「といちのならづけ しゅっぽ! しゅっぽ…」
…誰もまともに聞いちゃいない。
こんなに信用のない主人公も珍しい。
ところが、今日の彼の迫力は相当なものだった。
「みんなよ、俺の話を聞けーっ!!」
「は、はい…」
まるでどこかの番組の主人公が乗り移ったかのような迫力に一同
正座を強いられても何も言えなかった。
「彼女をジェイナスに迎え入れよう。(中略)…情報を聞き出した
方がいいと思うんだ」
一気に語り終えたロディ、皆の顔色を伺う。
「…だな」
やや胡散臭げなバーツの一言が全てを決めた。余程足がしびれて
いたのだろう。体育会系はこれだから…
やった! ついに「まともに」意見が通ったっ!!
喜びもひとしおのロディ。心の中で、感激のキャット空中3回転
後方半ひねりを行なってしまう程である。
主人公のプライドはとっくの昔に捨てているのだろう。
スコットの体調不良のおかげだというのに…
とにかく、猛烈な勢いでブリッジを飛び出した。
彼女… アン=ホルテを迎え入れるために決まっている。
言い出した張本人が率先して行なうのがジェイナスの掟。
だからかどうか… やけに嬉しそうである。
そんなルンルンスキップ・ロディをバーツが追う。
「この際だ、あの赤ん坊を引き取ってもらった方がいいんじゃねえ
のか?」
「気楽に言うなよ。養育費とか色々大変なんだぜ? 相続問題等も
きっちりしておかないと、後で泣きを見るのは男の方なんだ」
「お前やけに詳しいな?」
「か、関係ないだろ!?」
そんなこんなで、颯爽とジェイナスから発進してゆくバイファム&
ネオファム。
ところが、当のパイロット達は、やはり颯爽とはいかないようで…
<ロディ、あのねーちゃん綺麗だもんなぁ… 好みか?>
<か、関係ないだろ!?>
<やっぱおかしいなぁ… スコットと同じかと思ってたんだが…>
今日はやけに突っかかってくるバーツだった。
どうも苛立ちが拭い切れないらしい。
対するロディは上機嫌なので、少々のことでは堪えない。
「それにしても、あいつら…」
「どうかしたんですか、アン=ホルテ?」
「あいつらよ、あいつら! よりにもよってこの私を侮辱してっ!
見てなさいよ! あなた達の中にいる難民、ごっそり頂いて行くん
だから!! みんなサーカスに売り飛ばしてやるわっ!!」
「それにしても、様子が変ですが…」
「変なんてもんじゃないわっ! 私を見て『おばはん』呼ばわりよ!
そう、この私を見て、なのよ!! 絶対変なのよ、あいつら!」
「…会話の内容を分析、ですね」
「そ、そうね。あ、アースニアン・ジョークの分析は私がやります」
「…」
本当にこの人についていって、いいものなのかどうか…
上司を横目に頭を抱える彼女は…
<女二人? ではもう一人をモニターに出してください>
というジェイナスからの通信に、喜び勇んでカメラを向ける。
来た! ついに来たんだわ! 私の時代がっ!!
ちょっとボーイッシュなところが魅力大爆発!!
もう横のオバハンにばかりいい思いはさせないわっ!!
「どう? 男に見えて?」
ニッコリ笑顔で受け答えるのは…
本邦初公開のルービンである。
ブリッジに一瞬の静寂。
み、見えるよ…
ある種の恐怖を感じるジェイナスクルーだった。
<こっちにも転送してくれ>
「え、ええ、わかったわ。フレッド! 張り切って転送よ!」
急いで送らせるのは、自分達だけでの判断に困ったためだろう。
クレアもよく心得ているようだ。
送られてきた画像を見て、またもつっかかるバーツ。
<なあロディ、お前ヒステリックババァとオトコオンナとだったら、
どっちが好みだ?>
<お、おい、バーツ?>
<どっちだよ? ん?>
<いや、俺は… こんなの関係ないだろ!?>
<何だよはっきりしねぇ奴だなぁ… 俺だったらオトコオンナの方
がまだ好みだな>
<じゃ、じゃあ、俺は年増の方かな…>
<ほぉ、やっぱスコットと同じってわけだ。お前ら見る目がねーなぁ>
<そんなことないさ。あの人だって…>
<んじゃ、決め手は何だよ?>
<決め手って?>
<オバハン選んだ決め手だよ?>
<そんなの、特にないけど…>
<まぁったく… これだから主人公の座が危ないってんだよ!>
<何ぃっ!>
<そんなとこだけ怒るなよ、ほんとの事言ったまでさ>
<じゃあバーツの決め手って何だよ!?>
<ズバリ、胸だな?>
<胸? 胸って、あの…>
<そう、その胸だ。ありゃすげーぜ!?>
<すげーって…>
<間違いねぇ。ほんとにそーとーなもんだぜ?>
<バ、バーツ、間違いないんだろうな?>
<ああ、オトコオンナの方が胸がある! 断言してやるぜ!>
<だけど、あのモニターだけでどうしてわかるんだ?>
<そりゃお前、日々訓練してるからよぉ>
<そうか、やっぱり俺ももっと…>
「あなた達、聞こえてるわよ…」
それは、限りなく絶対零度に近いホルテの言葉だった。
「戻っていきます…」
「…気まずくなったようね」
「さて、誰が彼女と会うか、だが…」
と、ブリッジで切り出したロディの天下はここまでだった。
「スコット!」
「や、やぁ、みんな… 元気にしてたかな?」
ついに真打ち登場である。
仕方なく説明する年長組。頭のカタいスコットにわからせるには
かなり根気が必要のようだ。
「わかった! ぼ、僕が…」
「いや、スコット、その身体じゃ無理だ。俺が代わりに…」
「駄目だっ! ううっ、その、大役は、艦長である、この僕が…」
こうなるとテコでも動かない。
「ま、ここは一つ俺に任せて…」
「駄目だーっ!! 絶対、僕が、やるんだーっ!!」
病弱とは思えない程の大絶叫で荒れ狂うスコット。
こいつの変装癖も困ったもんだ。だが…
「ジョークショーだけは駄目だぞ、スコット」
「そ、そんなぁ…」
バーツにその言動の一部始終を完全に見透かされている情けない
キャプテンである。
ドタバタしている間にジェイナスに入り込んだホルテとルービン
の目の前に現れたのは…
軍の制服を着てはいるがへっぴり腰のスコット。
顔までへっぴりなのが非常にまずい。
理由を知らないのは彼女達だけである。
小型艇から降りたのはホルテだけだった。
「ど、どうも…」
「あら、あなた、ジョークのお上手な方とお声が似てるわね?」
「そ、そうですか?」
一気にスコットの顔がほころぶ。
「彼は私の親類であり、また、ジョークの師匠でもあります!」
ビョーキだな、こりゃ。
「じゃあ、あなたもジョークをたしなんでいらっしゃるの?」
「はい。修行中の身で、まだまだ未熟なのですが…」
「そうなの? じゃあ、一つ聞かせてくださる?」
「そ、そうですか? じゃあ… どうぞ、おかけください! お茶
をお持ちしますから」
そんなことはいいから、早く情報を聞き出せっ!!
クルーの思いをよそに、マイペースな交渉をするキャップに…
うっ!
どうやら、ついに来るべきものが来たらしい。
「あ、あの… ちょっと席を外していいですか?」
「どうしてそんなことを聞くの?」
「本意ではないからです…」
別の意が、彼の他の行動を全てシャットアウトした。
10分経過。
「お待たせしました。さあ、続けましょう」
何食わぬ顔で出てくるスコットだが…
「おかしいわ。やはり、何か匂うわね、この艦…」
「ええっ!? そ、そうですか!?」
ホルテに指摘され、手やら服やら、ありとあらゆるものの匂いを
かぐ。その動揺し続ける姿は、情けない事この上ない。
「やばいよ! クレア出動させようか!?」
「いや、まだだ。お、ケンツ、ナイスタイミング!」
「あったあった、これこれっ!」
ケンツはビデオCDを一枚持ってきた。
ボギーは、2058年では多少旧式だがMPEGファイルの解析・
再生くらいはお手のものである。余計なハードを一切使用しない、
ソフトウェアMPEGを標準装備していたのだ。
で、再生が始まった途端、派手な前奏が流れてきて…
<♪て〜のひ〜ら〜の〜そよ〜かぜ〜が〜>
「まずい!」
慌てて取り下げるケンツ。
「それはいくらなんでもひどいよケンツ!」
フレッドに指摘されるまでもない。冷や汗がどっと吹き出る。
そこへ…
「ケンツ、私のを使って!」
自信たっぷりに持ち出したのは、カチュアが編集したビデオCD。
大急ぎで入れ替え、再生スイッチを押す。
そう、それは、けたたましい警告音と共に始まった…
<警告! 警告! 左舷後方に未確認飛行物体確認!>
<急げ! バリアをはって研究所を守るんじゃっ!!>
<左、弾幕薄いぞ! 何やってんの!?>
<この感じは… 来る!>
<燃えろ燃えろ〜っ! みんな燃え尽きちゃえ〜っ!!>
<まさか! やつもハイパー化したというのか!?>
<奴等もディストーションフィールドを持ってるということね>
<第ニ波、来ますっ!>
<くそっ! プロテクトッ、シェードッ!!>
<も、もう駄目だっ!>
<みんなバラバラに戦ってたら勝てないよっ!>
<見て! ゲージが輝き始めたわ…!?>
<しめた! いくぜっ! レッツ・ゲキガインッ!!>
<ちょこざいな! 邪悪バワー、照射!>
<なにっ! さらに巨大化しやがった!>
<うわぁっ!!>
<立て! 立つんだっ!>
<わかりました! あいつの弱点は目です!>
<そうか! それならビッグEガンでも狙える!>
<よぉし、やってやるぜ!>
<トランスフォーメーション開始! 市民の皆さんは…>
<対ショック・対閃光防御!>
<3.2.1… どっかーん! おーい、みんな〜!>
<いいかっ! 正義は、俺が決めるっ!>
<READY>
しまいにはレッドショルダーマーチまで飛び出すほど、なかなか
調子のよいビデオCDだった。
編集したカチュアも大満足、だったのだが…
<マリー、僕は、行かなくちゃいけない…>
<駄目よ、トミー! あなたが行ってしまったら、私はどうすれば
いいの!? これから私一人で生きていかなければいけないの!?>
<そういうことになる。すまない>
<私はずっとあなたのそばにいたいだけなの! それなのに…>
<大丈夫さ、君なら…>
<そんなこと言わないでっ! 私達の愛は嘘だったというの!?>
<…許してくれマリー。だが君を、ハクション彗星帝国との戦いに
巻き込むわけにはいかないんだ>
唖然とする、第三格納庫の一同。
「これがあなた達の船の実態ってわけね… どうします? アン=
ホルテ…」
「黙って! 最後まで聞きましょう!」
「は?」
「いけない… 消すのを忘れてたわ…」
というよりは、確信犯的なところがなきにしもあらず。
「アタイ、さっきのより断然こっちの方がいいなぁ。♪あなた〜が
いるから〜」
マキの心は、勝手にロマンティックモードに切り替わっていた。
「ステキなお話ね! 詩が一杯かけそうだわ!」
誰のせいでこうなっているのか…
「どう考えたって、ごまかしなんかにゃなってないよな」
ケンツはまだ自分の方がましだったと思う。
「ま、そーゆーこった」
どっちもどっち、バーツがため息まじりに答える。
「というわけでクレア、緊急出動よ!」
いまさら… バーツはマキ以外の誰かの指示ならやめさせている
ところだろう。
そして、指令の元、ドライアイスを背に、エレベーターから威風
堂々と現れたのは…
「ク、クレア!?」
スコット、ホルテはおろか、この場に居合わせたマキ以外の全て
の登場人物が、そのクレアの服に驚いた。
颯爽と現れたるお方は超秘密兵器クレア=バーブランドWith
真紅のボディコンスーツ(ちょっとアダルト仕様)!!
燃える闘魂! 女のみさお! あたしのハートは過激にファイヤー!!
こんな年増のオバハンには絶対負けないっ!
それに、せっかくV13でバストサイズがアップしたんだから、
ここで使わなきゃ宝の持ち腐れよっ!!
あぁ、あな恐ろしや、女の意地…
どうやらあの時のロディとバーツの会話を、しっかり聞いていた
らしい。そして、女の持つ「美」への闘争本能に火がついたらしい。
「スコット! まさか、あたしを置いて、そんなオバハンと一緒に
なるなんて言わないわよね!?」
勝手に「超スペース・三角関係泥沼空間」まで作り出すクレア。
もう誰も彼女を止められない、居合わせた誰もがそう思った。
「な、何言ってんだ… ん? クレア?」
ところが、紅蓮の炎を身に纏い、颯爽と… スコットに歩み寄る
姿は見られたものではない。
重力が限りなく少ないとはいえ、なれない真っ赤なハイヒールに
踏み出す足がグラグラ揺れる。
途中で転びそうになりながらも、何とかスコットのそばまで来る。
ジェイナスNo.1は、このあたしなんだからっ!!
執念だけが彼女を行動に導いていたのである。
片や「オバハン」。
こ、小娘っ! こんなのに負けるわけにはいかないわっ!
ここで負けたら、ラピスの笑い者になってしまう!
ただでさえお局様と罵られる日々が、こんなハナタレに負けたと
なれば、さらに辛い立場になってしまう!
負けられないっ!! 何としてもっ!!
「あなたの負けね!」
「ど、どうしてそんなことを…」
「だってあなた、そのスーツはタイトだもの。やっぱり女の器量が
試されるのは、無重力空間の中でのスカート着用ではなくて!?」
どうやら、背負うものはこちらの方が大きかったようだ。
打ちひしがれるクレア。
と、その時…
ビーム波状攻撃! 激しい振動がジェイナスを襲う!
間髪入れずエレベーターから降りてきたケンツとバーツ。
「こいつらやっぱ軍のスパイだぜ!」
軍曹は一目散に小型艇のコックピットを荒らしまくる。
適当に部品を掴んだ後、小型艇の外壁も調べる。
「何やってんだ、ケンツ!?」
「これを見ろ!」
バキッ! 激しい音と共になべの蓋の様なものを取り外す。
「またみんないきなり出てきて… それは何だ、ケンツ!?」
「いや、何だ、と言われても… 適当にバラしただけだから…」
「わかんないなら勝手に他人様の船壊すなよ…」
「そ、そりゃそうだけど…」
しょげるケンツの耳に、小さい音ながらかすかに何かが聞こえた。
なべの蓋に耳を当てる。
「くしゅん!」
「は? 誰かの声が… まさか?」
ニヤリとほくそえむケンツに勝算ありか?
「わぁーっ!!」
「※★%&##$△△△※¥$$〜♪」
ケンツの大声に驚いたのか、わけのわからない奇声と共にプツリ
とスピーカーの電源供給が切れる音がした。
そう、これでケンツは確信を持って言い切ることが出来た。
「ネタははっきりあがってるんだ! スパイども、観念しろ!」
これは通信機だったのである。
くしゃみが聞こえなければそれが何かもわからなかったケンツは、
とにかく自分の手柄だけは認めさせようとした。
「ま、とりあえず私が居座るから、ルービン、お願いね?」
「わかりました。攻撃をやめさせてきます」
ルービンは単身ジェイナスを飛び出し、ククト軍特殊部隊の戦艦
へと向かっていった。
ホルテさんが人質でよかった! ムフッ!
素直に喜ぶスコットだが…
「ううっ、とりあえず、まだお腹痛い…」