銀河漂流バイファム13
へなちょこストーリーダイジェスト
第3話


「ローデン大佐を見限り、ククトニアンの攻撃を早々に切り抜けた
 僕達13人。やっぱり僕の判断はいつも正しいのだと感心する。
 それにしても格納庫から足がはみ出てる5機目のトゥランファム、
 何とかならないかなぁ?」

敵か味方か?
謎の女からのメッセージ!

 …。
 ブリッジにいる一同は、呆然とした。
 たった今、ジェイナスでは、ある通信を傍受した。
 彼らが呆然としたのは、その内容があまりにも難解な内容だった
からである。
「…わ、忘れよう、みんな! な!?」
 スコットの一言は、逆に居合わせた者達を興奮させる。
「ちょっと待ってよ! 今の、地球軍からの連絡でしょ…?」
「ケッコーおもしろそージャン? もっぺん聞かせろよ!」
 フレッドもシャロンも、これで結構慌てているのである。
 確かに、彼らにとっては困った通信内容だった。
 だが、明らかに地球軍の通信コードを用い、適切な手順を踏んだ
通信方法でメッセージを送ってきている。
 もしこれが地球軍からのコンタクトだったら…
 そう思うと、無視することは出来ない。
 だが、ケンツの口癖「敵の謀略」だとしたら…
 そう考えると、迂闊にこの通信への応答を行うことは出来ない。
 こんな考えの間を行ったり来たり。
 そうだ…! これじゃ駄目なんだ!
 いくらキャプテンとはいえ、一人で決断することの愚かさを認識
していた。
 困難な問題なら… 避けては通れない問題なら…
 スコットは館内放送で、クルー全員をブリッジに呼び出した。
 そう、RVを整備をしていたバーツ達やミシンがけしていたジミー
達を、である。

 クルー全員が集まったところで、改めてスコットが説明する。
「みんな、僕のために集まってくれてありがとう。実は、この前に
発表したジョークの改訂版ができたんだ! 三日三晩寝ずに考えた
から、もうつまらないなんて言わせないぞ!」
「違うでしょ、スコットさん!」
「…ねえ、やっぱりやめない?」
「駄目だよ! ちゃんと話さなきゃ!」
 フレッドに注意され、せっかくのチャンスを逃したスコットは、
少々ご機嫌斜めになりながらも、怪しげな通信について説明した。
 そして、彼の指示の元、フレッドが手際よく先程のメッセージを
再生する。
「ノイズか?」
「サンプリングレートが低いんじゃないのか?」
「圧縮のアルゴリズムがひどすぎるんだよ」
「相手側のマイクに問題があるんじゃないの?」
 聞いた風な口を聞くクルー達。
 だが、はっきりと聞き取れるようになったところで、そんな会話
はプッツリと途切れた。

「僕の名はエイジ。地球は、狙われている!」

 皆、しばらくの間、一様に呆然としていた。

「多分、ロボット物アニメーションの台詞の一つだと思うんだ」
「ボギーもそう分析しているよ」
 スコットの説明に、タイミングばっちりでフレッドがフォローを
加える。抜け目ない行動は弟としての性分か。
「ただ、このメッセージが何を意味するものなのか…」
 悩むスコットに、クレアが進言する。
「地球軍の通信コードを知っているってことは、味方なんじゃない
かしら?」
 言ってることはまともなのだが…
 結構カッコいい声だったわ! 渋いし、それでいて爽やかだし!
 きっとスコットなんかとは大違いの、素敵な男性なんだわ!
 こんなことを思っての台詞だったとは、誰も知り様がない。
 その虚ろな瞳につられてか、ペンチも彼女の意見に乗った。
「そうだわ! だって、声は物静かできれいだったし、悪い人じゃ
ないと思うんです!」
 もちろん彼女の場合は、本来の意味につられて、である。
「バッカだなぁ、お前ら!」
 颯爽と割って入ったのは、バズーカ背負ったにくい奴!
「敵の謀略に決まってんだろ!」
 ケンツは相変わらず脳味噌司令部状態である。
 その他ごちゃごちゃと話し合っているが、突然キャプテンが歩き
出す。
「カチュア、気を悪くしないで聞いてくれ」
 スコットは精一杯気を遣っているつもりだったが、カチュア程の
勘の鋭い少女には、まったくもって無意味な言動だった。
 それを悟るや否や、彼は意を決して、キャプテンとしての責務を
果たそうとした。
「はっきり言おう。君はアニメオタクだ。あの、この台詞について、
何か知らないかなぁ?」
 やっぱり… カチュアの目に悲しみの色が浮かび上がった。
「わ、私、こんな台詞、知りません」
 事実を述べるしかなかった。
「カチュアをアニメオタク呼ばわりするなっ!!」
 ジミーの猛烈な反発に、キャプテンもひかざるを得ない。
「ごめん、悪かったよ。とにかく、この件は保留にしておこう」
 満足げのジミーの肩に手を添え、にっこり微笑むカチュアだが、
かみしめる口元に悔しさを隠せない様子。
 それもそのはず。
 私にも知らないアニメがあるなんて…
 まだまだ勉強不足なんだわ…
 全然違うことで瞳を曇らせていた、プライド高き少女。
 やはり彼女は、まだまだたくさんの秘密を抱えているらしい。

 落ち込んだりもしたけれど…
 使ってはいけないキャッチフレーズを心に秘めながら、ブリッジ
へと入るペンチ。
 すぐにスコットが彼女の異変に気づいた。
「ペンチ、どうしたの? 目が赤いよ?」
「ほんとだ。おめー目が真っ赤だ! プールから上がったら…」
 何か言いかけたケンツを追い出し、スコットに詰め寄る。
「準備が出来ましたから、お食事してきてください!」
「そ、そう? でも、もう少し…」
「行ってきてくださいっ!!」
「わ、わかったよぉ…」
 我らがキャップは、どうも女性に弱いようだ。
「フレッド、あなたも行ってきて! 私がここを見てるから」
「でも僕、もう少し」
「ねぇ、フレッドぉ… お願ぁい、行ってきてぇ、ねっ!?」
「う、うん」
 どうやらこの時点で、フレッドは食欲よりも胸一杯のようだ。
「あ、そうそう!」
 ぎくっ!
 スコットの呼びかけにペンチの心臓は一瞬脈を止めた、とは言い
過ぎか。
「さっきの男からの通信があったら、無視して構わないから」
「は、はいっ!」
 本編では滅多に見せないその崩れた顔は、結構愛嬌たっぷりだが、
それほどやましいことがあるためである。
 つまり、その「さっきの男」と秘密の交信を行なおうとしていた
のだ。
 スリルとサスペンス、願望とリスク、そして男と女… そこには
いろいろなものが交錯していた、のかどうか。
 さっきの人、返事をしてくれるかしら?
 アイドルの追っかけにも似たその心境を、誰が責められようか?
 いや、どちらかというと末期症状の不倫妻の心境かも…
 いやいや、両親と逢いたいがための行動であるのは明らかだ。

 あれこれコンソールを操作していると…
「ペンチ、フレッドは?」
 ようやく我らが主人公ロディの登場である。
「お、お食事に行きました! スコットさんと!」
「あいつ、俺とチェスするって言ってたのに…」
 あくまでロディらしい受け答えの後、早々と去っていった。
 本当に活躍しない主人公である。

 次に訪れたのはカチュアだった。
「あれ? どうしたの、カチュア?」
「ええ、ちょっと調べ物が…」
 カチュアは熱心にコンソールを操作して、音声回路を切り離した
ボギーとやりとりしていた。
 その仕種をじっと見つめるペンチ。
 早く行ってくれないかしら!?
 何故見つからないのかしら!?
 早く一人っきりになりたいのに…
 あの台詞の部分は知ってたのに…
 もう! どうなってるのカチュア!
 もう! 何故知らないのボギー!!
 怒りが頂点に達したところで、互いの目が合った。
「あ、あは、調べ物大変ね、カチュア! 手伝いましょうか!?」
「あ、今日はもういいの、ペンチ。そうだ、代わりましょうか?」
「いいの。私もさっき、スコットさんやフレッドと代わったところ
だから」
「そう…」
 口元をかみしめるカチュア。その理由は誰にもわからない。

「なあ、ジミーが落とし物したんだよ、ペンチ知らねーか?」
 今度はケンツである。
「もういいよ、ケンツ…」
 ジミーも一緒だった。
「よかねーだろっ!! お前の大事なハーモニカじゃんか!!」
「うん…」
「絶対探し出してやっからな! おっかしぃなぁ…」
 この二人は楽に追い返せた。というより、勝手に出ていった。
 元々そういう連中である。

「ここなら誰もいないさ。さっきスコットとフレッドが通り過ぎて
行くのをみたからな」
「確かに当番はキャップ達だけど…」
「案外誰もいない時だってあるさ。見ろよ、この大宇宙のステージ
を。素敵だろう? 今、俺達のためだけにあるんだぜ?」
「でも、ボギーが見てるわ」
「あんなコンピューター、どうってことないさ」
「そうね… 記録を消しちゃえばいいんだものね」
「それより、どう? 今夜は二人だけでさ…」
「ふぅん、随分と先の事まで約束させるのね?」
「その間、ずっと君を俺のものに出来るじゃないか」
「本当にそう思ってるの?」
「違うなんて、考えたこともないな」
「随分な自惚れ屋ね。でも、そんなアンタが…」
「こほん!」
「ペンチっ! ずっとそこにいたのか!?」
「あ、あの、アタイ達は劇の練習をしてただけだからさ!」
「そ、そーそー! 星が綺麗ですな、姫!」
「そうですわね! オホホホッ!!」
 こいつらホンマに中学生か?
 顔を真っ赤にしたペンチが、そう思ったかどうかは定かではない。

「ねえペンチ。さっきの男の人の声、もう一度聞かせてくれない?」
 これはしたり! 唯一自分の考えに同調する可能性を持つ者が、
自分からやってきたのだ。
 彼女は喜んでクレアの要望に答えた。
「ええ、わかったわ。ボギー、さっきのメッセージは?」
「本日の通信記録はボギーフォルダーの中の2058年フォルダー
の中の通常業務フォルダーの中の共通作業用領域フォルダーの中の
戦闘・通信記録フォルダーの中の地球軍通信フォルダーの中の通信
履歴フォルダーの中の本日フォルダーの中にあるログファイルです」
 そう言えば、2000年問題って、ボギーはどう乗り越えたの?
 余計なことが頭をよぎるのは、集中力のない証拠だ。
「…ありがとうっ!」
 嫌気がさしながらも、頑張って調べるペンチ。
「いい? 再生するわよ?」
「ああっ、待って!」 「どうしたの?」
「きっと彼、憂いを含んだ美青年に違いないわ! そうよね!?」
「でしょう? だから、私の考えを…」
「お願い! テープに録音して! いえ、MDの方がいいわよね! 
ちょっと待ってて! MDの生媒体取ってくるから!」
 …何しに来たの?
 走り去るクレアを見つめるペンチの視線は、あくまで冷ややかで
あった。

 さて…
「なにしてんの?」
 クレアがいなくなったと思ったらマルロとルチーナが入れ替わり
で現れる。
「い、今、大事なお仕事してるから、あっちに行ってて〜!」
「はーいっ!! でもさぁ、ぼくたちクルーじゃないからだいじな
おはなしのときよんでくれないなんてふこうへいだよね!?」
「そーよね! で、クルーってなによ?」
 …ふぅ。
 改めて作業再開。
「送信ですか!?」
「ボギー、静かにして! 音声消すのはどれかしら? あ、送信、
しちゃった…」
「避難民に告げます! 私達は難民保護組織「ラピス」のメンバー
です!!」
 げっ!  通信内容のあまりの大音量に、彼女は目をひんむく。
 それに… さっきの男の人と違う!!
 そうよね。地球が狙われているんだもの。さっきの人と違うのは
当たり前だわ…
 何故か勝手に納得するペンチ。作者にとっては都合がいい。
 急に気持ちが冷める。フレッドに飽きたらこんな気持ちかしら?
 間違いは未然に防ぐことができた、そうも思った。
 ただ、音量調節の方法を聞いておけばよかったと後悔した。
 苛立ち紛れに大音量に設定しておいたのがその人物であることも
知らずに。

「あれぇ? キャップはぁ?」
 今度はシャロンなの…?
 さっさと録音してクレアを追い返した後、ペンチは疲弊しきって
いた。
「今度こそ代わってやろーと思ってさ」
「スコットさんとフレッドは、お食事のため私と交代しました!」
 つい口調も荒くなる。
「何だよあいつら、オレん時はもうちょっといるよ、とか言ってた
くせに、ペンチの時にはあっさり交代しやがって!」
 よくわからない苛立ち。彼女の胸の内では、それに対する歯止め
が効かなくなってきた。
 シャロンでなければ感じない、何か…
 闘争本能、そう言えるのかもしれない。
 遺伝子レベルでの激しい対立! 前世からの因縁の対決!
 いやいや、要するに「犬猿の仲」なのだが。
「あ〜ら、それはシャロンに信頼がないからじゃないかしら?」
「ん〜っ! このぉ! 言いたい放題言いやがって!」
「だって本当の事じゃない!!」
「あんだとこのぉ!!」
「やるのっ!?」
 この一見不毛でその実やっぱり不毛な言い争いがしばらく続いた
のは言うまでもない。

「ふぅ、お腹一杯になったよ、スコットさん!」
「僕もだよ。思わず眠ってしまったし。まるで睡眠薬でも入ってた
みたいだよ。それにしてもフレッド、そんなに食べたら太るんじゃ
ないか? この前だってシチュー20人分も食べたじゃないか?」
「大丈夫だよ。寝る前には腹筋300回やってるから… ペンチ、
ありがとう、代わるよ」
 げげっ! もう帰って来たの!?
 ペンチは、まるでそば屋で天ぷらそばを頼んだのにカレーうどん
がライス大盛りとセットで出てきたときと同じくらい驚いた。
 それもそのはず、長い戦いの果て、やっとシャロンを追い出した
その瞬間だったのだ。
 ばれない様に通信記録を削除したかったが、結局出来なかった。

 ペンチの通信はククトニアン軍に傍受され、その位置を知られた
ジェイナスは当然の如く攻撃を受けることとなる。
 戦闘体制に入るが、そのときフレッドは彼女の態度に気づいた。
 やけに落ち着かない。そわそわしている。
 先程自分達を食事に行かせ、その間に…
 彼は、そこまで考える事の出来る、思慮深い性格だった。
 もちろん、愛する人の事についてのみではあるが。
 ペンチ… まさか、でも…
 そんな彼女を、やっぱりいとおしく思うフレッドだった。
 そうさ、僕は負けない!

「こんなにゾロゾロ出てこなくてもいいんじゃねーか?」
 トゥランファム5機を従えたバイファムとネオファム。その姿は
なかなか壮絶である。
「それにしても、みんな一人で乗ったら、砲撃手がいないんじゃ…」
 ロディの問いには答えない面々だった。

 そうだわ! 自首した方が罪は軽いのよ!
 突然、前科のあるペンチが立ち上がった。
「私が、私がいけなかったんです!」
 罪の意識にとらわれ、いても立ってもいられず、走り去るペンチ。
 追いかけたのは、フレッドだけだった。
「ん? 何かあったのか?」
「さぁ… スコット、前!」
 皆、今は目の前の敵を追い払うことで精一杯なのだ。

 閉じこもったきり部屋から出てこないペンチに、フレッドは扉の
向こうから優しく声をかける。
「確かにかっこいい声だったよ。でも、クレアだってそうだったし、
みんなわかってくれてるよ!」
「ごめんなさい。私…」
「そりゃあ、声はいいけど、でも、僕だって…」
 彼の本音である。何を考えていたんだか。
 つられてペンチも、扉越しに自分の本音を打ち明ける。
「違うの。私が悪いの。あの声の人は関係ないの! でも…」
 その言葉を聞いた途端、フレッドは今まで自分を縛りつけていた
全てのものを開放した。
「そっか! 僕は、てっきり君があの男の事を…」
「言わないで!」
 このままでは誤解されても文句は言えないのだが、ペンチは部屋
を出ると一目散にフレッドの胸に飛び込んだ。
 そうか、やっぱり僕の事を想ってくれるんだね?
 異常なまでに大幅なすれ違い。この二人は、本当にわかり合える
のだろうか?
 ただ、その過程はどうあれ、今は幸せ一杯のフレッドだった。

 結局、戦闘はどうやって切り抜けたのだろうか?

「ともかく、今回も無事に敵の攻撃をくぐり抜けることができた。
 だが、ペンチは随分と落ち込んでいる。きっと彼女の心を癒せる
 のはフレッドだけだ。放っておくしかない。それはそうと、何故
 みんなは僕のジョークを認めてくれないんだろう?」