超力ロボガラット13
へなちょこストーリーダイジェスト
第8話


(キートン山田氏風に読んでね)
「ここは地球より数十光年離れたイプザーロン太陽系。今まさに、
 地球へ向かうらしい船がここにあったりする。えっ? マイケル
 達はどうしたかって? 見ての通り難民保護組織を脱け出して、
 この妙ちくりんな地球の艦に乗り込んだところである。さてさて、
 彼らは無事に地球にたどり着くことができるのだろうか… ま、
 そういうことで、物語が進んでいったりする」

「しっかしうまく乗り込めたよなぁ! これっていわゆる軍艦って
やつかなぁ?」
 マイケルがキョロキョロと視線を移しながら感動していた。
 とりあえず、兵士の部屋っぽくはある。
「かなりサップーケーだけど。なんかもうちょっと華やかにしたい
なぁ? でもさ…」
 パティはつまらなさそうにキョロキョロしながら言葉を続ける。
「あたし、ホントだったらもうちょっと、グラドスかランプレート
あたりに戻ってバイトしててもよかったんだけどなぁ? それに、
あのラピスとかいうとこのサーカスってのも面白そうだったジャン?」
 相変わらずノーテンキなパティに、カミルが大人げなく言い返す。
「アタシはもういや… じゃなかった、俺はもう嫌だからなっ! 
さっさと地球に帰るのよっ!」


無茶は承知!?
地球の船は危険がいっぱい!
♪チャッチャララッチャッチャッチャッチャチャチャチャーーー
♪チャーラーラーーーーージャン!


「癖が抜けてないくせによく言うよ」
「だからグラドスでのバイトだったっつーのに! ケンカ売ってる
のか、マイケル!?」
 などと、相変わらず年下を相手にいきまくが、彼自身の格好が、
相変わらずその時の女装のままだったりするので全否定はできない。
<<大将、ミョーに気に入ってるからなぁ、このカッコ>>
 先程のマイケルの意見をわざわざ掘り返し、カミーグがノった。
「そうじゃないっ! お前なぁ! 誰のためにあんな思いをして」
<<じゃあなんで客に投げキッスとかすんの?>>
「あれはサービスなの、サービス!! 仕方なくやってんのよっ!!」
 こんなくだらない二人の会話に、真顔のマイケルが割り込む。
「でも、もう2日も何も食べてないんだぜ? 何とかしなきゃ…」
「ハンバーガー食いたいなぁ…」
 パティもひもじい思いでいっぱいだ。
「そうだな。ずっとここにいるだけでは状況は打開できそうにない。
ここはひとつ、捜索に出かけるとするか」
 カッコつけて立ち上がるカミル。その時、お約束通りスカートが
脱げたりする。
「いやーん、見たわねっ!?」
 パティもマイケルも閉口、とはいかない。
「ゲッ! カミル変態ーっ!!」
「誰がそんなもんみるかっての!!」
「なんてことを言うんだ… まったく、デリカシーのないやつらだ」
 自分の行為を棚にあげ、引き続きドレス姿でカッコつけるカミル
だった。
 部屋を出ようとするカミルにマイケルも続く。
「そんじゃ、パティは留守番な」
「えーっ? なんでなんで!? あたしも行きたいーっ!!」
「ひとりくらい留守番してなきゃ駄目だろ? 後で代わるからさ」
「んもぉ! しょうがないから、早く食べ物見つけてきてよ!?」

「しっかしでっかい艦だなぁ! 後楽園球場くらいあるのかな?」
「あのなぁマイケル、感心してる場合か!? 俺達は食糧探しに」
「どうでもいいけど気持ち悪いなぁ… カミル、もうちっと離れて
歩いてくれよ?」
「何だと!? 俺だって、好きでこんな格好を… カミーグ、何か
言いたそうだなっ!?」
<<別に、オレな〜んも言わねーよ>>
 世の中には、やけにひねたロボットがいたりする。

 やがて食堂にたどり着く二人とロボット2機。
「やりぃ! こりゃ何かあるぞ!」
「当然だ。あってもらわねば困る」
 いちいちカッコつけた物言いのカミルをほったらかして、思わず
備え付けの冷蔵庫を開けるマイケル。
「へぇ… 『クレアドのおいしい水』かぁ。よぉし、カミル、これ
頂いて行こうぜ!」
「うーむ、お前らにはちょうどいいのかもしれんが、果たして私の
口に合うものかどうか…」
<<よく言うよ。ガソリンだって飲むくせに>>
「お前なぁ!」
「ケンカはあとあと。とりあえず食糧もバレない程度に頂いてっと… 
案外少ないんだなぁ。別に貯蔵庫とかあるのかな?」
<<マイケル、他人のものを無断で持ち出すのはいけません!>>
 人間様に口ごたえするロボットというのが、世の中にはいたりする。
「何だよジャンブー! だったら俺達が飢え死にしてもいいのか!?」
<<いえ、そういうわけでは… でも、やっぱりよくありません!>>
「じゃあどうすりゃいいんだよっ!」
<<えっと、その… そうだ! いっそこの艦の人に頼んで食糧を
分けてもらうとか>>
「ジャンブー、お前も甘いな」
<<どうしてですか?>>
「どうやらこれは軍艦だ。見つかってみろ、市中引き回しの上張り
付けの刑は免れないだろう。何しろ俺達は密航者なんだからな」
 カミルの説明にマイケルが続ける。
「地球につくまで隠れてるしかないの。わかったな?」
<<で、でも…>>
「どうするんだ、ジャンブー!?」
<<ですが…>>
 頑固なロボットの説得も、もはやこれまで。
「おい、お前ら、置いてくぞ!」
<<置いてっちゃうぞ!>>
 いつの間にやらいろいろと食糧を手にしたカミルとカミーグ。
 こちらのチームワークは、こういう時だけ万全といったところか。
<<はぁ…>>
 結局、良心に逆らい泣く泣く意見を曲げるロボットだっていたり
する。

「ねえねえ! この子、そこの端末で調べてみたんだって!」
 ちなみに、パティとしては、この子=パティーグである。
<<この艦におけるメインコンピューターの役割は、航行に関する
重要度99.2%、クルーの人数に対する代替稼働率は92.5%
と思われます>>
 語尾上げ口調が妙に色っぽいパティーグ、一応経理用ロボットと
いうことになっていて、それなりにデータ分析可能だ。その割には
余計な事も言いたい放題なのだが。
「何それ? 俺わかんないよ」
 チンプンカンプンな主人公をさしおいて、カミルがでしゃばる。
「つまり、そのメインコンピューターが、この艦のほとんど全てを
仕切ってる… そうだな、パティーグ?」
<<分析結果ではその可能性大です>>
「ね? だから、ちょっとそこの端末使って、メインコンピューター
に繋いでみちゃったりしたらどうかなぁ、なんてね…?」
「そうか! よぉし、ジャンブー、お前やってみろよ!」
<<えーっ! 私がですかーっ!?>>
 驚愕のあまり飛び上がるロボットだっていたりする。
「当たり前だろ!? さっきからお前何もやってないじゃないか!」
「逆に俺達に説教までコイてたからなぁ」
<<でも、私にそんなこと出来るんですか!?>>
「出来るんじゃない? キウイ博士が作ったんだもん! そういう
怪しい機能のひとつやふたつ、あるでしょ? ね?」
 お気楽なパティの説得に応じ、ジャンブーはイヤイヤながら部屋
のコンピューター端末から回線を引っこ抜き耳の部分にくっつける。
<<…繋がりました>>
「早いなジャンブー! エライ!」
「都合良過ぎるぞ! それともここのコンピューターはザルか?」
 彼らは自分達がギャグアニメのキャラクターであることを忘れて
いるようである。
<<いろいろ細かいことまで調べられるようです>>
 一同待つこと1分足らず。
<<格納庫みたいな場所がたくさんあります>>
「へぇ、艦内をいろいろ探れるのか!」
<<…あっ!>>
「どうした、ジャンブー!?」
<<ね、燃料が、少なく、なってきて…>>
<<そういえば、大将、オレも腹減ったなぁ…>>
<<私もです…>>
「よし、後で燃料を頂戴しよう! そうだなぁ、一番近い格納庫を
調べておいてくれ」
<<わかりました>>
「でも、せっかくつながってるんだから、このままずっとつないで
おいた方がいいんじゃないの?」
「そうだな。バレていないみたいだし、あちらから切断されるより
いいかも。とりあえず、この酒で何とかならんか!?」
 カミルの提案で酒をお腹の燃料タンクに入れられるジャンブー。
<<そ、そんなもの入れたら駄目ですよ…!>>
「いいから飲め!!」
 実際、ジャンブーによく似た「タマーノ」というロボットでも、
酒での動作保証済である。
<<ウィック! そりゃ上司の酒は断れませんって! ヒック!!
でもねぇ、その指示は実行出来ません。現在敵機影はグレード−2
までの範囲で確認されません。現状での警戒態勢は無意味です… 
ヒクッ!!>>
「ジャンブーのやつ、何言ってんだ?」と、マイケル。
「さぁ…」と、カミル。
「まるで誰かとお話してるみたいよね?」と、パティ。
 飲酒ロボは、なおも暴走を続ける。
<<情に流される様にはプログラムされていません… おだてても
だめです! まったくもって、これっぽっちも必要ありません! 
どうしても指示通りの作業を行なう必要がある場合、キャプテンで
あるあなたにもそれなりの覚悟が必要です>>
「誰もおだててないって」
「何のキャプテンだ?」
「もしかして、面白いことになってるんじゃない?」
 興味津々の3人の目の前で、飲酒ロボットジャンブーが、ついに
真価を発揮する。
<<警戒態勢発令! 敵機影確認、グレード−1から0へ…>>
「な、な、なんだーっ?」
「何言い出すんだ、お前は!」
「冗談でしょーっ!?」

 それから数時間、わけのわからない事を口走り続けるジャンブー。
「こりゃだめだ」
 というわけで、ジャンブーを置いて、居住区付近へと探索に出た
マイケル、カミル、カミーグ。
「おい、マイケル、見ろ!」
「どうしたっての、カミル… こ、これは!」
 そぉっと、そぉーっと、中を覗く。
 するとどうだろう。
 搭乗員、しかも女性らしき人物がシャワーを浴びている様子。
 どうやらバスルームらしい。
 何と都合のいい展開であることか。
 後ろから二人の様子を眺めると、女装男と少年の異様なコンビが
ノゾキ行為を行なっているわけで、いくらロボットいえどカミーグ
はたまらなく情けない想いに駆られる。
「マイケル、お前まだ子どもだから見るんじゃないっ!」
「何だよカミル! 別に大人だからとか関係ないだろっ!?」
「まったく、エロガキだな、お前も!」
 口でたしなめてはいるが、カミルの目は脳からの命令を無視する
別の神経系統で動いているようだ。
「カミルには負けるよ」
 こちらも目が潤んでいる。類は友を呼ぶのだ。
<<大将、こっちの部屋になんか食いもんありそうだぞ?>>
「うるさいっ! あっち行ってろ!!」
 たしなめられてしょげるロボットだっていたりする。
「まずい! こっちに来る!?」
「マイケル、隠れろ!」
<<わわっ!>>
 女装男と少年とロボットは急いで隣の部屋に隠れる。
 そりゃそうだ。シャワーを浴びている女性もいつかはバスルーム
から出てくるのである。
「あぁ、行っちゃった…」
<<だから大将、この部屋が…>>
「また後でのお楽しみになるかもしれんからな。とりあえずは穴を
開けておいた方がいいだろう。結構不自由な生活やってんだから、
これくらいの役得はなきゃな!!」
「カミル… しょうがないなぁ! いっちょ手伝ってやるか!」
<<そうじゃねぇってのに…>>
「下手に穴を開けると不自然だからなぁ… そうだ! あの排気
ダクトの管を抜いておけば…」
「結構見える!! さっすがカミル、ほんと、こーゆーことだけは」
「こーゆーことだけってのは余計だ! さあ、手早く取り掛かるぞ!」
<<大将、こーゆーことだけ張り切るからなぁ…>>
 ご主人様達の情けない努力を見てがっくりと肩を落とすロボット
だっていたりする。

 穴を開け終わり、とりあえず部屋を出る。
「あーあ、食べ物見つからないなぁ?」
「仕方ない、マイケル、一旦戻るか… あれはっ!?」
「どうしたんだ、カミル… うわっ!!」
 同じ格好で一斉に目をこする二人。
 パチクリさせたあと、二人揃ってもう一度見つめる。
 何と、信じられないことに、食糧が歩いてやってきたのである。
「ヤギ一匹みっけ!」
「なんでこんなところにヤギなんかがいるんだ!?」
「何でもいいジャン!」

 思わぬ食糧であるヤギを羽交い締めにしてどうにか帰り着くと、
殺風景なはずの部屋に変化があった。
「ジャーン!!」
 パティが自慢げに壁に貼ってあるポスターを指差した。
「だってこの部屋って殺風景ジャン? これくらいないとね!」
「どうしたんだ、それ?」
「アニメかなんかのポスターみたいだが?」
「ちょっと下のフロアをウロウロしてて見つけたの! あと、これ
なんかいいかなぁって! 暇つぶしには持ってこい! イイ男満載!」
 見ればアイドル雑誌の山。
「また、たくさん持ってきたな… 大丈夫なのか?」
「バレたらまずいよ!」
「だって、すっごく散らかってて、人が住んでるっていう感じ全然
しなかったんだから、あの部屋。多分大丈夫なんじゃない?」
 相変わらずのお気楽パティだったりする。
「それよりすごいジャン? それ、ヤギでしょ? ヤギ鍋にすんの?」
「しまった、そうだったのか…」
「どうしたの、カミル?」
「…今頃気付いたが、調理器具が何一つない」

 そんなこんなで、次の日も地球艦探索は続く。
「どうやら、ここがジャンブーの言ってた格納庫のようだな?」
 兵器類のたくさん詰まった格納庫だが、思ってた以上に広かった
らしく、右も左もわからない状態。
「これなんてどうだ? いかにも燃料が出てきそうなパイプライン…」
<<これかぁ?>>
「あ、引っ張るな! こら、カミーグ、やめろというのに!」
<<だってオレ腹へってんだもん! 早く燃料くれ〜っ!!>>
「やめろというのがわからんのか… あっ!」
<<あっ!!>>
 パイプ管が抜けた根元から勢い良く流れ出してきたものは、残念
ながら燃料ではなかった。
「ゲゲッ! 水だ! 何が燃料だ、カミルのアホ! わーっ!! 
パイプ振り回すなよぉ!」
「やかましい! それならお前、どれが燃料かわかるのか! えっ!?」
<<ごちゃごちゃ言ってねーで早くとめなきゃ!>>
「ふぅ、やっとおさまった」
<<これひねったら止まったんだ>>
 パイプ管にある水栓を右手に握り、誇らしげにカミーグが語る。
「きっとそれが水道全体を止める元だったんだな… それにしても、
服がずぶ濡れだ」
「いやーん、あたしのせっかくのドレスも台無しよぉ!」
 当然カミルもずぶ濡れだった。

 部屋に戻ったマイケル達。
 シーツにくるまったカミルがやけににやついている。
 見れば、何やら隠し持っている様子。
 着る服もなく上半身裸のマイケルが覗き込むと…
「あっ! カミル、そのリンゴ、どこで見つけたんだよ!?」
「はぁ? どこにリンゴがあるというのだ!?」
「そこにあるじゃないか!!」
「知らん!」
「何言ってんだよ! 自分だけずるいぞ! 俺にも一口!」
「こら、やめろ! これは私が見つけたのだ! 私のものだ!!」
 実は例のノゾキ部屋で見つけたとは口が裂けても言えないカミル。
カミーグが見つけたものはリンゴだったのだ。
「まともに食べられる食糧なんだから、見つけたとかそういう問題
で一人占めするなよ!」
 奪い合う、というよりは取っ組み合いの喧嘩状態だ。
「あっ!」
 二人同時に叫んだ。その目の前、リンゴが宙に浮いている。
 釣り人に釣られる魚の心境である。

「あいててて… お腹が…」
「まさか、腐ってるとは…」
 よほど腹が減っていたためだろうか、誰が見ても危険だと一目で
わかる状態のリンゴでも、とても色艶よく見えて、いい匂いがした
らしい。
 二人はのたうち回ることしか出来なかった。
 そこへ、どこからともなく部屋へ戻ってきたカミーグ。
<<大将、これ飲んでみるか? 医務室みたいなところから持って
きたんだけど>>
「おお、すまんな」
「カミーグ、お前って、いいやつだなぁ!」
 ゴクリ…
 !?
「な、なんだーっ!?」
「お腹が、お腹が余計痛くなってきたっ!!」
<<大将、マイケル、どったの…? あっ! 何すんの!?>>
「か、貸せ! み、見せて、みろ…!」
「あーっ! こ、これ、『下剤』じゃ、ないかーっ!?」
 ロボットを睨み付けるご主人様。
「お前、何か俺に恨みでもあるのか! えっ!?」
<<そんなことねーよ、オレだって、いっしょ〜けんめ〜に探して
きたんだから!>>
「もう駄目だ! トイレ!!」
 叫んだのはマイケルだったが、いざトイレの前になるとカミルの
方が先に着いていた。
「げっ! マイケル! ストップ、ストーップ!!」
「どうし、たんだよ、カミル…?」
「み、みみ、ず…」
「まさか、ミミズとか、いうんじゃない、だろうな?」
 どこかで聞いたことのあるダジャレを制止しようとしたマイケル
だったが、カミルの言葉は止まらない。
「水が流れてないぞ!!」
「な、何だって!? ほんとだ。ってことは、まさか…」
 そう、そのまさかである。
 自分達で止めたバルブのせいでトイレの水が止まっているのだ。
もはや同情の余地はない。

「あーもう、ハンバーガー食いたい食いたい食いたいーっ!!」
 完全にくたばった二人を尻目に、ついにパティの怒りが爆発した。
「やめろよパティ! 乗組員に見つかったらどうすんだよ!」
 腹痛をおしてパティを止めようとするマイケル。
 だが、それくらいで怒りがおさまるようなら苦労はしない。
「大丈夫よ、だって夜中だもん! 叫ぶくらいいいでしょ! あーん、
ハンバーガー食いたい食いたいーっ!!
「お、おい、パティ! まずいよ、どうするカミル?」
 マイケルに言われるまでもなく… と、すっくと立ち上がると、
宙吊りになっているヤギのそばでとまるカミル。
「よぉし、じゃあこのヤギを今目の前でさばいてやる! パティ、
よぉく見てろ… あたっ!」
「かわいそージャン! なんてことすんのよっ!?」
 情が移ったのか、縛ってあるヤギに手を触れようとしたカミルを
その場でなぎ倒した。大の男も腹痛を抱えていれば、現在のパワー
の差は歴然である。
 あれほどヤギ鍋に期待してたのは誰だ?
 …と、口にする元気もなく、カミルが打開策をマイケルに告げる。
「こうなったらもう俺達では抑えられん。これで抑えるか!?」
「そんな無茶な…」
「背に腹はかえられん… パティ、お前もこれ食べろ!」
「腐ったリンゴなんていやーっ! ハンバーガー食いたいーっ!!」

「いてて… まだお腹が… あれ? パティは?」
 何をどうして眠ってしまったのかはわからないが、とにかく目が
覚めたマイケル。
 カミルは眠っている。カミーグも燃料不足でぼぉっとしている。
 ジャンブーは相変わらず端末として接続中。
 で、パティは… いない。
 と思ったら、廊下から大きな「走る足音」が聞こえる。
 寝ぼけ眼をこすりつつ、多少警戒するマイケル。
 部屋のドアが開くと、パティがひょっこり現れた。
「はぁ、はぁ、はぁ… マイケル、おっはよっ…」
「どうしたんだよ、そんなに慌てて走っちゃってさ!」
「そ、それがね、ちょっと、その、さぁ…」
 寝癖の取れていないマイケルに近寄るとごにょごにょ耳打ちした。
「げっ! パティ、乗組員にバレたのか!?」
「だってしょうがないジャン!? でもって、子どもだったから、
ニッコリ笑顔で挨拶したのに『ギャーッ』とか言って逃げちゃった
の。失礼しちゃう!」
 そりゃあ、まず逃げてもおかしくはないだろう。
<<乗組員に密航が見つかる確率、75.0%です>>
 引き連れていたパティの相棒は、無常にも冷静に状況を分析した。
「というわけなの。ウフッ!」
「と、とにかく移動しなきゃ。ほら、カミル、起きろよ!」

 実は、部屋を移動してもやることは変わらない。
 昼の間はあちこち探索。マイケルの服は乾いたが、お腹の痛みは
なかなか直らない。
 夜になればなったでパティが、
「ハンバーガー食いたいーっ!!」
 と叫ぶだけ。少しは警戒すればいいのに…
 さらに、日にちはいたずらに過ぎていく。

 シーツ一枚でウロウロするにーちゃんが一人。
 無警戒この上ない歩き方。それもそのはず…
「くそっ、あのバカ! 結局この私自身が薬を取りに行かなければ
ならないではないか… それにしても、よほど強力な腹痛… 何か
危ないモノでも入ってたんじゃないのか!?」
 腹を押さえながら情けない足取りで歩くのは、カミルだった。
 そんな状態だから、とある通路に出た途端、ばったりと乗組員に
出会ってしまうことになる。
「は!?」
 当然カミルは驚いた。
 だが正確には、自分を見て異常に驚いた相手を見て自分が驚いた。
 私の美貌に酔いしれたか? やはり毎日欠かさず化粧して金髪の
かつらも忘れずにつける、この心構えが大事なのだ! そうだ! 
そうに違いない!
 だが、それもこれも無論、知性と品位を兼ね備えた、まさに比類
なき私の美貌あってこそ…
 そうそう、化粧品も底をついてきたなぁ。そろそろどこかで補充
しなければ…
 自分自身に酔いしれること数秒。
「は!?」
 カミルは気を取り直した。
 いかん! このままではエラいことになってしまう!
 何だかわからんが、今のうちに…
 何やらぶつぶつ言いながらうずくまる奇妙な少年から、カミルは
急いで距離を置いた。
 ところが、あろうことか別の人物が近付いてきたのである。
「げっ! まだいたのか!? よ、よぉし、こうなったら…」

 医務室にはマイケルが先に来ていた。
「これだよこれ。やっと見つかった!」
「おお、まさしくこれだ! カミーグのやつ、後で覚えてろよ!」
 二人して下痢止め剤を飲む。
「そういえば、何か騒がしかったけど、カミル、まさか見つかった
とか言うんじゃあ…」
「大丈夫、私が何とかしておいたからなぁ」
「カミル、ほんと?」
「ふふん、アタシの愛の接吻で、あの坊やもイ・チ・コ・ロ・よ!」
「そんなわけないだろ!?」
 あらためてカミルのアホさ加減を思い知るマイケルだった。

 なんだかんだで二週間。案外大丈夫なことがわかって、すっかり
居心地のよくなった三人。
 今日も朝から準備運動なんかしたりして。
 ところが、ここで重要なことが判明する。
<<そのデータ、間違ってますよ… 僕でもわかるのに…>>
「何言ってんだよ、ジャンブー!」
<<なんかこの艦、地球へ行かないみたいですけど>>
「なにぃーっ!?」
 三人揃って大合唱。
<<航路データの設定をしているらしいんですけど、少なくとも、
地球向けのデータじゃないような…>>
 自信なさげに語るロボットだっていたりする。
<<ねえジャンブー、データ見せてみて? …ほんと、データ形式
が間違ってる。それに、解読してみても、地球への航路データじゃ
ないわ?>>
 パティーグの正確無比な解析で、どうやらこの艦は、近くの星に
向かって航行しているらしいことがわかった。
「冗談じゃない!」
「じょーだんじゃないのはこっちも同じよ、ほら」
 パティの手にしたポテトチップスの袋から粉がこぼれ落ちる。
 食糧が底をついたのだ。
 それを目の当たりにしたマイケルやカミルが叫ぶ。
「あーっ! ジャンブー! 腹減ったーっ!」
「こうなったら何でもいいからレンジでチンして持ってこいっ!」
<<そ、そんなこと言われても… それに、なんで僕だけに言うん
ですか!?>>
「お前が一番燃料入ってるからに決まってるだろうが!」
 カミルは当たり前の事を言わすな、と、かなり頭に来ている様子。
「はやくしろ〜っ! でなきゃお前を食っちまうぞぉ!!」
<<ロ、ロボットなんて食べられませんよ!?>>
「うるさーい! 何でもいいからって言ってるだろーっ!?」
「おいジャンブー、せっかくだからこのヤギを調理してこい!」
 つい先日までパティに偉そうな口をきいていたが、実際に飢えに
弱いのは男連中の方なのだ。
<<まったく、ロボット遣いの荒い…>>
 と、主人のためにけなげに働くロボットがここにいたりする。
「ちょっと待って、ジャンブー! あのね…」
 パティがけなげな通学ロボットに耳打ちした。
<<わかりました、頑張ります!>>

「しかし、いい加減、見つかるのも時間の問題だな?」
「自分がそうしたんじゃないか!」
 食糧切れで意気消沈のマイケルに、それでもカミルは提案する。
「黙って最後まで聞け! でだ。ここはひとつ、この艦を乗っ取る
というのはどうだ?」
「乗っ取る!?」
「幸いコンピューターに簡単に接続出来るようだし、実際こっちの
思い通りとまでは行かなくとも多少はインパクトを与えられるかも…」
 その話、マイケルは大いにのった。
「よぉし、ジャンブー… あ、そうか。今出ていったんだっけ」
<<じゃあオレがやってみるか>>
「大丈夫か、カミーグ?」
<<オレだけ出来ないってことはないだろ? …あれ?>>
「どうした?」
<<うまく繋がらない>>
「お前なぁ! ご主人様に恥かかせるつもりかっ!?」
<<違うって。向こうが止まってるみたい>>

 しばらく待って、ようやくカミーグが笑顔を見せた。
<<あっ! 繋がった!>>
 ごちゃごちゃとコンピューターとやり取りしているが、やはり、
どこか不調ではあるらしい。
 苦戦するロボットを尻目に、協議する3人。
「でも艦を乗っ取るなんて出来るのかなぁ?」と、マイケル。
「出来なくても、燃料さえあれば、ここから逃げられるんじゃない?」
と、パティ。
「うむ… 確かにそっちの方が手っ取り早いかもしれんな?」と、
カミル。
「じゃあ、燃料探しに行ってくるから、動くんじゃないぞ!」
 今頃この結論に戻るとは、やっぱりおバカさんな連中である。

「パティーグ、カミーグ、お腹すいたでしょ?」
「燃料見つけてきてやったぞ。ありがたく思え」
 何故かずぶ濡れのご主人様達が戻ってきて、上機嫌のロボット達。
<<なんてことねーよ。グチ聞いてやったりしてよぉ>>
<<ただし、艦内コンピューターシステムになお多少の異常がある
可能性大です。これでは正確な状況を把握できません>>
 カミーグもパティーグも自分の仕事ぶりに得意顔だ。
「あれ、ジャンブーは?」
<<さぁ… まだ帰ってきてないけど>>
<<どうしたのかしら、ジャンブー…>>
「あいつ、一体何やってるんだ!? さっさとここから逃げなきゃ
いけないのに!」
 自分達で食糧要求しておいて随分な言い草である。
「とにかく、この艦の後ろの方、この前行った格納庫から逃げるぞ!」
「先に行って、待ってるからね?」
「ちょ、ちょっと待ってくれよぉ!」

 一人で待つこと数十分。
<<わーっ! マイケル! 助けて〜!!>>
「どうした、ジャンブー!?」
<<乗組員に見つかって尋問されてたんです〜!>>
「ま、まずい! 最悪の事態じゃないか!!」
 で、大急ぎで落ち合うはずの格納庫に行ってみると…
「げっ! あいつら、いない!!」
<<先に行っちゃったんでしょうか?>>
「ひどいなぁ、俺だけ置いてけぼりなんて! 待っててくれるって
言ってたのに!!」
<<マイケル、急ぎましょう!>>
 そうそう、と、手持ちタンクを渡すマイケル。
「ほら、お前の燃料、持ってきてやったぞ!」
<<ゴクゴク… 補給完了です!>>
「よぉし、ジャンブー、行くぞ!」
<<み〜な〜ぎ〜る〜〜っ!!>>

 ジャンブー・ガラットのコクピットに、見慣れた二人の顔が映し
出された。
<<遅かったな?>>
<<捕まったかと思っちゃった!>>
「二人ともひどいなぁ…」
<<そういえば、ヤギはどうした?>>
 カミルの問いかけに、 「調理の途中で逃げられたんだってさ」
 それを聞いて、パティは一言…
<<それでい〜んじゃないの?>>

(キートン山田氏風に読んでね)
「こうして、彼らの地球へ向けての放浪の旅は、まだまだ続くので
 あった… ま、そのうち帰れるのはわかってるのだが」



<次回予告>

マイケル:ふぅ、やばかったなぁ?
パティ :マイケル、ドジばっかりなんだもん! お腹こわすし。
マイケル:あれはカミルがドジなんだってば! それに、パティが
     一番最初に見つかったんじゃないか!?
パティ :あれ? そうだっけ?
マイケル:ごまかさないの! でもほんと、いつになったら地球に
     帰れるんだろう? もうジャンブーの燃料も少ないし。
パティ :次の星では、結構いいバイトがありそうなんだけど…
マイケル:そこでは俺に向いてるのバイトがあって、もう大活躍!
パティ :ほんとかなぁ?
マイケル:次回、超力ロボガラット13
     「目立ってナンボ!? デロイア星細腕繁盛記!」
パティ :ねえ、もしかして、また今度もカミルって…
マイケル:やっぱ… そうなんでしょ?
パティ :お金稼いでくれたら何でもいいんだけどね。



 あれ? ここってもしかして、へなちょこダイジェスト18話の
いいわけ、でしたっけ?
 しまった、間違えた! …本当はこっちなんです。
 (すごく白々しい…)