銀河漂流バイファム13
へなちょこストーリーダイジェスト
第21話


「いやぁ、いろいろあったけど、無事タウトに着いてよかったよ。
 でもチェンバーさん達、本当に二人だけでどこに行ってしまった
 のだろうか。ま、これさえあれば問題ないんだけどね。さぁ… 
 僕の切り札の登場だっ!!」

再会への秒読み!
収容所へいそげ!

「ちょっとあなた達! 随分遅かったわねっ! いつまで待たせる
つもりだったのかしらっ!」
 赤いRVとポッドから降りるや否や、いきなり怒鳴りつけられる
ロディとバーツ。
「な、なんだ?」
「どうしたんだ、クレア!?」
 みんなのもとへ行こうとする二人の前に、鬼神のごとき形相で、
『現』キャプテンが立ちはだかる。
「あの真っ赤な派手ハデRVと戦闘機の出来そこないみたいなのは
何よ!?」
 指差して騒ぐ姿に圧倒されるパイロット達。
「何ったって、なぁ…」
「バイファムとネオファムはこの星のどこかに落ちちまったし…」
「トゥランファムはカーゴがないから持って来れなくて…」
 必死で弁明するも、『現』キャプテンには結果が第一だった。
「この先大丈夫!? たったあれだけであたし達を守りきれるの? 
大体なによあの趣味悪い真っ赤なRV、どこ歩いてたって相手から
バレバレじゃない! それにあの小さな戦闘機! あれ、この星に
持ってきたらどうにかなるっていう代物なの!?」
「そんなこと言われても… なぁ、バーツ?」
 命がけの大気圏突入、地表でも数々の冒険を経て、ようやく合流
できたと思ったらこの仕打ち。ロディでなくてもヘコんでしまう。
「ああ、あの場合は仕方なかったんだ…」
 クレアだって真紅のボディコンスーツ来てたじゃねーか… とは
思っても口にはしないバーツだった。
「もういいわ。しょうがないもの。あたし達を守ってくれるのなら
問題ないわよね… はぁ」
 ため息混じりにクレアが去っていくのを見ての事だろうか、実に
タイミングよく、入れ違いでスコットが現れた。
「いやぁ、君達災難だったねぇ、あはは!」
 お前ってやつは…
 あの苦難の日々を、そんな一言で済ませるなんてよぉ…
 怒りの炎を鎮めるのに苦労しているバーツをよそに、
「災難じゃ済まないぞ!」
と、怒りをあらわにするのはロディ。
「君がキャプテンというのもどうかと思うけど、今のクレアよりは
マシだ。何とかならないのか!?」
 苦楽を共にした親友に、バーツだってつられてしまう。
「だな。このままじゃこっちが持たないぜ。スコットだったら俺達
もっと好き勝手出来るからな」
 してやったり!
 きっとこんな言葉が出てくると待っていたんだ!
 そうだよ! やっぱりキャプテンは僕じゃないとなぁ!!
 やたらとはしゃぐスコット。あまりいい印象を持たれていないと
いう事には気付いていないのだろうか。
「最初はクレアの方がいいって思ってたんじゃないのか? ん!?」
 思わずイヤミたっぷりにねちっこく二人に聞いて回る。
「い、いや、そんなことないさ。やっぱり君こそキャプテンだ」
 キャプテンシートを奪われて、砲座要員にまで格下げされ、愛機
バイファムは砲座に狙われ、挙句の果てには先程の体たらく。
 堪忍袋の緒は切れやすい状態のロディだった。
「そうだぜ、お前さんあっての俺達だろう?」
 ロディ程ではないかもしれないが、自分達の安全を無視する采配、
トレードマークの赤を否定、など、こちらもこちらで鬱憤もたまる
状況だったようだ。
 こんな中途半端な絶賛を浴び、まさにこの世の春、有頂天の『前』
キャプテン。
「そうかそうか、うんうん。じゃあ、とっておきのものを…」
 小躍りした後、何を思ったか一つ頷き、シャトルのコクピットを
指差した。
「実はチェンバーさんから収容所までの地図をもらってあるんだ!」
「じいさんからの地図?」
 その瞬間、バーツが何となく胡散臭さを感じとったが、
「チェンバーさん達がいなくなった今、それしか頼るものがないな」
というロディの意見には素直に頷くしかないのもわかっていた。
「よし、プリントアウトして持っていこう! さぁみんな、出発だ!!
モタモタしてると置いてくぞぉ! クレアちゃーん! 出発しよう
よーっ!! もちろん僕のナビゲーションでさぁーっ!!」
 かなりの幅・高さのスキップで、スコットは走り去って行った。
 その滑稽な後姿を眺めつつ、ふと気になる事を思い出したバーツ。
「…そういやぁ、じいさん達、トラックを持ち出したんだって?」
「そうらしいな。どこへ行ったのか…」
「おじいさん達… メリーを… 連れてった…」
「うわっ!」
 ロディがびっくりするその足元に、ジミーが立っていた。
 実際に立ち去るところを見てはいないが、チェンバー夫妻が持ち
出したトラックに一早くメリーを入れたのは他ならぬジミーだった。
「おじいさん、すぐ出発って、言ったから… メリー…」
 涙ポロポロ。
「じいさん達と一緒に、元気でやってるさ。もうあきらめろ、な?」
 バーツの優しい言葉も、ジミーの耳には聞こえていなかった。
「なぁ、じいさん達、俺のレッドベアーの旗のついた方のトラック
に乗ってっちまったらしいんだよなぁ! 追いかけて、あの旗取り
返そーぜ!」
 お前もか… ジミーの時とは違い、ケンツの訴えをあからさまに
却下するバーツ。
「一人で行けよ」

 不時着状態のシャトル内では、みんなで出発準備に取り掛かって
いた。収容所への旅立ちの時だ。
 …と言えば聞こえがいいが、ガラクタ、もとい、みんなの大事な
荷物の整理である。
 ある程度降ろさなければ人が乗れない程トラックの中はガラクタ、
もとい、みんなの大事な荷物でいっぱいなのである。
「ねぇ、クレア、これはどうすれば…」
 大きな地球儀を片手に、フレッドが尋ねる。
 ところが、あまり期待していた返事ではなかった。
「うーん…」
 トラックのそばで立ち尽くすクレア。
 腕を組み、首を傾げて何やら思い巡らせている様子。
「どうしたの、クレア?」
 カチュアが、現キャプテンの苦悩する背中に声をかけた。
「もしかして、あの写真の人に逢えないからガッカリしてんの?」
 荷物を降ろしながらマキが茶化す。「あの写真の人」とは、軌道
ステーションでポール=チェンバーが見せた息子「アラン」のこと
である。
 ところが、クレアはこの話にも乗ってこない。
「そうなのよねぇ。どちらかといえばチェンバーさんの方について
行きたいくらいだったから、残念と言えば残念なのよ。でも…」
「でも?」
「なんとなく、ひっかかることがあるのよねぇ…」
「なんと、なく…?」
「そう、なんとなく…」
 やけに思いつめているクレアを見て、何しにきたのだろう? と、
思わずにはいられないマキだった。

 いよいよトラックが出発した。
 もうすぐ両親に逢えるという期待感からか、妙な荷物で天井まで
一杯のトラックの荷台にも、そこはかとなく明るさが漂う。
「♪パパにあえる〜」
「♪ママにあえる〜」
「それ、何の歌?」
 陽気に歌うマルロとルチーナにペンチがたずねた。
「さっきつくったうただよ? えっと、♪おじいちゃんにあえる〜
「♪おばあちゃんにあえる〜」
「♪おにいちゃんにあえる〜」
「♪おねえちゃんにあえる〜 …えっと、えっと」
「つぎは… だれだっけ?」
「うーんと、えーっと…」
 大変微笑ましい光景に、一同思わず心が和む。
 ただ一人、ジミーを除いては。

 敵の攻撃を警戒して、先行する赤いRVとポッド。
<<じーさん達もし抜け駆けしたんだったら… ドジだけは踏んで
もらいたくねーなぁ>>
 バーツからの通信に相槌を打とうとすると、
「俺達の奪還作戦が… バーツ!」
 目の前にはますます険しくなる山。
 モニター越しに山を見ての、バーツの一言。
<<こ、こりゃあ、とんでもねーことになってきたなぁ>>
 一度RV、トラック、ポッドが全て集まれる、少し広い空き地に
落ち着くと、スコットがトラックから飛び出してきた。
「どうしたんだ?」
「見てわかんねぇのか? あの山をよ」
 赤いRVから降りてきたバーツの言葉に、目を凝らすと、事態が
把握できたようだ。
「えーっ!? ゆ、雪ぃ!?」
「オレ、初めて見た!」
「本物見るのは私も初めて!」
 はしゃぐメンバー達をよそに、ロディとバーツがスコットに詰め
寄る。
「ほんとにあの先なのか?」
「ああ、この地図を見れば一目瞭然!」
 そう言いつつ取り出した紙を見て、驚くロディとバーツ。
「ちょっと待て、スコット!」
「何だよこのくそ長い地図は!」
 スコットの手にしているものは、長い長い巻物と化したプリンター
用紙だった。
「しかも今時熱転写かよ!」
「所々かすれてるし…」
「ほら、な? ここに書いてあるだろう?」
「…なにぃ! 収容所『候補1』だって!?」
 愕然とする二人。
 だが、悲しいかな、一同は今、この地図を信用するしかなかった。

 どれだけ進んだだろうか。
「この先もずーっとこんな感じだぞ?」
 何度目かの休憩でのバーツの言葉に、スコットの気が滅入る。
「ちょっと、もっとサクサク行けないの!?」
 相変わらずクレアの注文は厳しい。
「この雪だからな」
「じーさん達も、この道は使ってないみたいだ。轍がないだろう?」
 ちょっと反論を試みるロディ&バーツだったが、
「雪が降り積もって、わからなくなったんじゃないか?」
 スコットの分析に乗っかる形で、
「何しろあなた達と合流するのにすごく時間がかかったものね」
 厳しいクレアの一言が飛ぶ。
「いや、たとえば迂回路とかがあるんじゃねーのか?」
 バーツが反論するも、やはり一蹴される。
「とりあえず、ちょっと探ってきてちょうだい! あたし達の方は
追いつく対策を練るから。それまでは…」
「隠れていられる、穴がある…」
 唐突にジミーが言った通り、横穴があった。
「そう、あそこで対策を考えるから、さっさと行ってきてちょうだい。
見張りはマキとケンツ、お願いね?」

「ねぇ軍曹… アンタ、親父さんにあったら、なんて言う?」
「そんなこと考えたことないなぁ。マキ、お前考えたことあんのか?」
「…まだなんだ」
「そうだよなぁ、俺だったら、まず現在の戦況を報告だな! 地球
軍ももちろん負けちゃいないけど、押され気味って事実は隠せねぇ
からな。それにしても、じいさん達、何も俺のレッドベアーの旗を
持って行くことねーじゃんかよー! あれ書くの3時間もかかった
んだぜ!?」
 はぁ、アンタじゃダメだ…
 こういうこと話せる相手じゃないよね…
 あっさりと悟ったマキだった。
「それにしてもいいなぁ… アタイ、見張りなんて言い出さなきゃ
よかったなぁ」
 ボヤきながら、穴の中をのぞくマキに、思わずケンツもつられた。

「うふふっ! フレッド! 私をつかまえてごらんなさ〜い!」
「待ってよペンチ! うわっ!」
 前のめりに転んで雪の中に顔をうずめるフレッド。
「んもう、だらしないわね! ほら、立って!」
「う、うん」
「いい? ボーゲンの基本は…」
 フレッドの前を行くペンチ。その横を軽快に滑り降りるカチュア。
 驚く事に、長い洞穴を抜けるとそこは比較的なだらかなゲレンデ。
スキー初心者にもってこいの場所だった。
 そう、雪山は今、彼らにとって白銀のパラダイスとなっていたの
である。
 もちろん、スキーヤーだけではない。
「ぼくの方がおっきいよ!」
「まけないんだから!」
 ゲレンデの裾、穴の近くでマルロとルチーナは仲良く?雪だるま
作り。
 ちなみに、この穴のはるか向こう側で、マキとケンツが見張り中
なのである。
「このっ!」
「うりゃっ!」
「えいっ!」
「うわっ! 君達、なんで僕にばっかり! 誰だ、石を入れたのは!」
 クレアやシャロン、ジミーはもっぱら雪合戦に夢中。やけに力の
こもった雪球ばかり飛んでくるためか、圧倒的に劣勢のスコット。
 さて、スキー組のフレッドとペンチ、カチュアは、滑り降りては
板をかついで山登り、と、未整備なゲレンデならではのかなり辛い
状況ではある。
 それにしてもペンチのスキーのテクニックは素晴らしかった。
 本物の雪見るの、初めてだったんじゃなかったっけ…?
 不思議に思うフレッドだったが、彼女の華麗なシュプールにただ
見とれるばかり。
 と、彼の少し上でとまった白いスキーウェア。
 ペンチが右手で「BANG!」。倒れるフレッド。
 そんな、映画のワンシーンのように幸せ一杯な二人の横を過ぎる
カチュアは、その華麗な滑降とは裏腹に、何となく面白くない気分
だった。

「来れなかったのか?」
 しびれを切らして戻ってきたからこその、ロディの台詞である。
「あ、ああ、トラックの調子が悪くて… で、どうだった?」
 嘘にしか聞こえないスコットの問いかけに、バーツが苛立つ。
「どうもこうもあるかよ!」
 偵察を行なった結果、どうやら収容所候補1は「もぬけのから」
だったらしい。
 そこで、まるで他人事のように、『現』キャプテンが指示を出す。
「仕方ないわね、次の候補地へ行きましょう?」
「…」

 ポール=チェンバー謹製タウト地図の「収容所候補2」へ向け、
トラックが走り出した。
「♪ようちえんのせんせいにあえる〜」
「♪おもちゃやさんのおじちゃんにあえる〜」
「♪だがしやのおばあちゃんにあえる〜」
「♪かみしばいのおじいちゃんにあえる〜」
「♪やきいもやさんにあえる〜」
「♪おいしゃさんに… は、あいたくないなぁ」
「ちゅうしゃいたいから? マルロのよわむし!」
「ルチーナだっていやだろう!?」
「あたしへいきだもん!」
「うそつき!」
 陽気な二人に思わず心が和む一同。
 今度こそ両親に逢える… という想いが、妙な荷物が何故か少し
減った気がするトラックの荷台にも、そこはかとなく明るさが漂う。
 そんな中、ケンツの提案は場違いなものとなった。
「これからは危険だからなぁ、みんな銃を持って…」
 もちろん、その提案は最後まで言わせてはもらえなかった。
「あたし絶対嫌よ! だってキャプテンなんだもの!」
 クレアの断り方も大概な話だが、
「私だって嫌よ! 手が汚れちゃうし」
 もっとも端的に嫌がるペンチの一言に、ケンツは意気消沈する。

「なんだぁっ!?」
 驚くのも無理はない。
 彼らの目の前には、広大な砂漠が広がっていた。
 ここで『現』キャプテンの判断はなかなか素早く、的確だった。
「これじゃあ無理ね。ロディ、バーツ、とりあえず収容所を探って
きてちょうだい。あたし達も対策を練って後から追いつくから。で、
今夜はどうしましょうか…?」
「隠れていられる、オアシスがある…」
 唐突にジミーが言った通り、砂山一つ越えたところにオアシスが
あった。
「そうね、あそこで待ってるから、さっさと行ってきてちょうだい」
 空いた口のふさがらないロディとバーツだった。

「フレッド! コーヒー持ってきたわよぉ!」
 ペンチが砂で出来た丘にゆっくりと登ってきた。
「ありがと… つ、冷たいっ!」
「あら、せっかくアイスにしたのに… 砂漠って夜はこんなに寒い
なんて、知らなかったから。でも、ここの砂山って崩れないのね?」
「ここだけ下に何かが埋まってるみたい。ちょうどいいんだ」
「ふぅん、そうなの…」
 災難なフレッドと殺伐とした夜の砂漠の風景を不思議そうに交互
に見つめるペンチ。
「…どうしたの、ペンチ? 見張りは僕だけでいいはずだけど」
「あっち、あんまり面白くないから」
「そ、そう…」
 ふっ、と会話が途切れた。
 フレッドにしてみれば、二人でいるだけでとっても幸せな瞬間。
 ところが、ペンチはそう思ってはいないようである。
「ねぇ、フレッド、『カン湖』って知ってる?」
 突然、あまりにもコーヒーや砂漠と関係のない話題を彼女が無理
矢理持ち出した。動揺を隠せないフレッド。
「さ、さぁ…」
「地球にある、塩を含んだ湖なの」
「ああ、数百年毎に移動するらしいけど」
「…この戦争、いつ終わるのかしら」
 何を思ってのことだったのか、恐ろしい程のペンチの言葉の脈絡
のなさに、彼女がオアシスへ帰った後も一晩中悩むフレッドだった。

 一方、そのオアシスはいつしか宴会場と化していた。
「タウトに代わって、おしおきよ!」
「ぎゃー、やられたーっ!」
 ケンツが倒れ、寸劇が滞りなく終了したところである。
「いいぞ、マキ!!」
「しびれるーっ!」
 とりあえず、他に娯楽がないらしい。
 周りは延々と続く砂漠。対策がなければ動くこともできない。と
なると、酒ビン片手にこういうことになるらしい。
「しかし、誰だ? セーラー服なんか持ってきたのは?」
 スコットが疑問に思うのも無理はない。
 小道具類はガラクタ… もとい、大切な荷物から色々と引っ張り
出してきたようだ。
「案外キャップだったりして? 前例があるだけにねぇ…」
「ちょ、ちょっと! あの件は誤解だって言ってるだろう!」
 やたら慌てふためくスコットと疑いの眼差しをむけ続けるマキの
足元に、マルロとルチーナが走り寄る。
「マキおねえちゃんすっごーい!」
「かっこいいーっ!」
「まあね」
 自慢げにおチビさん達の相手をするマキをよそに、先程の寸劇の
批評を行なうものがいた。
「うーん、オレだったらもっとウマいんだけどなぁ?」
 そのシャロンの自信に満ち溢れた発言に、ケンツが反論する。
「はぁ? お前にほんとに劇なんかできんのか?」
「まーな。でも準備があるから今日はダメだぜ」
「じゃあ今度準備が出来たら絶対やってみせろよな!」
「気がむいたらな… ンクククッ!」
 ほんとかよぉ、と思うケンツだが、別にどうでもよかったのかも
しれない。
 と、みんなが一段落したところで…
「じゃあ次は僕のジョークショーかな!?」
 喜び勇んで立ち上がったスコットが、ゆっくり腰をおろす羽目に
なったのは、皆の視線の温度に気がついたからだ。

「本当に来れなかったのか?」
「あ、ああ、なかなかうまく砂の上を走れなくてさぁ… で、どう
だった?」
「どうもこうもあるかよ!」
 どうやら収容所候補2も「もぬけのから」だったらしい。
「仕方ないわね、次の候補地へ行きましょう!?」
「……」

 ポール=チェンバー謹製タウト地図の「収容所候補3」へ向け、
トラックが走り出した。
「えっと、えっと…」
「うーんと、えーっと…」
 困惑の表情を見せる二人に、見かねたペンチから提案があった。
「まとめちゃって、『みんなにあえる』でいいんじゃないかしら?」
「そっか! ♪パパにあえる〜 ママにあえる〜」
「♪みんなにあえる〜! …えっ?」
 その適当な歌に、きちんとメロディをつけたものがいた。
「あ、ジミー」
「ハーモニカだ!」
 自分達が苦労して作った歌詞にメロディまでついて、ゴキゲンな
二人だった。

「な、なんだぁっ!?」
 驚くのも無理はない。
 彼らの目の前に、今度は青くきらめく海が広がっていた。
「ロディ、今回はお前一人で行って来いよ。このRVじゃこの海は
越せそうにないからな」
 バーツの提案を少し頭の中で検討するロディだったが、そう時間
を置くことなく結論が出たようだ。
 そうか、ようやく「どうにかなるの?」なポッドに、そしてその
パイロットである自分に脚光が浴びる!
 これで収容所が本物だったりしたら…
 目立てる! これで久々に目立てるぞっ!!
 早々に飛び去ったポッドを見送った一行の中で、半ば義務化した
のだろうか、状況説明の一言。
「隠れていられる、砂浜がある…」
 唐突にジミーが言った通り隠れられるわけはないのだが、目の前
には白くて美しい砂浜があった。

「ぜんぽーにてきはっけん!」
「そういんたいひー!」
「そういんたいじしてくださいー!」
「ちがうよたいひだよ!」
「たいじじゃないの!?」
 浜辺の見張り部隊はビーチパラソルの下で言い争っていた。
「あーあ、つまんないのーっ!」
「ぼくもうねむくなってきた…」
 お昼寝タイムが近いらしく、万が一目の行き届かない所へ行って
しまうと危険でもあり、海辺では遊ばせてもらえない二人だった。

 真夏の太陽の下、水着姿の少年少女達が、広大な海をエンジョイ
していた。
「だって、16話では水着着られなかったんだもの!」
 とは、現キャプテンの談話。
 海は由緒正しき真夏の社交場。
 その証拠に、ほら、海に入ると…
「うふふっ! フレッド! 私をつかまえてごらんなさ〜い!」
「待ってよペンチ! うわっ!」
 もがくフレッド。
「んもう、だらしないわね! ほら、つかまって!」
「う、うん」
「いい? バタフライの基本は…」
 相変わらずの様子ではあるのだが。
 そして、少し沖に目をやると…
「うわっ!」
 サーフボードが見事なまでに宙を舞った。
 そしてバーツも宙を舞った。

 砂浜の方では、シャロン・カチュア対スコット・ケンツのビーチ
バレーが始まっていた。
「どうしてあたしが審判なの?」
「だってキャプテンなんだろ!? それくらい我慢しろよ!」
「…」
 せっかくの浜辺だったが、あまり面白くないクレアだった。

「ちょっと待て!」
 例のごとく帰ってきたロディ。
「主人公がポッドに乗って収容所探索してるんだぞ!? どうして
そっちばっかり目立ってるんだっ!?」
「知るかよ… それに、その様子じゃあ、誰もいなかったんだろ?」
「うっ…」
 言い返せないほど鋭いバーツの指摘だった。
 どうやら収容所候補3も「もぬけのから」だったらしい。
「くそっ、みんな体を真っ黒に焼いてるってのに、俺だけ、こんな…」
「仕方ないわね、とにかく次の候補地へ行きましょう!?」
「………」
 すっかり意気消沈のロディだったが、ふと重要なことを思い出し、
頼れる「前」キャプテンを呼びつける。
「そうだ、スコット、ちょっと相談が…」
「ん? どうしたんだい、ロディ?」
「海越えしたからあのポッドの燃料が無くなってしまったんだ」
「それで?」
「だからスコット、お前のカバンの中に…」
「これって… ああっ!」
「しーっ! 声が大きいって、スコット!」
「お、そういうことなら俺も…」
 この密談にバーツも加わった。
「ちょ、ちょっと待てよ君達! それじゃあ、わざわざジェイナス
からあれだけのモノを…」
「いや、残念ながら、手持ちはこれで全部だ」
「色々あって、少しだけしか持ち出せなかったんだ。バイファムと
ネオファムの中にはもう少し詰めてあるんだが… この星のどこに
落ちたのか…」
「だけど、これだけったって…」
「そこっ! 何コソコソやってんのっ!?」
 クレアキャプテンの怒号が響く。ビクッ! と、すくめた3人の
背中が何とも情けない。

 さて、いったい何日経ったのだろうか?
 そんなことをさらに幾度か繰り返し、ようやくタウトを一周した
ことを実感する13人。
「シャトルがある…」
 言われなくてもわかるのだが、ジミーの一言が重い。
 だが、この空気を切り裂く声をあげるものがいた。
「あーっ! 俺の旗ーっ!!」
 シャトルのそば、きちんと地面に刺さり、立った状態で風になび
いているその旗は、チェンバー夫妻が乗っていった方のトラックに
くくりつけていたものだった。つまり、これは二人が一度シャトル
周辺に戻ってきたことを示している。
 旗を引っこ抜いて大はしゃぎのケンツをよそに、バーツがその旗
のそばに紙が一枚添えてあったことに気づく。
 重しの石を取り除き、拾い上げてみると、その紙にはこんな事が
書かれてあった。
「こんな星に収容所なんかありゃせんよ! タウト一周ご苦労さん! 
観光楽しんだらとっとと宇宙へ帰りなさい! うひひひっ!」
 自分の顔から血の気が引いていくのがわかるバーツ。
 読んでいいものかどうか、一瞬ためらったが、無論黙っていても
仕方のない話、「うひひひっ!」も含め、正直に読んで聞かせた。
「いやーっ、じーさん達わざわざ返しにきてくれたんだなぁ!」
 一同怒りにうち震える中、ケンツだけが場違いにはしゃぎ続けた。

「あのクソジジイ! よくも僕達をたぶらかしてくれたな! 今度
 あったらただじゃすまないぞ! 忘れたなんて言わせないからな!
 …それにしても、心配だなぁ。こんなカバンの中に入れるなんて。
 誰かに見つかったらどうするんだ!? また僕の品性を疑われて
 しまうじゃないか!」