銀河漂流バイファム13
へなちょこストーリーダイジェスト
第20話
「未だクレアからキャプテンの座を取り戻せずにいる。彼女の一声
でタウトへ降りる準備が着々と進んでいた。極めてスムーズに、
何の騒動もなく、みんなが作業に取りかかっている。一体僕は、
僕の立場はどうなっているんだ!?」
決死のランディング!
救出の第一歩!?
「あのじーさんもスコットも信用できねぇからな。完全に出発する
時が来るまでは、まだ修理は終わらない」
ロディへ向けた余裕の笑み、欠けた歯がまぶしい。
宇宙ステーションのデッキではロディ・バーツ・マキ・カチュア
の4人が、故障したシャトル「ロブスター号」を修理していた。
どうやら外側の修理自体はほとんど出来てしまっているらしい。
ロディとバーツの手にかかればルービンも真っ青のスピード修理だ。
マキとカチュアのコックピット内の調整もかなり進んでいる。問題
なく大気圏に突入できる自信さえある。
ところが、それとは別の問題が二人を悩ませていた。
「なぁバーツ、バイファム達はどうする?」
整備用リフトの下からのロディの声に、そのリフトに乗っている
バーツが答える。
「持っていくに決まってるだろう? どんな敵が待ってるかわかん
ねぇんだぜ?」
「どうやって? シャトルにはそんなスペースはないぞ? 大気圏
突入はどうするんだ?」
「耐熱シートをかぶせりゃ、大丈夫だ」
その後作業の手を止めることなく細々と大気圏突入プランを説明
するバーツ。なるほどと頷くロディ。
「しかし、技術面はクリア出来たとしてもやっこさんがどういうか
わからんな。クレアは説得できると思うが…」
バーツの心配はむしろそちらにあったようだ。
確かに、スコットなら危険過ぎるとかなんとか、必ず反対意見を
言ってくるに違いない。
「待てよ? そっちも何とか出来るかも」
今度はロディにプランがあるようだ。
「どういうことだ、ロディ?」
「こういうことさ、つまり…」
リフトから降りたバーツに耳打ちする親友の意見は、納得させる
のに充分だった。
「そうか! 確かに必要だ! これでスコットの説得もイケる!」
「逆にこっちはクレアにバレないようにしなきゃいけないけど」
「だな」
「出発までまだまだかかりそうじゃな?」
ポールがジェイナスのブリッジに入って早々、キャプテンシート
でうなだれるスコットに声をかけた。というより、他に声をかける
人物がいないから仕方なく、といった感じである。
「いや、ちょっと、みんなに聞いてみないと…」
その返事を聞いて、胡散臭そうにスコットを見つめる。
「お前さん、みたところ仲間達に信頼されてないようじゃが…?」
「ど、どうしてそれを…!?」
閑散としたブリッジと大忙しの格納庫を見れば、気づかない者は
いないと思うのだが。
そんなスコットを思ってかどうか、老人は意外とも思える言葉を
青年にかけた。
「そうかそうか。そーゆーことはワシにまかせておけば…」
「本当ですかぁ!?」
どうだろう、この身代わりの早さ。
つられてポールまでじわりじわりと得意満面の笑みを浮かべる。
「当たり前じゃ! これから収容所の場所を教えてやろうというん
じゃからな!」
「そ、それはすごいっ! まだ誰も知らない情報だぞ! みんなの
尊敬のまなざしを一身に浴びる僕… うーん、すばらしい!」
キャプテンシートにあった紙と鉛筆にポールが地図を書き始める。
「ここに神社があるじゃろ? でもって、こっちが海岸、ホテルが
この辺に…」
「あのぉ、何言ってるんですか?」
「おお、そうじゃそうじゃ。ちょっとここを貸してもらえんか?」
「ここって…?」
一方的にまくしたてられ、しどろもどろのスコットに、ポールは
苛立ちすら覚えながらも、とりあえずその辺のオペレーターシート
に座る。
「ブリッジのコンピューターに決まっとるじゃろーが!」
「はぁ? あの、何…するんですか?」
「ロブスター号のコンピューターとここのコンピューターをリンク
させ、着陸箇所と収容所の位置情報データを作成するんじゃ。…ん?
セキュリティがきついな。アドミニストレーターのパスワードは?」
「あ、パスワードはJ、O、K、最後はEです」
いかにも彼らしいパスワードだった。
「いやぁ、この前は勝手にボギーに侵入されて大変でしたからね。
セキュリティにも充分気を使っているんですよ。パッチもいくつか
あてましたし」
誇らしげに語るスコットの言葉は、黙々と作業するポールの耳に
入るはずもなかった。
「ふむふむ、なるほどな」
ポールは俊敏な動きですっくと立ち上がると、ブリッジを出る。
「あ、あの、どこへ?」
「わしも色々忙しくてな」
そのポールと入れ違いにブリッジに颯爽と現れる女の子二人。
カチュアがおもむろにオペレーターシートに座ると、マキの指示
を受けながらキーボードを叩く。
「二人とも、何やってるんだい?」
やっぱり置いてけぼりのスコット、目の前で面白そうな事をして
いるのだから、ちょっかい出さずにはいられない。
マキが振り返り、ウィンクでスコットを一撃。
「バーツ達に頼まれて、ちょっとシミュレーションをね?」
妙に照れながらも、今更何をするのかとばかりに彼が口を開く。
「シュミレーション?」
「『シミュ』レーション!!」
カチュアも振り向いての、二人同時の指摘。
そんな、くだらない言い間違いにすら冷静になれないカチュアを
よそに、たじろぐスコットに説明するのはマキ。
「RVをタウトに降ろすためのシミュレーションをね」
「あいつらっ! また勝手な事をっ!!」
スコットは苛立ちをあらわにしてブリッジを出た。
シミュレーションをすること自体に叫んだのではない。
どうしてみんな僕の意見を聞いてくれないんだ…
村八分状態、辛い前キャプテンだった。
下半身包帯まみれのRVが2機。
「二人とも、降りてくるんだ!」
ステーション格納庫では、ロディとバーツがRVに耐熱シートを
巻きつけている最中だった。既に、降下減速時に使用するRV用の
パラシュートは一つだけ完成していた。
「お、スコットか。ちょっと今手が離せなくて…」
「言い訳はいいから降りてこい!」
珍しく怒っているスコット。何事かあったのかもしれない。だが、
作業も早く終わらせたい。
悩むロディとバーツ。と、そこへ…
「なぁロディ! 地球軍の新型RVってよぉ、大気圏に突入出来る
やつがあるみたいだぜ!?」
マニュアル片手にやってきたのはケンツ。
どうやら彼は準備をサボって、ステーションにある地球軍のRV
を眺め回してばかりだったようだ。
「ケンツ、いいところに来た! これ、続きやっといてくれ!」
「えーっ!? それ、俺がやんのかよぉ!」
「ああ、全部だ」
「だったらさ、ステーションにあるRV使った方が楽なんじゃねー
のか!? 大気圏突入できるって、ほらここに…」
「俺はバイファムで行きたいんだっ!」
根拠にならない理由を貫き通すロディ。
彼とケンツの間に割って入ったのは、意外な人物だった。
「わしも手伝ってやる。お前さん達はまだシャトルの修理で忙しい
じゃろうからな?」
ポールである。
「ああ、そうだったそうだった」
そういうことにしていたのを忘れていたバーツ、ポールの言葉に
助けられた格好になった。
「じいさん助かるぜ!」
ケンツの方は言葉通りだった。
「無茶だ! 僕は反対だっ!!」
とかなんとか言いつつ、ブリッジへ入った3人。
「RVもなしで救出に行く方がよっぽど無茶じゃねーか!」
「そうだよスコット、敵がどのくらいいるのかもわからないんだぞ?」
とりあえず建前を並べるバーツとロディ。
「しかし、危険過ぎる!」
「だから、スコット…」
バーツがとっておきの言い訳を耳打ちした途端、掌を返した様に
態度を変える前キャプテン。
「それなら仕方ないな! ただし結論はシュミレーションの結果が
出てからだ」
「『シミュ』レーション!」
胃の痛い思いのスコットだった。
「カチュア、結果を出してくれ」
言われてすぐに反応するのが彼女のいいところ。
モニターに「21%」と表示された。
「問題がありすぎるんです」
出された結果をすぐに分析するのも彼女のいいところ。
「盾みたいなものがあれば… 大きければ大きいほど耐熱性が増し
ます。そうね、バリュートや、フライングアーマーのようなものが
あればいいんですけど…」
「おい、スコット! 君もちゃんと一緒に考えてくれ!」
苛立つロディ。バーツも目でキャプテンを訴えている。
悲しい目をするカチュアをよそに、スコットに至極真っ当な名案
が浮かぶ。
「なんだ! ドッキングカーゴがあるじゃないか!」
一斉に振り向くクルー。
その表情はみな複雑なものだった。
「それは今使ったらまずいだろう!?」
何故まずいのかは、敢えて言わないロディだった。
皆、同じ思いなのだろう。
しばし続いた沈黙を、決断の言葉が破った。
「しょうがねぇ。この際、使った方がいいんじゃねーか?」
何故、まずいとわかっていても賛成するのかは、敢えて言わない
バーツだった。
皆、妙に重い表情でとりあえず納得する。
このあたり、彼らにとっては作者や読者の想像もつかない程の、
実に複雑な事情があるらしい。
「じゃあ、早速計算を…」
「計算も何も、そういうことが出来る設計だから、一応大丈夫じゃ
ないの? シャトル降下時と連動しておけば、そう遠くない距離に
着地できると思うし」
マキがさらりと流した。
「とりあえず何とかなりそうだな… げっ!」
「どうしたバーツ… ああっ!」
格納庫へ来た途端、巨大なミイラにびっくり。
ぐるぐる巻きの包帯、何故か頭部全体にもまんべんなく巻かれて
いたのだ。
「あのバカ野郎! これじゃ前が見えないぜ!!」
それどころではない。当然腹部も巻いてあるから、腹部ハッチが
開かないのだ。
「こら! ケンツ!」
しかも、ポールもケンツもちゃっかり姿を消している。
「仕方ねぇ。やるか」
恐らくミイラ化作業に使っていたのだろう、唯一ハッチが開いて
いたネオファムに乗り込んで、カーゴを利用するため不要になった
包帯を取り除く。
「バーツ、バイファムの方も頼む!」
<<わかってるって、ロディのダンナ!>>
「あと、作ってたパラシュートの方は要らないな?」
<<だな。はずしといた方がよさそうだ>>
「なんだよ、これ…」
ブリッジですることがなくなったスコットは、何か手伝おうと、
タウトでの足になるトラックの準備の方に来てみたのだが…
片方のトラックは人やヤギが乗るためあまり荷物を積んでいない。
それはわかる。
対してもう一方のトラックは物であふれかえっているではないか。
よく見れば食糧や武器以外にも、編みかけのセーターやたこ焼き
製造器、ゲイラカイトに釣り道具一式、ビデオデッキやテレビなど
当たり前で、ソファーにサンドバッグにホワイトボード、ギターに
ピアノにドラムセット、三面鏡に赤外線炬燵、果てはサーフボード
まで詰め込んである。
運転席までくまのぬいぐるみやら超合金やらと豪快な埋まり様。
虚しさ漂うが一応積み荷を一つ一つチェックする自称キャプテン。
「…このボーリングの球、誰のだ!?」
「あ、それ私のです! 勝手にバッグ開けないでください!」
ペンチはマイボールを他人に触られて少々ご立腹の様子。
「じゃあこれは誰のだ!?」
「そ、それ、僕の…」
ジミーはメリーの食料・干草を他人に触られかなりご立腹の様子。
「じゃあこれは…」
「触っちゃ駄目! あたしのシゲに何するのよ!」
クレアは宣伝用アイドル等身大ポスタースタンドを他人に触られ
大変ご立腹の様子。
「君達、何しに行くのかわかってるのか!?」
「ピクニックでしょ?」
ルチーナの一言が、スコットの胸の奥深くに痛烈に突き刺さる。
「あ、あのねぇ…」
「だってスコットが選んだ星だもの。正しいわけないわ!」
さらりと流したクレアのつぶやきが、一言が突き刺さったままの
スコットの胸の奥深くをパワーショベルでえぐり返した。
よろける自称キャプテン、ふと、手を添えたダンボール箱から
ビンが数本出てきた。
「これって…」
<<スコット! 勝手なことするにも限度があるぞ!!>>
<<そうだぜ!! それに格納庫のハッチを開けてくれって何度も
言ってるだろ!? 手ぇ空いてるのスコットだけなんだからな!>>
突然聞こえたロディとバーツの声。頼み事をほったらかしにされ、
相当ご立腹の様子。
「わ、わかったよぉ… それにしても、どうして箱を開けたことが…!?」
<<いいから早くしろ!>>
ドッキングカーゴのところまできたバイファムとネオファム。
「スコット、早くカーゴのハッチを開けてくれ!」
<<開ければいいんでしょ、開ければ…>>
すねた口調のスコットだが、仕事はきちんとする。
係留中のため、かなり入れにくい作業だったが、経験豊富な彼ら
には大した作業ではない。ゴソゴソと腹這いで前進し、カーゴ内に
入る。
「よし、今のうちに出来るだけたくさん積み込むんだ」
二人は大慌てでRVを降り、一目散にカーゴからジェイナス内へ
と入って行った。
「はぁ、はぁ、ロブスターの修理が出来たぜ」
ブリッジにやってきたバーツがつぶやいた。
息が荒いのはドッキングカーゴと居住区の間を何往復もしたせい
だなどとわかるものは、当然ブリッジにはいない。
「な、なんだって!?」
つまはじき状態のスコットはその台詞を聞いてやたらと驚いた。
「カーゴはオートで射出するけど、万が一のことを考えて、俺達は
カーゴの方に乗り込むことにするよ」
ロディの説明が終わると、ブリッジから邪魔者をを追い出すため
バーツが続けた。
「悪かったな、スコット。実はあのじいさんにバレないようにする
ためにお前にも黙ってたんだ。だから、これからは頼りにしてるぜ!」
ロブスター号の操縦席にはスコットの姿があった。
そうか、頼りにしてる、か… ふふっ!
妙に調子に乗っている様子。
そこへ、クレアが入ってきた。
「せいぜいしっかりやってよね」
冷たく言い放つ現キャプテンに、
「せめて冷蔵庫くらい置いていけよ!」
と、反論を試みるも、
「じゃああなた、あの星に食べ物がなければどうするの?」
と、問い詰められ、
「電源がなければどうしようもないじゃないか」
とは言い返せないスコットだった。代わりに、
「そういえば、あの石版はどうするんだい?」
と、聞こうとするも、
「もうどこにも入らないわよ!」
と、あっけなくあしらわれて早々に会話は終了。
虚しさを背負うスコットのことなどお構いなしにシャトルが宇宙
ステーションを離れた。
「やっこさん、やっぱ単純だな?」
「ああ。おかげでごちゃごちゃ言われずに済んだしな」
<<今フェーズ終了まであと2分>>
「わかった… それにしても、お前にはほんと世話になったな」
タウトの周回軌道にのせるために後から宇宙ステーションを出た
ジェイナス。
<<どういたしまして>>
ブリッジではロディ・バーツとボギーとの別れの会話が続く。
両親への熱い思いを胸に、ジェイナスのブリッジから、ゆっくり
遠ざかるシャトルを眺める二人。
「みんなを助け出したら、また戻ってくるからな」
そうつぶやくロディは自信に満ちていた。
バーツの顔にも力強い決意が伺える。
<<お帰りをお待ちしています>>
機械が作り出したとは思えない程暖かい言葉を聞いて、より一層
胸を打たれる二人だった。
そんな彼らの熱い想いを受けたかのように、みるみる赤くなって
いくシャトル。
ん? 赤く…?
「ちょっと待て! おい、スコット! 早過ぎるんじゃないのか!?」
慌てふためくロディの耳に辛うじて飛び込んできたのはスコット
の馬鹿でかい声だった。
<<カウントダウン前に動き出して… と、止まらないーっ!>>
「な、なに!?」
<<だめだ! ロディーっ! タウトで待ってるからなーっ!!>>
最後の言葉が終わると、目の前の小さな赤はタウトの青に溶けた。
ポツンと取り残されたパーツとロディ。
<<離れていきます…>>
「それどころじゃねぇ!!」
苛立つ二人の胸には、もうボギーの心づくしは届かない。
それでもボギーは思うままに言葉を続けた。
<<楽しい旅行を…>>
「くそっ! 情緒たっぷりに別れの台詞なんか言ってんじゃねーよ!
早くカーゴを射出してみんなに追いつかねーと!」
「しかしバーツ、今から計算し直しとなると厄介だぞ!?」
「だな。周回軌道でもう一度このポイントに来るのを待つ方がいい。
その間にシャトルの軌道を計算して… げっ!」
「どうした、バーツ!?」
<<タウトへのドッキングカーゴの降下プログラムは既にフェーズ
3実行中です>>
「な、何だぁ!?」
シャトル降下と連動させていたのだが、それが裏目に出た。
「くそっ! もう間に合わない!」
「まだトゥランファムがある! 急いであれを積み込んで…」
「こ、これはっ!!」
包帯ぐるぐる巻き状態のRVを見て唖然とする二人。
とにかく、これではトゥランファムのハッチが開かない。
ハッチを開けるためには、先程と同じく、RVがもう一機必要と
なるのだが…
「仕方ない。あのダサい番号のバイファムで…」
振り向いたロディの目に映ったのは、やはりぐるぐる巻きRV。
「くそっ! やっぱりあのダサい色のバイファムを塗り替えるしか
ないか… ああっ!」
皆様お察しの通り、当然こっちにも巻いてあるのだ。
「あのバカ軍曹! 全部やれって言ったらマジで『全部』のRVを
ミイラにしちまいやがって!!」
2体分のRVだけで、耐熱シートがなくなってしまったらしく、
ケンツとポールはシートを探しに出た。その間にロディとバーツが
RVをカーゴに収納し、居住区と何往復もしている頃、ケンツ達が
大量のシートと共に格納庫へ戻ってきて、ミイラ化作業を再開…
というのが事態の真相のようだ。しかも、ケンツが聞き漏らしたのか、
それとも指示しなかったためか、パラシュートの方は一つのまま。
ミイラ化作業の続き「だけ」を行なったようだ。
律儀と言うか、融通が利かないと言うか。
さらに頭にくることがボギーから艦内放送で知らされる。
<<2、1、0、「全」カーゴ射出完了、それぞれ降下に入ります>>
「全カーゴって… 全部か!?」
艦内電話を使ってボギーに問いかけるバーツ。
<<プログラム通り、「全部」射出しました>>
呆然とする二人。
「…あとはジェイナスを大気圏突入させるしかない、か」
「しかし、俺達だけじゃ航路設定や操艦は無理だ。まず何とかして
あのダサい番号かダサい番号のバイファムの耐熱シートを…」
「そんな暇あるかよ! どのみちカーゴだってないんだぜ!?」
「じゃあどうすればいいんだ!?」
「幸い、ステーションの近くの座標でシャトルが大気圏に突入した。
ってことは、とりあえずステーションまで行った方がいいか」
「バイファムを置いてか!?」
ダサいダサいと言いながらこだわる。「腐ってもバイファム」。
「じゃあロディだけ残れよ!」
「なにっ!?」
格納庫内でV13へなちょこダイジェスト二度目の取っ組み合い
の喧嘩が始まった。
割とバーツ優勢。殴り飛ばされるロディ。
と、倒れこんだ彼の目に飛び込んできたものがあった。
「こ、これは… RVのマニュアル!?」
ケンツが置いていったものだ。
思わず座り込み、パラパラとめくってみたりする。
「そうだ! ステーションにあった地球軍のRV!」
「なに!?」
「ケンツが言ってたじゃないか! あれを使えば大気圏突入が可能
だって」
「しかし、そんな話聞いたことないぜ?」
「ここにも書いてあるな。耐熱フィルムっていうのを使うらしい。
マニュアルにはこう、スポッと被るフィルムがあって、RVを被う
と書いてある」
あまり考え込む余裕がないことを把握しているバーツ、即決即断
だった。
「だな。もうそれっきゃねーもんな。念の為に作ったパラシュート
も持って行こうぜ?」
もう一度、小型艇でステーションにたどり着いた二人は、すぐに
お目当てのRVを見つけた。
だが、RVは一機。ちなみにパラシュートも一機分しかなかった。
非常に残念な光景に、じわりじわりと嫌な気分を募らせる二人。
こういう時に行動が早いのは、自称主人公の方だった。
「くそっ! こうなったら俺だけでも大気圏に突入してやるっ!
走れロディ! 走るんだ!! 振り返るな!!」
あせったロディは自分にそう言い聞かせながら猛然と白いRVへ
走っていった。
「待てよロディ! 俺も…」
「そんなスペースはないっ!!」
力を持つというのはこういうことなのだろうか!?
バーツの意見・提案・お願いを片っ端からはねのけると自分だけ
さっさとステーションを出た。
「ちっ! 奴だけに大気圏突入させるか!」
機転を利かせたバーツは、やはりお気に入りの色なのだろうか、
隣にあった赤いRVに乗り込む。
だが、このRVには、従来機と同様大気圏突入の機能はない。
たった今マニュアルを見たのだから間違いない。
「ちくしょう、どうすれば… そうか!」
バーツはおもむろに、小型艇にくくりつけてあったパラシュート
をこの赤いRVに取り付け始めた。
非常にアナクロなレバーを目一杯引くと、RVの腰ポケットから
ビニールシートが出てきた。
このインチキくさい仕掛けに戸惑いを隠せないロディ。
だが、迷ってはいられない。白いRVが耐熱シートを被る。
「バーツ、すまない。だが、せめて俺だけでもタウトに降りないと…
な、なんだ!?」
その時、レーダーにRVの影が映る。
「は、速い!」
確かに赤いRVは通常の3倍くらいの猛スピードでロディ機へと
接近してきていたのだ。
「バーニアもないのに何故あんなに機敏に動けるんだ!?」
<<知るかよっ!>>
あっ! と言う間に追いついたのは誰でもない、バーツだった。
「バーツ、残念だがそのRVには…」
<<そう、大気圏を突入する能力はない… それならっ!!>>
その瞬間、赤いRVが、耐熱シートの内側にもぐりこんで、白い
RVに抱きついた。
「バ、バーツ、離せ! 突入速度が速くなり過ぎる!」
<<元々自由落下ってのは、口で言う程自由じゃないってねっ!?>>
その言葉と共に、二人は強烈な重力を感じた。
あっと言う間に大気圏を無事突入した2機のRV。
驚いたことに、ここで途端に2機の立場が逆転する。
「ロディ! 離れろ! 言っただろ!? 自由落下ってのは…」
赤いRVが、抱きついている白いRVをけり落とそうとしていた。
そう、パラシュートを装備しているのはバーツの方だけなのだ。
<<バーツ! 俺達は親友じゃなかったのか!?>>
「その親友をステーションに置き去りにしようとしたのは誰だっ!?」
怒りが赤いRVにも伝わっているのか、蹴るパワーが強くなって
いるようだ。
<<ああっ!>>
その蹴りに耐えられず、白いRVの上半身が破壊され、爆発した。
「ロディ。いいやつだったぜ。タウトに降りたらみんなに… な、
なんだぁ!?」
パラシュートを開いた瞬間、バーツは目を疑った。
白いRVの胴体からポッドが姿を現したのだ。
RVだから当たり前なのだが、今までのポッドではなく、かなり
大気圏内で運用する戦闘機としての性能を持っているようだった。
思わずバーツはこうつぶやいたという。
「奴は… 化け物か!?」
こうして、お互い無事にタウトに降り立つことが出来た。
深い森、泉の広場を上がったところでたき火を囲む二人。
すっかり日も暮れ、カラスのような鳥の鳴き声も聞こえる。
その鳥が飛ぶ方へ棒切れを向け、ロディが提案する。
「ここからなら、あの山の方へ向かっていけばいいと思うんだ」
実は彼がこう語りかけるまで、つまり、互いに和解するまでに、
数時間を要していたりする。
「だな。俺も同じ意見だ」
意見の一致をみた二人。小高い丘から泉のそばへと戻る二人。
「しっかし暑いな。よぉ、泳ごうぜ?」
目の前に泉があれば、少しはそんな気分にもなろうかという程の
蒸し暑さなのだ。
ところが相棒はバーツを制する。
「まて、用心した方がいい」
ロディが足元にあった小石を泉に放り投げると、水面から白い煙
があがる。
それを見て当然青ざめるバーツ。
「そ、それもそうだな。にしても暑いな。寝苦しくてたまんねーよ」
「ま、まったくだ」
今頃になって震えるロディ。実は、カッコをつけて小石を投げた
だけなのだ。
腰砕けで思わず座り込んだロディに魔の手が迫る。
「うわっ!」
ロディが叫んだ。
「どうした!?」
「指を、指をかまれて…」
「大丈夫か!? 手をかしてみろ!」
一体、二人のあいだにどれ程の時間がたったというのだろう。
それは一瞬のようでいて、だが永遠のようでいて…
ハッ!?
この状況における危険な空気を察知し、慌てて立ち上がるロディ。
「お、遅いからもう寝ようか」
「あ、ああ、そうだな」
その夜は二人ともRV・ポッドのコクピットで寝ることにした。
やはり大事なものは自分自身で持ってきて正解だった… 改めて
そう思う二人だった。
こうして、タウト初めての夜はふけて行く。
タウト2日目。
「見ろよロディ!」
<<ああっ! イチゴだイチゴだっ!!>>
確かに野イチゴである。
余程腹が減っているのだろう、RVのモニターから見つけたのだ
から。
<<食べられるかなぁ?>>
「さぁな。だけど、スコットよりは胃腸が強いはずだ」
3日目。
そうでもなかったようだ。
「ううっ…」
ポッドの中で腹を押さえるロディ。心なしか、ポッドの飛び方も
フラフラしている。
赤いRVはまっすぐ歩いているが、あくまでペダルを踏むだけで
RVが歩くためであり、その操縦者自身の現状はロディと大差ない。
「あれはっ!?」
見張りをしていたマキが双眼鏡片手に叫ぶ。
明らかにバイファムやネオファムではないRVがこちらに向かって
歩いてくる。お供にフラフラと飛んでいる戦闘機まで連れている。
「敵か!? みんな、岩陰に隠れるんだ!」
スコットがこれみよがしにカッコよさをアピールしようとするが…
「違う! あれ、地球軍のRVだぜ! ほら、あのステーションに
あっただろ!?」
ケンツの一声でみな緊張感を和らげる。そして、
<<おーい、みんなーっ!!>>
戦闘機=ポッドからのロディの声で、一同の緊張感は一気に吹き
飛んだ。
「その声は… 兄さんっ!?」
駆け寄るフレッド。
<<フレッドっ!>>
「兄さーんっ!!」
<<フレッドーっ!!>>
「兄さーんっ!!! あのおじいさん達知らなーいっ!?」
どわっ!
ロディは操縦席の中でコケた。
「…全然目立ってないじゃないか。これじゃあクレアどころか僕の
存在そのものが薄れてしまう! ここはひとつ、強烈なリーダー
シップをみんなに見せつけなくては! そのためにも、じーさん
の書いてくれたこの地図が役に立つのさ! あはは! あははは!
笑いが止まらないぞぉ! 見てろよロディ! バーツ! クレア!」