銀河漂流バイファム13
へなちょこストーリーダイジェスト
第19話
〜宇宙には、常識では考えられない不思議な場所がある。
人は言う。「目で見たものだけを信じなさい」と。
ケンツにはまだ、何が真実かはわからない。
ただ、それはこれから確かめていけばいい、そう思う〜
両親に会えるの!?
飛んで火に入る13人
「タウトが4つあります」
「ふぅん… はぁ、何だよまったく、またナレーションが出来ない
なんて、おかしいじゃないか。後ろ指さされ続ける僕の今の心境を
語る場まで奪おうっていうのか? どれ程孤独でどれ程悲痛な状態
にあるかを延々と語ろうと… な、なに〜っ!?」
あまりにも淡々とカチュアが報告するのですっかり水に流そうと
していたスコット。言われるがままにモニターを眺めてビックリ。
「台本と違うじゃないか!」
もはや恒例となった決め台詞を叫びながらの、えらいこっちゃの
大騒ぎ。
「おーいスコット! タウト星が2つって本当か!?」
と、台本通りの台詞でブリッジに飛び込んできたロディ達にも、
改めて説明し直す必要があった。
「4つ? これじゃあ台本なんて全然当てにできないぜ!」
「問題は、どの星に地球人が収容されているか、だ」
「接近すれば見極められるだろうが、危険すぎるしなぁ」
当たり前の台詞しか言えないキャプテンを差し置いて、
「ふふん、じゃあここはアタイの出番だねっ!?」
と、嬉々としてしゃしゃり出たのは、さすらいの占い師マキ。
魅惑的な胸元からするりと取り出したのは、タロットカード一式。
床に座るとおもむろにカードを広げだした。
「えっと… アタイのタロットだと、『一番ひどい星』にいるって
出たわ。きっとあの人工的っぽい星ね?」
自信たっぷりの女占い師に、キャプテンは無情の裁決を下す。
「却下。次!」
「ちょ、ちょっと待ってよ! 次ってなに!?」
二番、孤高の分析家カチュア&魅惑の名探偵フレッド。
「あの黄色い星です」
「どうしてそう思うんだい、カチュア!?」
「大気があり、星としても安定しているように思われます」
「それに、さっき特定の場所から強力な電波をボギーが拾ったんだ。
だから、僕もこの黄色い星が怪しいと思うんだけど」
「うーん、次!」
三番、薄幸のエロガキロディ。
「青い星だ! 主人公の座にかけて!」
「どうせ当てずっぽうなんだろう? まったく君達の意見は当てに
ならないなぁ!」
こんな、クルーを全く信じようとしないキャプテンの態度に一同
頭に来ないはずがない。
「じゃあどれだっていうんだよ!?」
叫ぶケンツに、スコットが勢いなく答える。
「僕としては、民間人の収容所となると、地球タイプの緑の星だと
思う…」
呆れ返った後は大騒ぎ。
「ずるいよキャップ!」
「そーだよ、結局残りものじゃんか!」
「根拠がないのに言い切るなんておかしいわ!」
「こんなの横暴だ! 職権乱用だ!」
「えーっと、だからねぇ、あのぉ… う、うるさいっ!! あの星
にいるったらいるんだっ!!」
確かに大した理由も無く残った星を指差しただけだが、引っ込み
がつかなくなったのか、逆ギレ状態で強引に結論を出したスコット。
とりあえずそーゆーことになって、ブーイングの嵐が吹き荒れる
中、この場はお開きとなった。
「クレアおねえちゃん、おねがいなの!」
食事時、突然ルチーナが口を開いた。
「なぁに、ルチーナ?」
「スコットおにいちゃんをなんとかしてほしいの!」
「あれ? スコットおにいちゃんすきじゃないの?」
マルロが二人の会話に割り込む。
「すきよ! でもなんとかしてほしいの!」
「どうして?」
「だって、さいきんずっとスコットおにいちゃんばっかりめだって、
あたしたちのでばんがすくないんだもん」
涙ながらに訴えるルチーナの願いに、感動を覚えるクレア。
スコット、あなたはみんなをここまで苦しめているのよ!?
あたしが何とかわからせてあげなければ…
血のにじむ程拳を握り締めたクレアに、もう迷いはない。
「えらいわ… なんとかしましょうね?」
「うん!」
「ならぼくも!」
「ふふっ、はいはい!」
「やったぁ!」
無邪気に喜ぶおチビさん達を見て、ロディとバーツはフォークを
止める。
「確かにスコットのやつ、前にもまして横暴だ。何とかしなきゃ…」
「だな」
自分達で村八分にしておいて、随分な言い草ではある。
だが、彼がここまでスネたのは初めてのこと… でもないか。
ククト勢力圏内ということもあり、夜はロディ・バーツ・マキが
仮眠を取りつつもブリッジに張り付くことにした。
と、そこへ警報と、外には長い光の帯。一気に緊張が走る。
だが、ボギーが冷静な判断結果を報告した。
<<小彗星です。危険はありません>>
「おどかすなよ」
張り詰めた緊張を溶かそうと、わざと肩を竦めてみせるバーツ。
それでホッとしたのか、思わず三人並んで見入っていた。
「でも、綺麗…」
ジェイナスの側を流れ行く彗星を眺めつつ、こんな事を口にする
マキ。
このシチュエーションにクラッときたバーツ。
あんなのが接近してたってのに、不安を感じねーのか!?
お前だけ息止める練習してたんじゃねーだろうな!?
…などという野暮な「クラッ」ではない。
本当の理由はその向こう側にロディの顔が入っているからである。
こいつ! 立ち位置が違ってんじゃねーか! 俺の横だ、俺の!
マキの背中を通って右手でぐりぐりロディをつつくけなげな少年。
「どうしたバーツ? 言いたいことがあるならはっきり言えよ?」
ノープロブレムな態度を貫き通すロディ。台本とは違うバーツの
言動に、逆に戸惑っている様子。
「な、なんでもねぇよ」
とかなんとか口では言っておきながら…
だからお前は駄目だってんだよ!
と、スネた顔して心の奥底で「のみ」激しく叫ぶバーツ。
キョトンとした顔で、「何やってんの、アンタたち?」と二人を
見比べることしかできない、両手に華?のマキだった。
「間違いないわっ! タウト星には宇宙ステーションがありますっ!!」
いつの間にかオペレーター席に座っていたカチュアがありったけ
の声を張り上げた。そこまでして自分の業績を認めてもらいたいの
だろうか?
いい夢見ていたロディ達も、朝食中のスコット達も、干し草作り
中のジミーも、朝のブリッジ、カチュアの元に駆けつけた。
肉眼でもわかる程接近しつつあった緑のタウトをモニターで拡大
して見てみると、ククト軍の宇宙ステーションが映し出された。
「なにボヤボヤしてるんだ! 直ちに戦闘態勢だ! 急げっ!」
スコットの檄が飛ぶ。
が、皆乗り気ではない様子。
「ど、どうしたんだい、みんな? もしかして寝不足? 低血圧?
頼むから言うこと聞いてくれよぉ!」
クルーは決して低血圧等ではなかった。むしろ逆の状況にある。
「見ろ、やっぱり危険な状況になったじゃないか!」
「だから俺はちゃんと調べてからにしろって言ったろっ!?」
「…あ、あの、朝ご飯、ちゃんと食べたあとに、しない?」
「いい加減な決め方するからよ!」
「それより、あの星で本当にいいのか!?」
「そーそー。オレ腹減っちゃってさぁ」
「絶対アタイの占いが当たってたんだって!」
「違うよ! 黄色い星の方が確率が高いんだってば!」
「あのね君達、今はそんなことを言っている場合じゃ…」
情けない嘆願も、クルーの耳には届かない。
むしろ、キャプテンの一言一言が彼らの神経を逆なでする。
「何にしてもスコットのミスだからな!」
「まったく、バカさ加減にも呆れるぜ!」
「ぼ、ぼく、朝ご飯、まだだから…」
「やっぱバカにつける薬なんてねーよなぁ?」
「医務室にもそんなお薬ないものねぇ〜」
ここまで言われて黙っていられる程スコットはお人好し… かも
しれないが、今回は一応堪忍袋の緒が切れた。
「ジェイナスの艦長は僕だ! 君達のリーダーも僕だ! そして、
この中で一番エライ最年長者もこの僕だっ!! なのに、なのに…
常に僕の意見は無視され、たまにミスすると散々なじられて、熱を
出して倒れているのに勝手にステーションは襲うわ駄洒落は聞いて
くれないわ、ナレーションを横取りしたり年寄り扱いしたり食事に
納豆を出したり… おまけに女装癖を持った変態扱いまでされて…」
目に涙をいっぱいためたスコットは、最後にこう言い放つと、
ブリッジを出た。
「こんなのはもうたくさんだ! こうなったら家出、もとい、船出
してやる!?」
何か逆恨みしてるな… とは思っても言わないクルー達。皆基本
的には優しいのである。
どうせまた適当におだてりゃ戻ってくるだろう… 過去の事例は
危機的場面?の判断材料として大いに役立つものだ。
そして舞台は格納庫と移る。
「止めても無駄だからな!」
いや、止めないけど… とは思っても言わないクルー達。皆基本
的には優しいのである。
ところが、クルーの余裕が一気に吹き飛ぶ台詞が怒りの艦長から
飛び出したのである。
「ククトニアンと会って、お前らの情報ぜーんぶバラしてやる!
なんてったって、ホルテさんと連絡がつけばきっと…」
別にそれでもいいか… とは思うはずがない。
<<スコット! 待て! 早まるな!>>
<<俺達が悪かった! 落ち着け! 話し合おう!!>>
「ふん、僕のバラす情報でせいぜいピンチに陥るがいいさ!」
さすが、腐っても艦長である。
実際は、この艦には納豆がたくさんあるとかヤギの排泄物の掃除
が大変とか、その程度の腐った情報しか持っていないのだが。
これだけでも充分クルーを焦らせているのに、さらに驚愕の事実
が明かされる。
<<げっ! あいつ、リフトに乗ったぜ!?>>
<<まさかRVで出ようってんじゃないだろうな!?>>
<<あーっ! 俺のバイファム!>>
くくくっ! みんなの驚く顔が目に浮かぶよ!
さも嬉しそうにリフトからバイファムのコックピットに乗り込む
スコット。
練習に練習を重ねたルルド艦長の美談を、あの暇な3時間で聞き、
いつか自分もロディやバーツと対等に渡り合おうと夜中にこっそり
シミュレーターでRV操縦訓練をしていた成果が、ついに試される。
もうベルウィックの時とは違うんだ! どれだけ腕を上げたか、
その目でしかと見るがいいっ!!
得意満面の笑顔が爽やかですらあるキャプテン。
「とめても無駄だからな! ハッチを開けろ! でなきゃ、壊して
でも出るぞ!」
慌ててフレッドがハッチを開ける。
本当に壊しかねない。というのは、別にビームライフル等で破壊
する、ということではなく、バイファムの足がもつれた拍子に…
等の場合である。一旦乗ってしまった以上、宇宙空間へ放り出した
方がジェイナスにとっては安全と言えるのだ。
少々危なっかしいところもあったのだが、とりあえずバイファム
は宇宙ステーションへ向けて前進を始めた。
<<おーい、ククトニアンのみなさ〜ん!! 僕は、地球軍外宇宙
練習艦ジェイナスの艦長スコット=ヘイワードです! ククト軍に
投降するので身柄の確保をお願いしま〜すっ!! 実はですねぇ、
僕らの乗ってるジェイナスは子どもばっかりなんですよぉ! 大人
なんて一人もいないんですぅ! す〜っごい秘密をバラしちゃった
から、優遇してねっ!>>
「マジかよ、あいつ!」
ブリッジでは怒り心頭のクルー達が推移を見守っていた。
その井戸端会議を終わらせたのは、他ならぬロディだった。
「マズいぞ! バーツ、やつを止めてくれ!」
「言われるまでもねぇ!! ちと遅かったかもしれねーが」
「アタイも行く! ケンツ、おいで!」
「まかしとけって!」
いつもの出撃メンバーマイナス1が勢いよくブリッジを出る。
その、マイナス1はといえば…
まったく、スコットのやつ、ロクなことしないなぁ!
そんな事を思いつつも、どこか顔のニヤついているロディ。企み
が顔に出ると人間どうしてもだらしない表情になるものである。
さぁてと、俺はと〜っても目立つキャプテンシートの方へ…
と、振り返った途端、ロディの表情は急に引き締まった。
「カチュア、レーダーから目を離さないで!! ジミーとシャロン
は砲座へ!」
驚くべきことに、そこには既に先客がいたのである。
「こらスコット、おとなしくしろ!」
<<わっ! やめろバーツ!>>
まっすぐ進んでいるだけのバイファムなど、バーツにしてみれば
いとも簡単に行動を止める事が出来る。スコットの操縦テクニック
は、所詮オートパイロットで動くターゲットブイ以下なのだ。
ネオファムでガッチリとバイファムの腕を掴み、動けないように
した。と同時に、ジェイナスから2つの通信が入る。
<<気をつけて! もうステーションの管理下のはずよ!>>
<<おいバーツ! 俺のバイファムには傷をつけるなよ!>>
ロディのやつ、言いたい放題言いやがって!
「ならお前が直接取り返しに来い!」
もう一方の通信内容は既に頭に無いらしい。
<<放せ! 放せったら!!>>
とち狂ったキャプテンは、バイファムのメインバーニアの出力を
最大にしたのである。
「お、おい、スコット、暴れるなって… うわっ!」
一瞬判断が遅れただけなのだが、その間の加速を止めるためには
かなりの時間を要する。
気がつけば、宇宙ステーションとほとんど距離のないところまで
来ていたのである。
ビーム攻撃のひとつやふたつ、飛んできてもおかしくはないはず
なのだが…
「おとなしいな。何の反応もない…」
多少緊張感が薄れたのか、マキから通信が入る。
<<ちょっと寄ってく?>>
「いいねぇ」
その間、ブリッジでは、ちょっとした騒動が起こっていた。
「ロディ、お願いだからバイファムで出て!」
「イヤだ!」
ロディが戦闘行動をかたくなに拒否し続けているのである。
「どうして? あたしの命令がきけないっていうの!? それとも
戦闘じゃ目立たないからかしらっ!?」
キャプテンシートからのやたらと挑発的な物言いに、案の定腹を
立てるロディ。
「違う、そうじゃない! 俺はあんな主役らしくない番号やダサい
色のバイファムには乗りたくないんだ!」
あなたやっぱり主人公ね、良くも悪くも…
気持ちはわかるのよ。自分の愛機を可愛がるのも、傷をつけたく
ないのも…
<<やっぱやめない? たとえ無人でもさ、保安要員とかいるかも
しれないし…>>
「お前が一番来たかったんじゃないのか?」
急におじけづいたスコットをたしなめつつ、宇宙ステーションの
格納庫に入った一行が目にしたものは…
「シャトルがある! 調べてみる! スコット、お前も来い!」
<<ちょ、ちょっと待ってくれよぉ! 僕も、行くの?>>
「お前が一番来たかったんじゃないのか?」
そう言われては身も蓋もない。
<<行くよ! 行けばいいんだろう!?>>
バーツとスコットはRVから降りると、ぐるりとシャトルの周り
を一周した。
「地球製民間用シャトル? ベルウィックにあったやつに似てるな」
「こっちにはRVが何機もあるぞ! ククトの兵器か?」
スコットが指をさした先に、見たこともない人型機動兵器だった。
「いや違うな、地球製だ。戦車まである… どういうこった?」
と、二人のインカムに大声が飛び込んでくる。
<<すっげーっ!! おおっ、あの真っ赤なRV、両肩に砲塔まで
ついてる!>>
異質な兵器類に感心しきりのケンツ。
<<これだけ地球製の兵器類が揃ってるってことは、地球軍が占拠
してるってことはない?>>
マキの洞察眼に感心しきりのバーツ。
「かもな。とにかく、これが使えれば、タウトに降りられる」
銃を構えつつ、シャトルの搭乗タラップに近づく。
と、搭乗扉が開き、中から誰かが出てきた。
間髪入れずトゥランファムのライフルの銃口が、搭乗タラップに
向けられる。
「わ、わしは地球人のポール=チェンバー、怪しいもんじゃない…」
軍帽を深々とかぶった割と小さい人物が、ゆっくりとタラップを
降りてくる。
そういうやつが一番怪しいんだよなぁ。
とはいうものの、バーツにしてみれば、この現状を知る手がかり、
しかも地球人とくれば、あまり乱暴には扱えない。
ジェイナスのブリッジでは、まだ緊張の時が続いていた。
だだをこねるロディがまだ居座り続けているのである。
でも、今はそんなことを言ってる場合じゃないの!
深くため息をつくと、キャプテンシートから的確な指示が出た。
「そう、わかったわ。じゃあ砲座に行って!」
「えっ…!?」
「早くっ!」
「そ、それも嫌だ! 主人公にはふさわしくない部署だ!」
主人公のプライドとは、かくも周囲を困らせるものなのか。
「じゃあどうすればいいのよっ!?」
「兄さん、番号が気になるんだったら、書き換えればいいじゃない!?」
「そうか! フレッド、お前頭いいな!」
弟のナイスアイデアに、嬉々としてブリッジを出るロディ。
「お願いだから早くしてね!」
とりあえずステーション奥の一室にお通しされたジェイナス艦長
以下数名。同じ地球人ということもあり、話の弾むことはずむこと。
「君達の艦は本当にお子様ばかりなのかね?」
「ええ、まあ。ところで、あのRVや兵器類は何ですか?」
スコットの質問に気さくに答える男。
「ああ、あれか。あれは我が部隊所有の兵器で、このステーション
占拠の際に使用したものだ」
「どちらの部隊でありますか?」
「第38方面軍… それってルナツー駐屯軍で、こんなところには
来ないんじゃねーのか? それに、シャトルや戦車はいいとして、
あんなRV見たことねーしなぁ」
さすがは軍事アナリスト、面目躍如だ。
「そうだ、アタイ、ジェイナスのみんなに連絡してくるね?」
と、立ち上がりドアの前まで行くと、ご婦人が一人立っていた。
しかも、いきなり銃をマキに突きつける。
「…どういうこと?」
軍帽を取ると、その正体は軟弱そうなお年寄りだった。
「はっはっは! お前らわしを本物の軍人と思っておったのか!
わしゃただの植物学者じゃよ。はーっはっはっ!」
騙されるわけねーよ… とは思っても言わないクルー達。皆基本
的には優しいのである。
いや、ひとりだけ騙されてたのがいたっけ。
「何だってーっ! ひでーぞ嘘ついたのかーっ! じゃああのRV
は一体何なんだよ!」
「そんなもんわしが知るか! おそらくはククト軍がサンプル捕獲
したとかそんなとこじゃろう。ま、そこでおとなしくしとれば危害
を加えたりゃせんよ。そもそも、そこの艦長とやらが、ばか正直に
艦の状況を通信してきよったのが間違いなんじゃ!」
キャプテンを見る3人の眼は、広大な宇宙空間よりも冷たかった。
「全然連絡ないわね…」
「あ、緊急コールだわ!」
タイミングの良さに思わずペンチがテキパキと回線を開く。
聞こえてきたのは期待していた人物の声ではなかった。
<<フレッド! フレッド!!>>
「どうしたの、兄さん!? 何かあったの!?」
<<黒のペンキは見つかったんだが、黄色い方が見つからないんだ!
これじゃあ黒く塗りつぶした後に数字が書けない!!>>
そんなことでいちいち聞いてこないでよ…
呆れ返ったフレッド。
「じゃあしょうがないから砲座に行けば!?」
<<そうか、そうするしかないか…>>
スピーカーからの声だけでも、諦め顔の兄の顔が目に浮かぶよう
だった。
結局なりゆきで捕まった4人は、暇でひまで仕方ない。
ロックされたドア、開かないものは開かないのだ。
「意外な方法で扉が開きそうって、占いでは出てるんだけど…」
なすすべなく、思わず占い師禁断の「自分占い」を始めるマキ。
テーブルはすっかりタロットカードで埋め尽くされている。
「ん? 壁になんか書いてあるぜ?」
ケンツが面白そうなものを見つけたようだ。
「うーん、読めないな。でも、何書いてあるのかは興味あるなぁ?」
ミミズククト文字を前にして、呑気なスコット。
「…何だ? これ、スコット宛てだぜ?」
何故か読めるらしいバーツ。マキから拝借の帽子を斜めにかぶり、
首を傾げている。
「な、何だって? どうしてそんなものが… と、とにかく読んで
みてくれないか?」
嫌そうな素振りを見せはするが、結局渋々応じるバーツ。
「愛しい私のスコットへ。あなたのジョークはいつも聞く人の心を
暖かくします。今でもあなたの事が忘れられません。これからも、
人々を幸せにするジョークをたくさん作り続けてください。いつか
また逢える日が来ることを信じています…」
「続きは? バーツ、その続きは?」
「…ここまでだ」
<<一機出てきた… バイファムだぜ!>>
シャロンの声に一同食い入るようにモニターを見つめる。
あのへたくそな操縦、間違いない…
「よくもぬけぬけと… もう容赦しないわっ! 全艦砲撃準備!」
<<撃つな! 俺のバイファムだぞ!!>>
ロディの悲痛な叫びとほぼ同時に、違う通信がブリッジに入った。
<<ジェイナス号の諸君に告ぐ! わしはポール=チェンバー…
と言っても知らんじゃろうが>>
バイファムからのものだ。
「くだらない事言わないて! どうせ一晩中寝ないで考えた芸名か
何かでしょ!? 今日という今日は覚悟しなさいスコットっ!!」
<<だから違うっちゅーに! わしはポール=チェンバー! 艦長
を人質にした! だから直ちにジェイナス号を…>>
「ふんっ! あなたにしちゃ珍しく面白いジョークだわ!」
<<な、なんじゃと!?>>
「ジェイナスの現艦長はこのあたし、クレア=バーブランドよ!」
まさに、衝撃的な艦長就任宣言だった。
<<何っ!? あの坊主が艦長じゃあ…>>
「たった今あたしが解任したのよ! さぁ、用件は何!?」
<<そ、その艦を我々に明け渡せ! さもなくば人質を…>>
「お断りよっ!!」
あまりにもきっぷのいい即決即断ぶりに、クルーが一斉に慌てる。
「クレア、いくら何でもそれは…」
「早まっちゃ駄目よ!」
「何言ってるの!? 今が『スコットをなんとかする』チャンスよ!」
なるほど確かに絶好の機会には違いない。
ブリッジに来ていたマルロとルチーナも、どう「なんとかする」
のか、とクレアに期待していた。
「だけど、この状況はまずいよ!」
フレッドの叫びに間髪入れず続きが入る。
「よく考えてみて! やっぱりいけないんじゃないかしら!」
いかにもペンチらしい正統派の意見がクルーの首を縦に振らせた。
言った本人はどうでもよさそうな態度だったが。
<<そ、そうだよクレア、もっと冷静に…>>
砲座のロディも止めに入ったが、こちらの方はやはりバイファム
可愛さのことである。
とはいえ、頂点に立つものには誰の意見も焼け石に水。
「自分からこの危機的状況を抜け出していった人に用はないの!
多少の犠牲はやむをえないわ、撃てーっ!!」
そう言い放つ事が出来る程、完全に逆上した新艦長。
ところが、意外な人物が彼女を止めにかかるのである。
<<4人の人質がどうなってもいいのか!?>>
はっ! そこでようやく?クレアは目を丸くした。
そうだわ! あのアホスコットだけじゃなかったのよ!
あと一歩、いや、半歩遅ければ大変な事になっていた。
まさか交渉相手に諭されようとは…
「あっ!」
突然、マキの叫び声。
一同振り返ると、いつの間にかテーブルで眠りこけている少女が
一人。誰かと違い、大切なタロットカードはケースにしまってある。
まだ半開きのひとみがゆっくりと見開いていくと、何やら怪しげ
なことを語り始めた。
「見える… 大きな、怒りに満ちた拳が、バーツを… 危ない!
逃げて、バーツ!」
どんなビジョンが見えたのか知らないが、どうやらマキはかなり
辛い夢の中から戻ってきたらしく、汗びっしょりである。
「寝ぼけてんじゃねーよ」
「わーっ!!」
「なんだ!? 今度はケンツか… どうした!?」
「実は俺、もれそうなんだよ!」
言うが早いか、おもむろにドアのキーロックあたりにひっかけた。
「ん? ロックがショートしてる? 解除されたんじゃないか!?」
バーツの目の付けどころはよかったが、問題がないわけではない。
「ほんとだ! やったぜ!! で、誰がボタン押すんだ?」
「お前に決まってるだろ!」
「やだよ俺! それに、俺は解除してやったんだから」
「アタイ、絶対やだよ!」
「僕だってそうさ」
「んじゃ、しゃーないか。俺が押してやるよ」
と、男気あふれるバーツがキーロックの前に立ち、軽くしゃがみ
こんではみたものの、さすがに素手では辛いと見える。
そこでひとつのアイデアがひらめいたようだ。
「な、何? やだっ! やめてっ!!」
驚きの声をあげるマキ。
バーツは斜めにかぶっていたマキの帽子を取ると、それをボタン
に近づけていった。
「やめてってのにっ!!」
怒りのパワー全開で、鉄拳がバーツの顔面に確実にヒットする。
そのまま勢いは止まらず、結局バーツの顔面は壁とマキの拳との
間で板挟み状態となった。
宇宙ステーションの格納庫では、脱出に成功したスコット達と、
ポール=チェンバーを捕まえた残りのクルー達が再会を果たした。
「元はといえばスコット、あなたの身勝手がこういう結果を生んだ
のよ! わかってるの!?」
小言を言い続けるクレア。小言を聞かされ続けるスコット。
この二人を放っておいて、ポールとその妻リグレーは事実を語る。
情状酌量の余地はある、みんなそう思ったようだが、話を聞いて
いない二人には、まだそう判断する材料がなかった。
「というわけで、わしらはこの子に、アランに会いに行くために、
このタウトまで来たんじゃが、このシャトルが故障していて…」
お涙頂戴の談話の中、すっとリグレーが息子の写真を出した途端、
今まで話の輪に入っていなかった少女が大声を張り上げた。
「行きましょう、タウトへっ! 私達もパパやママを捜して、この
暗い星空を渡ってここまで来たんですっ!」
ミーハーなんだから… とは思っても言わないクルー達。皆基本
的には優しいのである。ただ一人、ジミーを除いて。
「それ、ぼくの台詞、なのに…」
「クレア〜、許してよぉ〜、僕が悪かったからさぁ〜 晩ご飯食べ
させてよぉ〜」