銀河漂流バイファム13
へなちょこストーリーダイジェスト
第15話


「ホルテさんの監禁場所いた部屋で、走り書きのメモを見つけた。
 残念ながら、ククト語で書かれてあるので、内容はわからない。
 でも何故か、僕達と過ごした思い出深い日々が事細かに記されて
 いる様に思う。そう、あの甘い日々が… ううっ、ホルテさん!
 ホルテさん! ホルテさ〜ん!!」

ホルテさんの日記

  クソガキどもがゴネてヘトヘト。なんでこんなことに…
  大体、誰が「オバハン」やねん!! 誰が「年増」やねん!!
  おいしいククト料理と彼のジョークだけが心のよりどころ(泣)
  ほんと、私一人がバカみたい。ずっと落ちこんでればよかった…
  でも、彼との愛は永遠に… そう! 結婚後はラピスやめて、
  彼の専属マネージャーになるんだから!!

 ………。
「えーっと、誰も読めなきゃしょうがないわけで、引き続きまして、
『ザ・グラフティー スコット=ヘイワード』を…」
「やーめろやめろ、やめろってんだよそんなの!」
「スコット、勝手過ぎるんじゃないのか!?」
「わっ! な、何だよ君達!」
 あまりに立ち直りの早いスコット、そのブリッジでの傍若無人な
独り舞台には、さすがに黙っていられなくなったらしく、ロディと
ケンツが反射的に立ち上がる。
「馬鹿言うな! こんなのじゃ駄目だ! やっても無意味だ!!」
 手厳しいロディの意見が飛ぶ。
「そーだそーだ! 落ち込んでるから黙ってやってたら何だよ! 
こんなの横暴だ!」
 ケンツも随分いきまいている。
「だ、だけど、決まったことなんだから…」
 スコットは慌てふためく。
「どうなってるの、かわはた! これじゃ話が違うじゃないか!」
「いや、そう言われても…」
「26話分しかないんだ! 総集編なんかやっていたら、父さんや
母さんに逢えなくなってしまう!」
「そーだよ! まったくもってロディの言う通りだ!」
「じゃ、じゃあやめるよ。やめればいいんだろう? でもちょっと
だけでも出来そうだったし、また次回やれそうだな。ムフッ!」
 人を逆撫でするような笑顔に、怒り心頭のロディとケンツ。
「ずるいよキャップ! それだったら俺も『ルービンさんの日記』
『ザ・グラフティー ケンツ=ノートン』って出来るぜ!?」
 ケンツが騒ぎ立てる。もっともな意見だ。
「いや、主役は俺だ! 何と言っても総集編は『ケイトさんの日記』
と『ザ グラフティー ロディ=シャッフル』しか考えられない!」
 ロディも一歩も譲らない。
「き、君達、総集編はパスって決めたところじゃ…」
「よく言うぜ! じゃあそのにやけた顔は何だよ!?」
「また俺達の知らないところでこっそりやろうとしてるんじゃない
のか!?」
 たかが総集編の進行役で、随分と激しい争いになったものだ。
「たかがとはなんだ! 主役にも等しい大事な役じゃないのか!?」
 …し、失礼しました。もう口は挟みませんから。
 と、そこへ…
「ちょっと待った!!」
 颯爽とオペレーター席から立ち上がったマキが会話に割り込む。
「アタイも総集編の主役希望! オリジナルの時の総集編はロディ、
つまり男だったんだから、今度は女がやらなきゃ不公平じゃない?」
 オリジナルというのは、1983年に本放送が開始されたTV版
「銀河漂流バイファム」のことである。単に作者がそう呼んでいる
だけなのであまり気にしないように。
 などと説明している場合じゃない。
「なんだよ、女は黙ってろ!」
 カチンッ!
 このケンツの一言が、マキの怒りを大きく大きく膨れ上がらせた。
「じゃあ何? 女は主役になったら駄目ってこと!?」
「だな」
 突如やってきた通り掛かりのバーツ、彼のさらりとした受け答え
に、マキはさらに苛立つ。
「前から言いたかったんだけど、それっておかしいんじゃない!?
女がやっても何も問題ないでしょ!?」
「っつーか、男の方がより自然だな、ロボットアニメの場合は」
「そんなことないっ!」
「そーだぜ! ロボットアニメの主役が男でなきゃいけないなんて、
前時代的な差別発言ジャン!」
 ブリッジの交代要員でやってきたシャロンも張り切って揉め事に
参加する。
「育児の時は散々あたしたちに押し付けておいていざ主役となると
男がしゃしゃり出る。そんなの明らかに不公平だわっ!!」
 クレアの筋の通った?発言に、思わず女性陣から拍手があがる。
 猛反発するのはロディ。
「押し付けてなんかいない!」
「何よ! あなた達のJrなんだから、あなた達だけで育てるべき
なんだわ! ちゃんと育ててあげたんだから、養育費くらいは準備
するべきよ! 総集編の主役なんて安いくらいだわ!」
「な、何を… 別に俺達のJrってわけじゃねーだろ!?」
「そうまで言うならDNA鑑定でもなんでもすればいい!」
 バーツもロディも半ば荒れ狂ったように反発するが…
「男の人ってすぐそうやって自分の責任をチャラにしたがるのねっ!
わかったわ! そうまで言うなら、DNA鑑定でも何でもきちんと
やって白黒はっきりつけましょうよ!?」
 さすがはクレア、ホルテと不毛な論戦を続けてきただけのことは
ある。強引なまでの論点のずらし方に、もはや周囲の誰も追いつく
ことができない。目尻に光る涙まで見せられては、男として身動き
ひとつとれなくなる。
 ところが、それはそれとして、マイペースを崩さないものもいた。
「と、とにかく、今回は僕が主役で決まってたことなんだからさぁ」
 さすがはジェイナス内をまとめるキャプテンである。
 わざわざ蒸し返さなくてもいいのに、消えかかった火に油を注ぐ。
「決まってねーよ!」
「どうしてそうやって勝手に物事を決めるの!?」
「男ってすぐこれだわ! あーあ、嫌になるわ、ほんと」
「なにぃ!?」
「今日という今日はもう怒ったぜ!」
「それはアタイ達の台詞よ!」
「やってやろージャン!!」
 にらみ合いが続く男性陣と女性陣。
 そんな中を何事も無く割って入るカップル。
 やがて立ち止まり、ペンチと一緒に暇つぶしに来たフレッド曰く、
「というわけで、今回の本当のタイトルは…」

危機一髪の大バトル!
男性7人VS女性7人!?

「おいフレッド、調子良過ぎるんじゃないのか!?」
「そんなの呑気に構えてた兄さんが悪いんだよ! ビデオちゃんと
取れてるかなぁ? 最近電源供給が不安定だし、心配だよね?」
「そうなのよ、この前始まったばかりの『姫将軍あばれ旅』が…」
 ニコニコ笑顔で去っていくフレッド、ペンチの二人。
 実の弟にしてやられたロディ、悔しさもひとしおである。
「と、とにかく、みんな持ち場についてくれっ! 僕はこの問題を
解決すべく策を練るから! じゃっ!!」
 言うが早いか、スコットは自室へと笑顔で全力疾走した。

「るんるるんるるーん! いいこと思いついちゃったぁっ!!」
 随分経ってからブリッジに来たスコットは愕然とする。
「な、なんだ!? 誰もいないじゃないか!! よぉし、それなら
呼び出してやる! おーい!!」

 泣く子も黙るランドリー。
<<おーい、みんなー、ブリッジに集まってくれー!>>
「ばっかばかしい。あいつのあーゆー叫び声は、きっとロクなこと
じゃねぇ証拠だぜ?」
 泡まみれのバーツは歯ぎしりを抑えられない。
「まったくだ。また『障害物競走』とか言うんじゃないのか?」
 お気に入りのシャツを引っ張って伸ばすロディ、図星である。
「あれ、疲れるし、意外な人が優勝しちゃうから嫌なんだよね」
 新たに洗濯物を持ってきたフレッドの冷静な分析も的を射ていた。
どうやらビデオ録画は問題なかったらしい。

 熱いヤツラの格納庫。
<<おーい、みんなー、聞こえないのかなぁー!?>>
 何とも緊張感のない叫び声に苛立ちをさらに募らせる女性陣。
「きっとさ、『キャベツの千切り競争』とかいうんだぜ?」
 溶接に精を出すシャロンがぼやけば、
「女に有利だとかなんとか言って、公平にしてるつもり? アタイ
達をなめてもらっちゃ困るんだよね!」
 油まみれのマキもしかめっ面。
「えーっ? またあれやるの? あたしもう嫌だわ!」
 ネオファムの電気系統チェック中のクレアまでもが不満たらたら。
もう少しでコードを引っこ抜くところだった。

「なんでみんな来ないんだろう? この僕が忙しい時間をさいて、
こんなに素晴らしい事をやろうとしているのに…!」
 怒りのせいでくしゃくしゃになった紙をもう一度広げると、自然
に顔がほころんでくる。
「うんうん、これはいいぞぉ! 素晴らしいアイデアだ!!」
 そこへ…
 プルルル… 艦内通話の呼び出しベルだ。
 カチャッ… おもむろにスコットが受話器を取る。
<<あのね! 何考えてんのかわかってるけど、アタイ達に総集編
進行役の権利をくれなきゃ、呼んだって無駄だからねっ!!>>
 一方的に叫ばれ、文句を聞かされるだけ聞かされたあげく、一方
的に切られる艦内通話。
 プルルル…
 カチャッ…
<<ばーか、どうせまたくだらねーこと考えてるんだろっ? その
手にのるかっての!! 総集編なんてやってる暇ないだろうっ!?>>
 プルルル…
 カチャッ…
<<あのね、クレアおねえちゃんがコーヒーはちゃんといれてある
からのんどいてねって!>>
「くそっ! どいつもこいつも、僕の気も知らないで…!」
 怒りが頂点に達したスコット、みるみる顔つきが変わっていく。
「こうなったら… ボギー! 緊急警戒態勢発令だっ!」
 これなら意地でもブリッジに来るだろう!
 さすがにキャップ、的確な読みである。スコットも自信たっぷり、
だったのだが…
<<その指示は実行できません>>
 当然と言えば当然である。
 あまりに冷たいボギーの返答に錯乱するスコット。
「何故! どうして!! あのわからずや連中をブリッジにおびき
だすにはこの方法しか…」
<<現在敵機影はグレード−2までの範囲で確認されません。現状
での警戒態勢は無意味です>>
「なぁ、ボギー、いつからそんなに堅物になったんだい!? 僕と
君とは仲良く付き合ってきたじゃないかぁ? この前だって、僕の
ジョークライブを艦長権限でずっと中継しててくれたじゃない?」
<<情に流される様にはプログラムされていません>>
「いよっ! ボギー! 大統領!! にくいよこのぉ! スーパー
スペシャルかっこいいエクセレントコンピューター!!」
<<おだててもだめです! まったくもって、これっぽっちも必要
ありません! どうしても指示通りの作業を行なう必要がある場合、
キャプテンであるあなたにもそれなりの覚悟が必要です>>
 そうまで言われても、そうですかと引き下がるわけにはいかない
スコット。ジェイナスのキャプテンとしてのプライドも…
「う〜む… それなら、クレアのムフフな寝姿写真を、スキャナで
取り込ませてあげるから!」
 プライドって、そんなの?
 大体いつそんなものを手に入れたのか? やはり、マニアックで
おなじみのロディから受けた影響が大き過ぎるのか?
<<警戒態勢発令! 敵機影確認、グレード−1から0へ…>>
 こんな「覚悟」を求めたボギーもボギーである。

「うえっ、またかよぉ!」
 シャロンが露骨に嫌がる。
 結局ブリッジに無理矢理呼び出されたことになる一同。
「この前は死にそうになったからねぇ…」
「もう、散々謝ったじゃないの!」
「カチュアの足の速さには驚いたっけ」
「そうそう、フレッドの包丁さばきもすごかったわ!」
 何故か昔話に華を咲かせる同窓会の気分。
「でもって、今回もやっぱり…」
 ここで一同、鼻歌まじりでふらりと現れた、一人の少女へと目を
向けた。
「♪しらないこと〜だら〜けの〜とびらがあいてしま〜ったの〜…
みんな、どうかしたの?」
「いや、今回もカチュアの有利に働くようなシステムになってるん
じゃないかって思ってよぉ」
「私、何も知りませんっ!」
 カチュアは、必死になって否定する。
「でも、今日は今まで誰とも一緒じゃなかったんだろう?」
「あやしいなぁ」
「知りませんっ!! 勉強してただけです!」
「みんな違うんだ! 今回の競走は僕だけで考えたんだから!!」
「げっ! ス、スコットが…!?」
 それはそれで嫌になる一同。
 彼らの意に反し、やっぱりお構いなしに続けるスコット。
「そうさ! 今回、僕が自信を持ってお送りするスペシャルメニュー
とは…」
 ボギーのドラムロールが実にタイミング良く入る。
 みんなの胸の鼓動も嫌な方へ高鳴る。
 ピタッと音が止むと、スコットが張り切って発表した。
「三輪車レースだっ!!」
「さ、三輪車レースぅ!?」
 一同猛烈に叫んだ。明らかに呆れた叫び声だった。
「そう! マルロとルチーナが乗ってるこのククト製三輪車を使い、
ジェイナスの周回通路を一人1周ずつ回っていくリレーなんだ! 
で、勝ったチームの内一番タイムが速かった者を、今度の総集編の
進行役と…」
「やーだ! みんながのったらこわれるもん!」
「あたしもやだ!! せっかくホルテおばちゃんがくれたのに!!」
「何言ってんの二人とも! 買ってあげたんじゃないか! お金を
出してあげたのは誰だい? ん!?」
「ううっ…」
 幼児とて決して甘やかさない、それがこのジェイナスの掟である。
「実況解説は? またキャップ?」
「とんでもない! 僕が参加するからこそ今回の競技はより輝きを…」
「で、解説は誰?」
「もう… ボギーに頼んだら喜んでやってくれるってさ」
「じゃあスコットも参加か… あれ? 釣り合わないぜ?」
「そうだ、男子の方が一人多くなるんじゃないのか?」
「んもう! 君達揃って、お・ば・か・さ・ん! もう一人、いや、
もう一匹いるじゃないか、メスが。カモ〜ン!」
 メェ〜〜…
 一同振り向くとそこには宇宙初の戦闘ヤギ「メリー」が威風堂々
と立っていた。
 まずい。これは危険過ぎる。どう危険かというと…
「ひどいっ! あたし達をヤギと同じにしないで!!」
「そうだよ! キャップはアタイ達を一匹二匹なんて呼び方すんの!?」
「侮辱よ! 女性蔑視よっ!!」
「まーったくひでーよなぁ!」
「男ってこれだから!」
「そーよそーよ! …それで『じょせーべっし』ってなによ?」
 なるほど、火にガソリンを注いだようなものだ。

「ロディ、バーツ、変身するのは無しよ!」
 やけに厳しいカチュアの忠告に、ロディは顔を赤らめる。
「いや、あれはもう二度とやらない。恥ずかしいからな…」
「だな」
 バーツの決まり文句に促され、ロディがスタートラインに立つ。
 対する女子のトップはクレア。
 とにもかくにも、三輪車レースの幕が今開こうとしていた。

<<カウントダウンを開始します。3、2、1、スタート。本競走
はフェーズ2に入りました>>

 ボギーの中途半端な合図で、二台の三輪車は猛然と…
「あれ、うまく、こげないぞ!」
 よれよれロディの横を抜いたクレアも、
「ちょっと、これ、うまく前に、進まないわ!」
と、抜きつ抜かれつの猛レースではあるのだが恐らく3倍速以上の
再生スピードで見なければ観客にとって面白いレースとは言い難い。
 ふふっ… ひっかかったな、ロディのやつ!
 にやりと人知れずほくそ笑むスコット。
「くそっ! どうなって… ん? ちょっとコツがわかってきたか?」
 ようやく辿り着いた周回通路の真ん中あたりで、ひとり納得した
ロディの目の前に、一冊の本が落ちていた。

「あら、ロディの姿が全然見えないわ! やっと乗り方がわかって
きたのに!」
 かなり遅れて中間地点あたりに到達したクレア、彼女もコース上
に無造作に落ちている二冊の本を見つける。

<<さて、最終コーナーを回ってきたのは、ロディ=シャッフル!
かなりスピードがノッてるぞ!! おっと、クレア=バーブランド
も追いついてきた!!>>

 ドライバー交代の際、何気なくバーツが尋ねた。
「猛スピードで帰ってきた割には、時間がかかったな?」
「ちょ、ちょっと道が混んでたんだよ」
「…クレアも遅かったのね?」
 同じくドライバー交代中のペンチの問いにクレアはしどろもどろ。
「あ、あたしはなかなかコツがつかめなかったから。ロディの方は
随分前を走ってたわよね?」
 …なんか、怪しい。
 そういやぁ、スコットも見かけねーな?
 バーツの嫌な予感はきっちり当たっていた。

 周回通路中間地点あたり。
「ちくしょう! まさかペンチに追いつけねーとは… まあ、それ
だけ俺の足が長いって… ん?」
 バーツは異様な光景を目にする。
 ペンチは何やら本を読んでいた。しかも、バーツの姿に気付くと、
慌てて自分達の部屋の方へと走り去っていったのだ。
 レース中に、どういうこった?
 その直後、自分の身に同様な状況が起こった時点で初めてバーツ
は全てを理解した。
「スコットの仕業か! みんなの読みたい本を餌にしてレース全体
のスピードダウンをはかったのか! きっとロディはマニアック本、
クレアはアイドル雑誌あたりで、やつの策略にはまったに違いない!!」
 ご明察。そこまで説明してもらえると書いてる方も楽だ。
「その手にノるか! …うわっ!! なんだ!?」
 突然の水浸し。シャワーか雨のごとく、水が天井から降ってくる。
 まるで通路天井備え付けのスプリンクラーが壊れたかのようだ。
「し、しまった! 髪が!!」
 バーツは慌てて洗面所へと駆け込む。やはり髪は男の命なのだ。

<<バーツ=ライアンとペンチ=イライザ、ほぼ同時に帰ってきた!
次のドライバーはマキ=ローウェルとフレッド=シャッフルだっ!!>>

 まさかこの二人、ファミコンカセットの取り合いを始めるとは…
 準備不足だったスコットにとっては、嬉しい誤算のようだ。

「わーい、レースだレースだ!」
「でも、ぜんぜんでばんがないね?」
「だってぼくさいごだもん!」
「あ、あたしも! マルロとおんなじ!」
「じゃあ、それまであっちいってあそんでよっか?」
「うん! ぎんがてつどうごっこしよう!」

 喜びを噛みしめるマキと、悔しさを噛みしめるフレッド。結果は
自ずと推測できる。
<<おっと、フレッドの顔がアザだらけだ! どこかでクラッシュ
でもしたのか!? そして、遅れた分を取り戻すべく、本レースの
最有力ドライバー候補、我らがキャップ、スコット=ヘイワードの
登場だ!! シャロン=パブリンなんかに負けるな!! 行け! 
輝かしき栄光のゴールが君を待っている!!>>

「ちょっと待てよ! ボギー、解説がヒートアップし過ぎじゃねー
のか!?」
 バーツの歯ぎしりをよそに、スコットはなに食わぬ顔で三輪車に
またがり、のらりくらりと走り始めた。

 ようやくシャロンの背中が見えてきた頃…
 よぉし、そろそろだな…!
 何を思ったのかすっくと立ち上がったスコットは、突然三輪車を
小脇に抱えて走り出した。
 驚いたのは、彼を大きくリードしていたはずのシャロン。
「何だよっ!? きったねー! ひでーよそれ!!」
 彼女の罵倒も何のその、男子の、ひいては自分の勝利のためには、
なりふりかまってはいられないのだ。
「へへーんだ! 僕は一度も三輪車に『乗って』なんて言ってない
よーだ! 『使って』って言っただけだもんねーっ!!」
 猛然とダッシュするスコット。どうやら彼女はマネして走っては
来ないようなので、緊急用に準備していた育児アルバム’58は、
予想外に邪魔だったりする。
 恥も外聞も捨てた男というのは、こうも強くなれるものなのか。

「めーてる、あのちいさなほしにもたいきがあるんだね? ふしぎ
だなぁ!」
「そーよ、うちゅうにはかがくやじょーしきでせつめいのつかない
ところがたくさんあるの。かみもほとけもいない、むほうちたい、
それがつぎのほしなのよ」
「えー、つぎのていしゃえきはタウト、タウト、ていしゃじかんは…」

<<さぁ、ついにあのケンツ=ノートン軍曹が登場! カチュア=
ピアスンをどこまで引き離せるか!?>>

「はぁはぁ、はい! ふぅ、ケンツ、き、君の、番だ!!」
 息せき切って走ってきたスコット、言葉も途切れ途切れだったが、
勝利を確信したその笑顔は一同の背筋を凍らせた。
「ずるいぜキャップ!!」
「ちょっとジョークライブ成功したくらいで調子に乗りやがって!」
 散々罵声を浴びてもビクともしない我らがキャプテン。
「今ケンツが出ていっただろう? で、残るはジミーとマルロだけ! 
これで安泰。担いだって乗ったって僕に勝てやしないさ!!:
 満足げに薄気味悪い笑みを浮かべるスコット。デロイアの行政官
でもきっと務まるこどだろう。
 対するロディとバーツは、自分達が最初の方で走らされた理由に
気付き、悔しさをとりあえず別方向に向ける。
「このまま勝ったら男の恥だぜ!?」
「バーツの言う通りだ。悔しいが、ここは女子を勝たせなければ!」
「だな。そんじゃいっちょ、スコットと同じ手を取るか」
「お、同じ手、って…?」
「知らないとは言わせないぜ、ロディ?」
「…」
 素直に認めざるを得ないロディ。レース後の楽しみは残念ながら
この時点で山分けとなった。

<<レースも終盤! メリーVSジミー=エリルの師弟対決だ!>>
 顔を赤らめつつも口笛吹いて知らん振りのケンツを引き込んで、
ジミー妨害用「家庭菜園大百科」を準備するロディとバーツ。
 ところが…
 一同は猛然と駆け去るメリーの後ろ姿を目の当たりにしてしまう。
 なーんだ、と胸をなで下ろす男子と違い、今度焦りを見せたのは
女子の方だった。
「ちょっと待って! あのまま勝ったら、個人別タイムでメリーが
トップになりそうじゃない!」
「あっ!!」
 マキの意見に、皆この危機的状況に気付いたのだ。
「いけないわ! なんとかしなきゃ!! そうだわ!! 先回りよ!」
 「銀河漂流バイファム13声優サイン色紙」を握り締め悦に浸る
カチュアを置いて、女子一同−2は先回りをするため、別通路へと
姿を消した。

 これには男子も気付いたらしく、ほぼ同時に帰ってきたジミーと
メリーを見てロディは不思議に思う。
「クレア、どうやってメリーをスローダウンさせたんだい?」
「簡単よ。これを食べさせたの」
「…なるほど」
 クレアの手にまだ余っていたものとは、「スコット=ヘイワード
ジョークライブ’58」のチケットだった。
「いつかの分が大量に余ってたのよ」
「…腹壊したんじゃねーか? 後で具合みてやらねーとな?」
 バーツの意見ももっともだった。

「ようし、これでいけるわ! さぁ、ルチーナ、出番よ… あれ?」
「おいマルロ、どこに行ったんだ、マルロ!?」

 最上階ラウンジ。
「こんなところで寝てるわ?」
 第一発見者はペンチだった。
「どうやら電車ごっこでもしていたみたいだね?」
 フレッドの分析は正しかった。
 マルロの握り締められた地球行き無期限パスは、下手な字で適当
に作ったものだが、それなりに楽しかったんだろう。
「おい、起きろよ! 勝負はこれからなんだぜ!?」
「遊び疲れたのかしら。眠らせておいてあげましょう?」
 カチュアの意見ももっともだ。ジミーに服を引っ張られてること
でもあり、ケンツもそこまで無理はしない。
「あーあ、これでチャラかぁ」
 くたびれ儲けといった台詞を口にしてみるシャロン。
「そうだね。両チームのアンカーが眠っちゃってるんだもんね」
 マキも肩を竦める振りをする。ところが…
「でもよぉ、それなりに面白かったぜ? なぁ、みんな!?」
 バーツの気さくな問いかけが、誰もが持っているホンネだった。
 そう、みんなこの言葉を待っていたのだ。
「いいものも手に入ったしね!」
 勝負を忘れて上機嫌のクレア。
「それじゃあ、総集編は無しで決まりだ!」
 ロディの一声ですべてが決まった。
 そう、今日はみんな楽しかったのだ。それだけでいいじゃないか。
 あははっ!!
 男も女もない。そんなみんなの笑い声が銀河にこだました。

「な、何ぃ! 今回のレースは無効!? あんなに頑張ったのに!
 マルロとルチーナが待ち疲れて寝てたって!? そりゃないよ!!
 くそっ! これなら『ベルウィック一周すごろくゲーム』の方が
 良かったか!? それとも、『パネルクイズ クレアド25』、
 いやいや、『イプザーロンまるごとHowMuch!?』の方が…」