銀河漂流バイファム13
へなちょこストーリーダイジェスト
第12話


「なんか一所懸命に訴え続けてる相手の艦長さん。最初は怖い声で
 がなりたててたのに、だんだん弱々しくなってきたような… ま、
 3時間も待ってくれるんだし、のんびりと構えていればいいや。
 ところで、間男なんて乗ってたっけ? そんな名前の人、じゃあ
 ないよね。あ、そういうジョークも面白い? よぉし、イタダキ!!
 それにしてもホルテさん遅いなぁ。まだお風呂かな?」

ひとり足りない!?
脱出のカウントダウン

 あれから1時間少々。
 ブリッジは騒然としていた。

「…ということよ。はぁ、はぁ」
 ルービンが、紙に書いたミミズのような文字を、丹念に翻訳して
子ども達に読んで聞かせた。
「ってことはだなぁ… 結局のところは、間男とあいつの奥さんが
駆け落ちするときに、奥さんの希望で赤ん坊2人を一緒に連れ出し… 
旦那一人ぼっちにさせたんだな? で、そいつらのあとを追いかけ
たあいつは俺達と出会う、と。でもって、あいつの赤ちゃんの写真
送ったもんだから、ジェイナスの中に間男とあいつの奥さんもいる
と思い込んでる… そういうことか?」
 やたら説明臭いバーツのまとめがルルドの言い分・憶測である。
 そして…
「片や間男に飽きたあの人の奥さん、間男をあっさりと袖にしたら、
間男が逆上して赤ちゃんを奪って逃走… そんなことをしてでも、
よりを戻したかったわけね? それでも奥さんはよりを戻すつもり
なんてこれっぽっちもなくて、子どもの捜索願いを関係各所に依頼、
さらに腹を立てた間男は、宇宙ステーションで赤ちゃん達と一緒に
篭城、運悪く、地球軍との戦闘に巻き込まれた、というわけね…」
 このクレアのまとめがルルドのカミさんの言い分・推測である。
 互いの見解がかなり食い違っていることが、一層この問題を複雑
怪奇なものにしていた。
 何十枚にも及ぶメモを読み終え、ぐったりしたルービンを尻目に、
バーツがぼやく。
「しっかし、よくもまぁ長々と俺達に訴えたもんだ」
「3時間待ってやるって、こういう事だったのか」
 納得するスコット。
「よっぽど悔しかったんじゃないのかな? 奥さんとられたの」
「アタイわかるなぁ、その気持ち」
「どっちの?」
 カチュアのツッコミは、マキを困らせる結果になった。

 そんな大人の会話が飛び交うブリッジをよそに…
「んー! やっと捕まえたぞ! 早く拭こーなぁ!」
 食堂にて、丁寧にJr達の玉のお肌を拭くシャロン。
 実はもうほとんど乾いている。30分近く追いかけていたのだ。
 言うこときかない子ほど可愛いものなのだろうか。
 本当にベッタリ。シャロン、母性本能全開である。
「汗疹が出来ないように、天花粉つけてやろうなぁ」
 だからもう乾いてるんだってば。
「のどがかわいてるだろ? 後で、オレンジジュース飲ませてやる
からな!」
 もう聞く耳持たずといった様子。
「オメーら、手ぇあいてたらロディJrの方を拭いてやってくれよ?」
「はーい!」
 シャロンと一緒にJr達を追いかけていたマルロとルチーナは、
彼女に言われるままにお手伝いをする。結構嬉しいらしい。
 ところが…
「くしゅん!」
 ロディJrは大きなくしゃみをした。
 そりゃそうだ。30分も濡れたまま逃げ回っていたのだから。
「あ、あかちゃん、くしゃみ、した…」
 二人の手が止まる。
 やがてぐずりだしたロディJr。
 そう、あっという間に大声で泣き出したのである。
 ただでさえこの前の冷凍庫騒ぎでひび割れだらけの食堂に、大声
の破壊力が加わると、当然のごとく壁や天井が崩れ出した。
「きょえーっ!! あかちゃんなきだしたーっ!!」
「うわーっ! こわいよーっ!!」
 逃げ出すマルロとルチーナ。
 だが、シャロンは逃げなかった。
「こら! ちゃんと拭いてやらねーと風邪ひいちまうジャンか!!」
 だから乾いてる… 言っても無駄か。
 で、頭に当たったコンクリートの破片も何のその。
 シャロンは、鼻歌交じりにロディJrの身体も拭き終わったので
ある。というか、自分で納得するまで身体を拭いたというだけだが。
 ほんに、「母は強し」というべきか。

「やっぱり自分の赤ちゃんは可愛いものよ?」
「男親でもか?」
「本当にあいつの赤ちゃんなのかな?」
「間違いないわ。はっきりとククト語でそう言ってたから」
「終わりの方は涙ながらに訴えてたもんなぁ…」
「でも、実はひでえダンナだったんじゃねーのか、あいつ?」
「あ、あの、ぼく…」
 ブリッジでは、ジミーも加わり、未だに他人様の人生に対しての
無責任な発言が延々と飛び交っていた。
「あはは、そうかもな。で、若いツバメのところへ… ん?」
 ここまできて、ロディはふと、ある可能性に気付いた。
「バーツ、お前、赤ちゃん勝手に連れ出してきたんだよな!?」
「は? 勝手に? 俺が?」
「だって、そうなるんじゃないのか?」
「ち、違う! 断じて違う! あの状況で放っておけるか!?」
「まさか、あいつの言っている間男って…」
 みんなの疑いの眼差しが、たった一人に突き刺さる。
「知らん! 俺は知らんっ!」
 すっかり注目の的、バーツは必死に弁明を続ける。
「あれはマルロが第一発見者なんだって!」
「ほんとか? 昔置き去りにした赤ちゃんを、奥さんとよりを戻す
交渉の切り札として、また引き取りに…」
「そんなわけねーだろっ! 大体ずっとジェイナスで一緒にいたじゃ
ねーか!」
「ベルウィックにいたのは、ついこの前の事だし…」
「そういえば、危ないところだったとか、しょっちゅう言ってたね?」
 うーむ… バーツ以外のみんながうなっていた。
 とはいえ、全員が同じうなり方ではなかった。
「なぁ、さっきから聞いててわかんねーんだけど、まおとこって、
なんだ?」
 ケンツのような素朴な問いに対する答えは、意外と難しいものが
ある。ちなみに、ジミーもこの類の質問をしたかったようだ。
「そ、そうだよ! その、間男ってのはな… えーっと、だから…」
 起死回生、話題がそれてラッキー! と思ったバーツでさえ首を
傾げる。
 こうしていつの間にかブリッジにいる一同がケンツにうまく説明
出来る方法を模索している時…
「ほんと、あなたってなんにも知らないのね?」
 こういうことにもっとも適した人物が、颯爽と現れたのである。
 皆をあざ笑うかのように会話に割り込んできたのはペンチだった。
 どうやらようやく髪が乾いたようだ。その証拠にホルテもついて
きていた。
 うっ、お酒くさい…
 さすがのベタ惚れスコットでも、お銚子30杯分の日本酒を身に
まとったホルテには近寄り難いものを感じているようだった。
 若干千鳥足ながらも、部下に歩み寄ったホルテ。
「ルービン、ぬいぐるみは洗ったの?」
「はい。一目につかないと思われる廊下に乾かしてあるのですが…」
「? どうかしたの?」
「その、言いにくいことなのですが…」
 そんな彼女達のひそひそ話には関係なく、ペンチが雄弁をふるう。
「間男っていうのは、結婚している奥さんをとっちゃった人のこと、
またはそういう行為そのものを言うのよ」
「な、なんで君がそんなこと知ってんの?」
 フレッドは額に目一杯冷や汗をかく。
「あら、そーゆー小説では常識中の常識じゃない!」
 そうなのか…? どことなくペンチを見る目が冷たくなる一同。
 そんな周囲の空気を察していないのか、彼女の大胆発言は続く。
「あーあ、これだからお子様は嫌なのよ!」
「何だと!」
 指を差されてまでお子様扱いされては、ケンツもたまらない。
 ところが、反論無用のペンチの攻撃。
「だってそうじゃない! 何かというと戦闘だ! とか徹底抗戦だ! 
とか言っておいて、いざとなったら、おらそんなこといったっけ? 
とか、母ちゃん勘弁してくれよっ! って」
 そんなこと言ってないと思うのだが…
「大体、いつも言うことは同じだし、背は低いし、足は短い、虫歯
だらけで息は臭い、いいところなんて全然ないじゃない!」
「そんなこと、関係ねーだろっ!!」
 ケンツの言う通りだ。
 身体的なことをとやかく言うのは、この場ではルール違反である。
 ところが、ペンチは動揺するどころか、お構いなしに話し続ける。
「ことある毎に私と意見を反対にして、そんなに私と対立するのが
楽しいの!? それとも自分の言うことは全て正しいのかしらっ!?
そうよ! 133食事件だって、あなた達が遊んでいるから、私が
代わりに覚えなくちゃいけなくなって、マニュアル必死に読んでた
のよ! それをあんな時だけ揚げ足とって喜んで… 感謝されこそ
すれ、あなたなんかに文句や中傷を言われる筋合いはないわっ!!」
 ケンツが下唇をかみ締める。
 ある意味その通りなので、言い返せなくなってしまったのだ。
 ただ、そこまで言う筋合いが、ペンチの方にもあるだろうか?
 そもそも、こっそりラピスと通信しようとしていたのは誰だ?
「この前だって、せっかくフレッドと二人きりだったのに、割り箸
ないかって探しに来て散々騒いで出てったじゃない! もうムード
なんてぶち壊しよ! あんな嫌がらせしておいて、自分だけは正義
面してるなんてひどいじゃない!! いくら私がオトナだからって、
ガキンコのあなたにそこまでされて黙って引き下がっていられる程
お人好しじゃないわっ!!」
 ケンツの肩が震える。
 まったくのお門違いないちゃもんではないだろうか?
 これは勝手なプライベートの話だと思うのだが…
「言わせてもらいますけどね? あなたのせいで一体どれだけ私達
みんながピンチになったと思ってるの!? 何でもかんでも戦え、
戦えってそんなのは弱虫の言う台詞よ! その少ない脳味噌で何か
有効で平和的な解決策を考え出したことがあるの? お子様な頭脳
に期待するだけ無駄だというのはわかっているけど、少しくらいは
努力というものも学んで欲しいものだわっ!! それでも何も考え
つかないんだったら、あなただけで戦えばいいじゃないっ!!」
「何も… ぐずっ、そこまで言うことないじゃないかぁっ!!」
 半泣き状態、鼻水じゅるじゅるのケンツ。
 そしてついに、ついに彼はペンチの胸座に手をかけた。
「やめろよケンツ! バイファムらしくないシーンだよ! それに…」
 フレッドが叫びながら彼に飛びかかる。
「うるさい! あれだけ言われて黙ってられるかっ!!」
「それでもやめときなよケンツ! やめといた方がいいってば!」
 誰もが目を背けたくなるような醜い争いは、意外にも一瞬で決着
がついた。
「やかましい! どけよフレッド!!」
 と、邪魔者を振り払おうとした途端…
 ドサッ!!
 ブリッジが静まり返った。
 …えっ?
 ケンツは今、天井を見つめている。
 彼には、この瞬間自分に起こった出来事がわからずにいた。
 周囲のとりまき連中も、見るには見ていた。私も、である。
 だが、あまりにも短い時間での出来事だったので、皆呆然として
しまっていた。いや、これ書いてる私も、である。
 そこで、ビデオを巻き戻してスロー再生してみよう…

「やかましい! どけよフレッド!!」
 はい、ここからスロー再生。
 フレッドに気をとられ、ペンチの胸座を引き寄せる手がゆるんだ
ケンツ。
 その時、すかさずペンチはケンツの手首を握り締めると同時に、
瞬時にして身体、特に下半身を右方向へとねじっていた。
 しなやかな肢体をもとにした少女独特の?腰のキレが、素早さと
優雅さという相反する二つの要素を一気に請け負い、そのまま次の
動作へと流れる様に進む。
 右足を半歩後ろへ引いたかと思うと、今度は腰のキレを最大限に
活かした、上半身の右下方向への大回転が行なわれる。ケンツの腕
はペンチの左肩にかつがれる形になる。
 俊敏な動作と豪快なまでの粘り、足腰の絶妙なバランスにより、
ケンツの腕は彼女の身体へと引っ張り込まれる。
 この時彼の身体はついにペンチの背中の上、足が宙に浮いた。
 ペンチの身体も前のめりになりながら、かすかに浮いていた。
 そう、この時点でのペンチの姿は、どこからみても背負い投げの
態勢なのである。ビデオをお見せできないのが残念だ。
 あとは力の流れに沿う様に、彼女はしなやかに身体を沈ませる。
 ドサッ!!
 …この音は、ケンツが地面に叩き付けられた音だったのである。

「ふんっ! 私に勝とうなんて、百万光年ちょっと早いわ!!」
 ブリッジを去る間際に放たれたペンチの捨て台詞に男のプライド
を根こそぎむしり取られたケンツは、ただ涙するしかなかった。
「一日にしてならずって言うよな? どこで稽古してたんだ?」
「あの子、国民栄誉賞でもとるのかなぁ?」
「ケンツ、大丈夫か? お互いしっかり生きていこうな?」
「クレアドに柔道の道場なんてあったかなぁ?」
 威厳のある背負い投げのせいか、本人がいないにも関わらず、皆
小声になっていた。
 そんな中、何故か左肩をおさえながら、フレッドは思った。
 だから言ったんだよ。やめといた方がいいって…
 何事も、経験者のアドバイスは素直に受けておいた方がいい。

「話を元に戻そう。あと1時間半位あるんだけど、あの艦長って人、
どうやら本気みたいだ。僕としては、いるのなら間男を出した方が
いいと思うんだけど… ボギー、艦内の生体反応を出してくれ!」
 スコットがテキパキと指示を出す。
 どうやら自分主導な話ではないので、さっさと片付けたいらしい。
<<ブリッジにたくさん、ブリッジからの通路に一つ、食堂に少々…
以上です>>
「アバウトなやつだなぁ…」
 続くロディの台詞は、今のバーツの言葉に相づちを打つものでは
なかった。
「そうだ、アバウトでいいんだ。この際、間男を出すか」
「は?」
 一同呆れ顔。
「ボギーはそんな奴いないって言ってるじゃない!?」
「まあ聞けよ、マキ。幸いここに候補が一人いる」
「そっか!」
 じーっ…
 冷たい視線をまたも感じるバーツ。
「な、何言うんだ、ロディ!! 俺は違うって」
「いや、この際アバウトにいっても構わないと思うんだ」
 やった! これでライバル一人脱落!!
 実は、内心舞い上がるロディ。
 この提案、彼にとっては単なる主役奪回計画の一部なのかもしれ
ない。
 いや、どうやら少し違うようだ。
 これで赤ちゃんをジェイナスから無理に追い出さなくても、なん
とかなるんじゃないか!?
 まったく、懲りない人だ。
「そうね! いけにえって考えも悪くないわね?」
 クレアが真っ先にその意見に乗る。
 他人事となると、途端にいい加減になるのが人間というものだ。
「冗談じゃねぇ! お、おい、スコット、何とか言って…」
「うーん、悪い考えじゃないかもしれないなぁ。最小の犠牲で他の
みんなが助かるなら、これが最善の策かも」
 真剣に考えた結果がこれだから、バーツにとっては厳しい。
「私もそう思います」
 カチュアはシビアにロディの意見に同調した。が…
 これであの赤ちゃんも引き取ってもらえたらすべてうまくいくわ!
 それなら早いほうがいいわ!
 実はロディとは正反対の思惑を瞬時に巡らせていたのだ。
 既に、頭の中では次のビデオ予約録画番組を検討中である。
 ガックリとうなだれたままのケンツと寄り添うジミーは、黙った
ままだった。仕方ないといえば仕方ない。
「僕は何とも言えないよ」
 フレッドの言葉がせめてもの救いだが、よく考えると完全否定と
いうわけでもない。
 もはや、バーツにとっては最後の砦を残すのみ。
「マ、マキはどうなんだ!?」
「アタイも賛成! …あれ、どうしたの?」
 あまりにあっさりとした回答。そりゃ気絶もしようというものだ。
「ん? 気絶したのか? じゃあ、今のうちにバーツを…」
 スコットは手際よく事を進めようと思えば結構出来る男だった。
 ただし、冷めている、というのが条件のようだ。
 知らぬ間にいつぞやの復讐になっていることも気付かずに。

「あら? シャロン、こんなところに…」
 危うく「なんておバカなの?」と吹き出しそうになるペンチ。
 頭にコンクリートの破片を乗せたまま赤ちゃんをあやすその姿は、
さながらコメディのようだ。
「ん? どうしたんだ?」
「いえ何でも」
 さらりと答えるペンチ。
 その通り、特にここに来た意味などないのだ。
 ただ単にイライラしていただけである。
 ケンツを叩きのめしておいて、なお苛立ちがおさまらないらしい。
 そうだわ!
 ふとした思い付きから、イライラ解消のため、彼女はシャロンを
からかうことにした。
「そうそう! その子の親がわかったのよ!」
「ほんとか?」
「そうよ! その子達の名前もわかったのよ! あのね…」

 コホン、とスコットは咳払いをひとつ。
「というわけで、バーツをあの艦長さんに引き渡して、ジェイナス
は見逃してもらうことに、何と全員一致で決定した!」
 一同拍手。いや、一部そっぽを向いているものもいるが、両手を
後ろ手に縛られ、床に転がされているのでそもそも議決権はない。
ついでにいうと、この場にいない有権者もいたりする。おまけに、
大人には議決権はないわけで、極めてキャプテンに優位な仕組みの
議決内容だったといえる。
「いいんですか? アン=ホルテ、彼らをラピスが保護しなくても」
 取り巻きに成り下がったルービンの提案も、やはり目立ちたいと
いうけなげな想いからの言葉である。
「言っても聞かない頑固者集団だもの。それが彼のいいところなの」
と、当のホルテに返されると、ぐうの音も出ない。
「そうですね。あの艦長も、私を袖にしたくらいですから」
 カミさん命らしいルルド。ルービンなどには目もくれなかった… 
彼女はオトナの駆け引きが失敗した理由に、今ようやく気付いたの
である。
「ルービン、何か言った?」
「別に」
 舌を鳴らしたのが聞こえてしまったらしい。
「それより、くまのぬいぐるみの方だわ。まさかそんなことになる
なんて…」
「すみません。大変な事になってしまって…」
「ほんとよ。わからなかったの?」
「あの、ホルテさん?」
 スコットが詰め寄る。
「わっ! び、びっくりした! どうかしたの?」
「相手の艦長さんに今の決定事項を通知してもらえますか? あの、
愛しい僕の言う事、聞こえてます?」
 この状況、結構不便に感じるスコットだったりする。
 いや、お酒くさいとかじゃなくて。
 ホルテさんとはもっとジョークや駄洒落のことについて語り合い
たいのに…
 この事態も事態だけど、エリートだったら地球語くらい勉強して
おいて欲しいよ、まったく…
 ジョークショーは開催出来ない、ホルテとは風呂に一緒に入れな
かった、忙しい自分のせいで彼女は寂しさを紛らすため酒まみれに…?
 その怒りの矛先はきっちりとルルドに向けられていた。
 ちょっと違うと思われることもあるのだが。

 度重なる交渉の結果、一時間後に間男(=バーツ)と赤ちゃんを
引き渡すことで両者が合意した。
 まだ時間があるのと、解決の目処がついたためか、皆ブラブラと
ブリッジを出ていってしまった。
 で、何故かそんな中、ブリッジで暇をもてあます女の子が一人。
「うーん、アタイの占いだと、いろいろとひどい目にも逢うけど、
最後は結構うまくいくみたいね」
「もがーっ!! ふがふがーっ!!」
 そばで寝っ転がっているリーゼントが騒ぐ。
「どうしたのバーツ、うるさいなぁ。何か言いたいことあるの?」
 仕方なしに、といった感じで、猿ぐつわと後ろ手の縄をほどいて
あげるマキ。
 そんな彼女にいきなり…
「ひどい目って、こんな目のことじゃねーのか?」
と、縄を握り締めて訴えるバーツ。
 にっこり笑顔のマキ。
「違う違う。たとえば…」
 ドカーン!!
「そ、そう、こんなやつ!」
 マキの占いは今回もばっちり当たった。
「くそっ! 痺れを切らせて撃ってきやがったか! …いてっ!」
 バーツは通信用コンソールに当たった。

「何だ? 敵襲か!?」
 (第11話冒頭のナレーションの時に)クレアにいれてもらった
コーヒーがまだ半分も入ったままのマグカップ片手にやけにカッコ
つけるスコット。
「あいつ、結局攻撃して…」
 負けじとカッコつけようとするロディだが、
「どうなってるの! 約束が違うわっ!!」
というクレアの叫び声に台詞をかき消されてしまう。
 どうやらスコットが飲むのを忘れていたのを怒っているらしい。
 もはや、クレアの視線の方がコーヒーより冷めているようだ。
「そうよ! あと12分ちょっとあるのよ!!」
 クレアの言葉を勘違いして受け止めたため、まともな答えになる。
 展望室でくつろぐジェイナスクルーは、ふってわいたビーム砲の
お出ましによってたかって大騒ぎ。
「あの、カチュア、それって結構切羽詰まってるんじゃないのか?」
「あなた、いつになったらコーヒーを一時間以内に飲み終わるの?」
「12分あれば、TVアニメなら前半パート分もあります!」
「いや、だから、その… 僕だってキャプテンとして忙しくて…」
「そりゃそうかもしれないけど… でも、12分じゃ脱出するにも
時間が足りないんじゃないのか!?」
「またそうやっていい加減なことを! どうせくだらないジョーク
ばかり考えてるんでしょ!?」
「バイファム13だと結構会話が出来るはずよ! もっとも、実力
次第だと思うけれど…」
「くだらないとは何だっ! 君ももう少しホルテさんを見習って、
ジョークや駄洒落を一から学んだらどうだ!?」
「まるで、俺が全然台詞がないみたいじゃないか!」
「そんなこというなら、マグカップ、ちゃんと自分で洗ってよ! 」
「違うの?」
「やっぱり駄目なんだ! 気が変わったんだよ、あの人!」
 突如わいて出たフレッドの判断は、何故こうも冷静なのか。
「そうね、こういう恋愛感情のもつれって、とても厄介なのよ」
 ホルテの言葉は真実の重みをたっぷり含んでいた。
「間男が偽者だとバレたらまずいかもな。バーツには、出来るだけ
うまくやってもらわなきゃ…」
 これ以上カチュアとの論争は避けたいと願い口に出したロディの
言葉に、皆が同じ願いを感じ取った。

「なんで? どうしてビーム砲撃っちゃったの?」
 実は、一番驚いているのは、誰あろう張本人、ルルド艦長その人
だったりする。
 どうやら、ずっとブレーキを踏むのに疲れたのでパーキング用の
サイドブレーキを引いた左手が、たまたまトリガーに引っかかった
らしい。
「艦長! おやめください!!」
 副官バリルら数名が慌ててARVブラグに乗って駆けつけた。
「今回は私達に手ぇ出すなって言ったじゃないっすか!」
「いや、私は…」
「それを自分だけそんな楽しそうに!」
「だから…」
「間男以外は攻撃しないんじゃなかったんですか!?」
「あの… 私の言ってること、聞いてる?」
「約束違反っすよ! 軍部に言いつけちゃいますからね!」
 部下達の勝手な言い草に、ルルドは一喝する。
「う、うるさい!! ボタンを間違えて押しただけなのだ!!」
 一瞬ARVの動きが止まった。その後、
「アハハッ!! そうか! そうだったんですか!!」
 実に爽やかな一同の笑顔。部下達も、決して悪人ではないのだ。
「はぁ… 疲れた。今日はもう帰る」
 艦長のその言葉にルンルン気分で素直に従う良き兵士達。
 何がそんなに嬉しいのやら…

「何だ? どうして帰っていっちゃうの? よくわからないけど、
 とにかく助かった。よぉし! 今のうちにジェイナス最大加速で
 この宙域から脱出だ! うーん、ちょっと僕カッコイイかな? 
 …なに? 逃げ切れない? 捕捉されてるって? これはやはり
 バーツの出番か… ん? ちょっと待て、バーツはどこだ!?」