銀河漂流バイファム13
へなちょこストーリーダイジェスト
第10話
「敵の攻撃がやんだ後フレッドからこっそりと一枚の写真をもらう。
これは危ない! 本当に、ホルテさんに見つからなくてよかった。
それにしても… こ、これがロディの言っていたアレだなんて…!?
すごい! 凄すぎる!!」
ジェイナスが凍る!
幼い命を救え!
「どうして…」
ジェイナスの艦内は、基本的に静かである。
こんな巨大な船に、子ども13人+大人2人+赤ん坊2人+ヤギ
+亡霊&怨念多数しかいないのだから。
どこへ行っても人なんているはずがない。
もちろん子ども達のところへ行けば、いやと言う程うるさい状況
になるのだが、遥か宇宙の大海原を見渡せる展望台、こんな場所で
なら静寂な気分をたっぷりと味わう事も出来る。
「あんなものが、どうして…」
ホルテは一人、悲しみにくれていた。
そう、自らが主催した「スコットヘイワードディナーショー」が
敵の攻撃によって中断させられたのだ。彼女にとってはラピス所属
以来初めての、深くて苦い悲しみ… のはずだった。
だが、どうやら彼女の落胆の理由はそれだけではないようだ。
「私には信じられない」
「ホルテさん… 大丈夫ですか?」
残念ながら、最大のライバルによって静寂は破られた。
「ごめんなさい、何でもないのよ、クレア」
「でも…」
「何だか自信がなくなってきたの、彼との愛に。スコット、まさか、
あんなものが好みだったなんて…」
クレアは彼女が思い詰める理由を知らなかった。だが、その真剣
な表情を目の当たりにして、感じることは一つ。
「ホルテさん、それほどまで、スコットのために…」
「フレッド君から手渡されたところを私、見てしまったの。だけど
彼は私がその現場を見たことを知らないの。更生させてあげたい。
でも、私にはその力は…」
…更生って、何?
あなたはスコットの何を知っているというの!?
激しい嫉妬に燃えるクレアだったが、潤んだ瞳の方が強かった。
「クレア… お願い、しばらく一人にさせて」
放っておくとなにするかわかんないから、こうして巡回してるん
じゃない!
もう、情に訴えるなんて、ずるいわこの人!
お人好しのスコットなんて、コロリと…
そう思う気持ちはやまやまだが、ライバルの余りの落胆ぶりに、
声に出せない彼女は、楽しい事を思い浮かべて気分転換をはかる。
そうだわ! 今日はあの日じゃない! 忘れないようにしなきゃ!
先程までの気分はどこへやら。嬉しはずかしのクレアはルンルン
ステップで展望台を出た。
ククト軍特殊部隊の戦艦は、相変わらずジェイナスと一定の距離
を保ちつつ、待機していた。
「ブラグ05を修理次第目標を追尾、攻撃を…」
ブリッジでの副官バリルの的確な指示を、艦長のルルドが遮る。
「いや、攻撃はしばらく見合わせる。様子をみる…」
「艦長…?」
振り向くルルド。どことなく顔が赤い。
後ろに控えていた副官のバリルと目が合う。
何かを感じとらない方がおかしい。
互いに、じっと見つめ合う二人。
…はっ!
先にこの状況を振り払ったのは艦長の方だった。
「攻撃は見合わせるといったんだ!」
その迫力は、副官以下兵士達を震えあがらせた。
「は、了解しました!」
叫ぶ副官を尻目に、ルルドは苦虫を噛み潰した様な表情のまま、
小さな声でつぶやいた。
「こ、こんな馬鹿なことが…」
彼の手には今、1枚の写真が握られていた。
こちらジェイナス。同じ様に写真に見入る男が一人。
「どうしてこれを送ったら、攻撃が激しくなったんだろう?」
僕だったらすぐに攻撃をやめるのに…
キャプテンシートに座り、悦にひたるスコット。
いやぁ、スゴイ! スゴイですよこれは!?
さすがロディ、マニアックだなぁ!
と、この調子で、ずっとコンソールを眺めていた。
そんな状態だから…
「大変だよ!」
フレッドの叫びにもキャプテンは反応しなかった。
わざわざキャプテンシートにまで足を運ぶフレッド。
「エアコンディショナーに異常発生なんだってば!」
「あ、そう。ムフッ!」
「もう… スコットさん、まだアレ見てるの?」
覗き込むと、コンソールには「アレ」が飾ってあった。
「アレって何ですか?」
横やりを入れたカチュアを前に、しろどもどろのスコット。
「ああっ、いや、何でもないよ。うん」
慌ててズボンのポケットに写真を入れる。
「で、何? フレッド、なんか言ってたよね?」
「だから…」
「艦内の温度が急激に下がっています。そのうち冷凍庫です」
「そうか、冷凍庫か… ま、そんな予感はあったんだ」
腕を胸の前で組み、感慨深げに語るスコット。
「ただでさえオンボロ練習艦なのに、あのJr’s達が来てからと
いうもの、日に日に老朽さに磨きがかかっていってるからなぁ…
この前なんか…」
あまりに話が長くなりそうなので、フレッドが割って入る。
「ボギーも調子が悪くて… ほら」
<<コマンドまたはファイル名が違います>>
「は?」
スコットが驚くのも無理はない。
旧時代的なエラーを音声通知するボギー。
「いや、だから、その…」
<<無効なドライブの指定です>>
「ドライブって、何だ?」
目を白黒させているスコット。
「さぁ… カチュア、知ってる?」
どうやらフレッドも知らないらしい。
「デス・ドライブの事じゃないかしら? 確かに、フライバイ航法
とは違う原理なので、無効な指定だわ? でも、そんなものが何故…?」
「…スコットさん、カチュアにもわからないみたいだよ!?」
思わずフレッドが発言を止めに入る。
知らないなら知らないって言えばいいのに…
博学も修羅場では邪魔な存在でしかない。
「ボギー、今のエラーを詳しく教えてよ!」
<<ヘルプファイルが見つかりません>>
「…………もうボギーはあてにできないよ!」
「とにかく私達で何とかするしかないわね!?」
「冷凍庫ってことは、寒いんジャン!」
この子達…
ルービンは、あまりにもテキパキと行動する子ども達に驚いた。
そして、激しく動揺する。身震いが止まらない。
これじゃ… これじゃあ私の活躍する場がないじゃない!?
知らず知らずの内に首を横に振る。
ただでさえ弱い立場である。これ以上影が薄くなってしまっては、
今後の出番に影響が出るかもしれない。
今のうちに恩を売っておかなければ…
というわけで、さっさと故障箇所へ出向き作業を始めるルービン。
「これはひどいわね?」
一人で直すつもりだったのだがロディ、バーツまではいいとして、
ケンツ、おまけにシャロンまでがついてきていた。
そこまでして私の出番を奪いたいわけ!?
負けない! この子達には負けない!!
「でも大丈夫。前に、これよりひどい船を…」
それはすごい、と、ケンツが頼もしそうに問いかけた。
「直したことあるの!?」
「…」
ロディ達にはこの無言が怖い。
そもそも、サーカス団スカウト難民保護組織ラピスである。
大勢の難民を、次から次へサーカスに売り飛ばす保護するだけの
組織なのだ。スカウトの関係上簡単な手品くらいは習得しているのだが…
意地でも直しちゃる!
これ以上モブキャラ扱いされてたまるものか!!
いつかきっと、「バイファム13下敷き」の絵に仲間入りするん
だから!!
負けない! オバハンにも! ガキんこにも!
その真摯な姿に、ケンツだけは胸のトキメキをはっきりと感じとった。
「えーっ! 停電するんですか!?」
素っ頓狂なペンチの叫び声に眉一つ動かさずクレアが答える。
「ええ。調理器とかビデオとか使えなくなるから今のうちに暖かい
飲み物とか予約録画のための予備電源とかを確保しておかなきゃ」
「あの、この際ビデオは…」
「あら? とても重要よっ! 『ヤンヤン歌うスタジオ』は確実に
録画しておかないと、大変なことになってしまうわ! できれば、
『ドリフ大爆笑』もとっておきたいけど、優先順位を考えると…」
「あ、あのう、それなら私も録画して欲しい番組が…」
「それはそうと、寒くなるのよね? こういう時こそヤギ鍋…」
ペンチの希望を、話題を変えることでバッサリと遮る。
ビデオテープはジェイナスでは貴重な資源なのだ。
その態度に苛立ちを覚えたからではない。
「ク、クレア!」
最後の一言と現在の状況に鋭く反応したからである。
「どうしたの… あっ!」
キッチンの入口には、ちょこんと立っているピンクの髪の女の子…
「ル、ルチーナ!?」
「ヤ、ヤギなべ…」
大きな瞳一杯に涙を浮かべ、今にも泣き崩れそうな、ひきつった
顔が怖い。
メリーへの愛情に関しては、おそらくジミーにも負けないだろう。
「嘘よ、ルチーナ! そんなことあるわけないじゃないの! それ
よりどうしたの?」
「あのね、ペンチおねえちゃん、さむい… さむい…」
キッチンに来た時よりも、特に心が冷え切ってしまったようだ。
そんな年少者に、黙々と作業しながら冷たく言い放つクレア。
「まぁ、ケイトさんみたいなことを言うのね? ジェイナス艦内を
5周くらい走ってくれば、寒さなんて吹き飛ぶわ」
<<僕より先に走るな!>>
意味不明な艦内放送を無視し、話は続く。
「それだけ?」
「ううん、あかちゃん、クシャミしてたの…」
「クシャミ3回… これ以上言うのは、やめておきましょうね?
で、本当は…」
「あ、あと、へんなビームみたいなのがでて…」
「きっと、赤ちゃんのお母さんが噂してるのよ?」
「そっか! そうなのね!!」
「…とにかく、あたし忙しいから、赤ちゃんの面倒をお願いね!?」
「はーいっ!!」
やっと元気の出たルチーナだった。
さて、放心状態のホルテ。未だに展望台に座りっぱなしである。
彼が、あんな…
まだ言ってる。この人相当しつこい。
「ホットミルク、いる…?」
さりげなく、ひょっこりと現れたのは、ジミー&メリーだった。
「きみ… ジミー君、だったわね?」
問いかけに『ジェイナスの良心』は、黙って小さく頷いた。
「どうしてヤギを連れているの?」
かすかに顔が動くが、彼女を見上げたのかどうかすらわからない。
「誰かが見張ってないと、いつヤギ鍋にされるかわかんないから…」
なるほど、気軽に「ヤギ鍋」と言葉が飛び交う昨今、正論である。
「誰かが…」
ホルテはこの少年の純粋な言葉に心打たれた。
こんな小さな子でも、愛するものを守るために戦っているんだわ!
そうよ! 私だって、彼との愛に深く深く生きなければいけない
のよ!!
障害が多ければ多い程、燃え上がるのが本当の愛なのだわっ!!
きっと彼をまともな道に戻してみせるっ!
急ににっこりと笑顔を取り戻したホルテ。ジミーにお礼を言おう
とした瞬間、部屋の明かりが消えた。
「これでエアコンの電源が確保できるぜ!」
「こっちもOKよ? 同時に出来たんだからね!?」
やけにムキになるホルテをよそに、修理完了報告を、艦内通話で
スコットに知らせるロディ。
<<下記モジュールが見つかりません。再インストールしますので、
ボギーCD−ROMを挿入して、リターンキーを押してください>>
相変わらずボギーはボケ続けている。
<<404 File Not Found>>
「今日のボギー、絶対おかしいよ!」
フレッドが半狂乱になる。
<<サーバーからのレスポンスがありません。しばらくしてから…>>
「ほんと、一体何言ってるんだ?」
スコットも、彼程ではないが、かなり動揺している。
と、突然…
いつもレーダー画面として大活躍のメインスクリーンが真っ青に
なり、奇妙なメッセージが現れた。
『一般保護違反です』
ブリッジにいる誰もが唖然とした。
そこへ、女性が二人同時に現れる。
一人は…
「私、あなたのために何か出来ることはないかしら!?」
愛に生きる術を未だ探し求める女であり、もう一人は…
「大変なの! 赤ちゃんが、赤ちゃんが光線を出したの!!」
夢に生きるとみせかける魔性の女だった。
「何? シンクロできない? もしもし、もしもしぃ!!」
と、声を荒げたロディだが、突然その勢いをなくす。
何故なら、一旦切れた艦内通話の受話器から大変色っぽい美声が
返ってきたからである。
<<あらキミ、かわいい声ね?>>
あまりに唐突な展開に、目を白黒させるロディ。
だが、いつもの事さ… と肩をすくめる。
「…は? またかスコット、ジョークなのはわかった。でも、今は
ふざけてる場合じゃないだろ!」
<<? 何言ってるの? ふざけてるのはそっちの方じゃない?
『わかってて』言ってるんでしょ?>>
やっぱり声に艶がある。
これは…!?
そうだ! 冗談なんかじゃないっ!
苦節14年、ついに、ついに主人公である俺にもっ!!
先程まで特有の太い眉を険しくひそめていたロディだが、自然に
顔がほころぶのを抑え切れなくなった。
<<そんなことよりも、ねぇキミ、お名前は?>>
「あ、あの…」
でれでれロディ。すっかり「大きなジミー」状態である。
「お、俺、いや、僕ロディです。ロディ=シャッフル」
これはひどいわね…
ドタバタするクレア・ペンチ・マルロ・ルチーナのそばで、一人
ホルテは落ち着いていた。
Jr達が風邪をひき、熱を出していたのである。
それだけなら可愛いものだが、どうも熱が出ると触角が生えて、
あたり構わず破壊する怪光線まで出してしまうようだ。
ククトニアンであるホルテは当然この事を知っていたのだろう。
おチビさんに子守りを任せるからこういうことになるのよ…
確かに、マルロとルチーナは怪光線を面白がっていたのである。
ただ、光線が光るおかげで、停電の暗闇の中でも無事医務室まで
連れてくる事が出来た。
ところが…
「ここも停電?」
電源の切れた医務室の自動ドアを開けるには、ホルテ一人だけの
力では無理だった。マルロが手伝ってやっと開く。
真っ暗な医務室の中に入った途端、クレアが何かを思い出す。
「…まさかっ!? ペンチ、お願い!! 見てきて!!」
叫んだクレアの気持ちは、この時ペンチにも充分わかっていた。
「はい! ちょっと見てきます!」
<<ふぅん… ロディ君かぁ… 歳はいくつ?>>
「じゅ… 18です!」
何故か咄嗟にそう答えるロディ。
<<嘘ついても駄目よ? オネーサンにはお見通しなんだから…
そうねぇ、年の頃で言えば14〜5歳ってとこかしら>>
「あ、その、当たりです。まいったなぁ…」
しどろもどろなんてもんじゃない。
「おいロディ、連絡はついたのか!?」
「うるさい! 黙ってろ! 今いいところなんだから!」
「は?」
「ああ、いや、何でもないよ、バーツ」
<<ふぅん… ねぇ、ロディ君、こーゆー電話って、はじめて?>>
「いや、あの、そのぉ… あなたみたいな素敵なオネーサンと話す
のは初めてで…」
<<そう? お世辞でも嬉しいわ! でも、さっきからどことなく
ソワソワして… キミって、カ・ワ・イ・イ!>>
ガチャン!
「何するんだ、バーツ!」
バーツがロディから受話器を奪い、艦内通話器に戻した。
「繋がらなかったんだな?」
勢いをそがれ、そっと目を伏せるロディ。
「繋がらなかったんだな、ロディ!?」
「あ、ああ。切れたんだ…」
「いや、違うな…」
バーツの見解は既に固まっていた。
「まさかロディ、自分だけいい思いをしようとしてたんじゃ…」
「そ、そんなことないさ! 俺だって今懸命にスコットを…」
「じゃあどうしてスコットに自分の名前を名乗ったんだ?」
「それは…」
この動揺で確信するバーツ。彼には全てお見通しだったのだ。
「てめぇ! 一人だけおいしい間違い電話受けやがって!!」
「どうしてライブラリールームの予約録画用の予備電源まで落とし
たんですかっ!?」
ペンチが血相を変えてブリッジに怒鳴りこんできた。
「クレア、とっても怒ってましたっ!!」
「まさか今日が『ヤンヤン』の日だったなんて、気がつかなかった
んだよぉ! 気付いていれば僕だってちゃんと電源は確保してたよ!」
もちろんクレアの観る番組はすべてチェックしていたスコット。
だが、ホルテと出会ってからチェックが甘くなっていたという事実
を改めて思い知ることになったようだ。
「まずいなぁ… まてよ? ペンチ、そんなに一所懸命に抗議して
いるところをみると、君も何か録画しておきたかったのかい?」
「そ、そんなこと…」
何故か番組名を口に出さないペンチだった。
ちなみに、予約録画出来ない事に、改めておびえている女の子が
もう一人。
「そんな! 今日やっと獣を超え、人を超えて神になるというのに!」
思わず叫んでしまうカチュア。
困ったわ! 前の再放送は3年前だったし今を逃すと今度はいつ
観られるか… こうなったら自転車こいでモーター回して発電を…
よーし、やってやるわっ!!
「ああっ! 持ち場を離れるな、カチュア! もう、みんなビデオ
くらいでごちゃごちゃ言わないでくれよ!」
スコットがキレかかった瞬間、予約録画でない話題が持ち上がる。
「ちょっとキャップ! どうしてくれんのよ!」
今回初お目見えのマキ、何やら荒れている模様。
「ど、どうしたんだよ、マキ!」
「停電になるんなら早く言ってよ! アタイ、頑張って3−2まで
行ってたんだよ!?」
「はぁ? 『さんのに』って、何?」
露骨なまでに呑気なスコットの返事がマキの神経を逆撫でした。
「マリオよ、スーパーマリオ! せっかく新記録だったのに、どう
してくれんのよ、キャップ!? あんた、スーパーマリオで3−2
まで行けるのっ? えっ!?」
「君ねぇ… この非常時に一体何やってたんだ!?」
「今日はアタイ半日休暇取ってたでしょ!? ちゃんとキャップに
だって連絡してあったじゃない!」
「そーゆー問題じゃなくてっ!」
「スコット! なんで洗面所まで停電にさせたんだっ!?」
「今度はバーツか…? 勘弁してくれよ!」
「それはこっちのセリフだぜ! ドライヤーが使えなくなったら、
どうやってこの髪直すんだよ!?」
「案外まともな理由だなぁ。それは悪かったよ。それにしてもどう
したんだ、その髪? 修理箇所に顔を突っ込んだりしたのかい?」
「…ちょっと、ロディと取っ組み合ってきただけさ」
「? ちょっとって… 何かあったのか?」
「な〜んもねぇよ」
「キャップ!? アタイのはまともじゃないっての!?」
「ひどいわ! クレアに言いつけるんだから!」
「あのう、レーダーに反応が…」
申し訳なさそうにフレッドが割り込んだ瞬間、艦が大きく揺れた。
敵襲だった。XU−23aとかいうやつのお出ましである。
バイファム達が颯爽と出撃する。とはいえ…
<<ほんとに戦闘の少ねぇダイジェストだぜ>>
<<まったくだ。来るぞ、バーツ… どうした!?>>
<<あんまり張り切っても、どうせすぐ戦闘終わっちまうんだから>>
ロディとの会話に興ざめするバーツ。
まだ間違い電話の事をネに持っているようだ。
その通り、とある一声で戦闘は終わったも同然になる。
<<敵艦は主砲を撃ってくるつもりよ! 全速で回避して!>>
ふふっ、素敵よ私! こんなに的確なアドバイスが出来るなんて!!
修理箇所を追いかけるうちにいつの間にか船外活動中の、ウェア
パペットを着込んだルービンは、思わずニヤリ。
そしてこれを聞いていたカチュア、ボギーに迅速に指示を飛ばす。
「ボギー、最大出力で加速っ!」
<<加速に対するデバイスドライバが組み込まれていません>>
「最大出力よ! お願い、ボギー!」
<<バスエラーが…>>
「加速って言ったら、か・そ・くっ!!」
大迫力のカチュア。
無理もない。ジェイナスの故障とボギーの絶不調が、週に一度の
彼女のひそかな楽しみ、予約録画をパーにしてしまったのだから。
その怒りたるや…
<<…了解。最大出力で加速します>>
一瞬でもボギーを正常動作させる程である。
<<ちょ、ちょっと待って…>>
<<お、おい、まだ…>>
どれくらいの時間が経ったのだろう。
気がついたカチュアは突然春が来たような錯覚に陥る。
「エアコンが直ったのね?」
素直に両手を挙げてガッツポーズのカチュア。
未だジェイナスのあちこちにへばりつくRV&ウェアパペットの
存在にはまったく気付かないようだ。
「え? 赤ちゃんはどうなったかって? ホルテさんは、育児にも
その才能をいかんなく発揮して… ということさ。まさか、首を
羽交い締めにして… なんて言えないしね。ま、まあ、Jr達の
熱も下がったし、これにて一件落着… って、なんてことをして
くれたんだ! ジェイナスの中は怪光線に破壊されてボロボロじゃ
ないかっ!! エアコンが動いているのが不思議なくらいだ!!」