銀河漂流バイファム13
へなちょこストーリーダイジェスト
第5話


「赤ん坊が二人も増えてしまった。あれほど帰して来いって言った
 のに、どうしてもみんな嫌だって言うんだ。まったく、マルロや
 ルチーナだけでも大変だっていうのに… それより、バーツの奴、
 よくも僕の大切なジョークショーチケットを破いたな! そっち
 の方が、今思えば頭にくるぞ!」

総員奮戦せよ!
恐怖の子育て戦争!

 一同はまだ格納庫にいた。
「おにいちゃんですよぉ! げんきですかぁ! はいよくおへんじ
できましたぁ!」
「おねえちゃんですよぉ!! げんきですかぁ!! は〜い、よく
おへんじできましたぁっ!!」
 マルロとルチーナが小枝で赤ちゃんをツンツンつつく。
 その赤ちゃん、ようやく目が覚めたと思うと…
「びぃ〜えぇ〜〜ぇぇ〜〜!!」
 惑星を真っ二つに切り裂きそうな程の大声で泣き始めた。
 決してたとえ話ではない。
 本当に床が、壁が、すべてのものが激しく振動していた。
 皆が耳を塞ぐ。不協和音が辺り一面に響き渡っているのだ。
「おい、スコット! どうすりゃいいんだ!?」
「何だって? バーツ、聞こえないよぉ! うどんが食べたい!?」
「どうしたのスコット、なんて言ってるの? はっきり言ってよ!」
「は? クレア、君、なんて… 白鳥が飛んでる?」
 普段のジョークより数倍面白いのだが…
 耳を塞いでいて、互いの声など聞こえるはずもない。
 ついでに目も塞いでいる。かなりの空気の振動ということだ。
 さらにこのままでは、当然ジェイナスも持ちそうに無い。
 耳と目を塞いでいる一同で、真っ先にそのことに気づいたのは、
やはりバーツだった。こういうときは頼りになる男である。
「まずいぜ、スコット! 壁にひびが入り始めた!」
 キャプテンとロディの耳をグイッと引き寄せ、大声で叫ぶ。
「な、何とかしなきゃ! とにかく医務室へ!」
 負けじと我らが主人公ロディも大声で提案してみるが…
「どうして!?」
と大声でスコットに返されては情けない。
「い、いや、何となくだけど…」
「これだけ泣くってのは、やっぱ病気なんじゃねーのか?」
 大声で言うが早いか、バーツは慌てて赤ちゃんx2の首根っこを
掴んで、患者用ベッドに乗せた。
「病気ぃ! そんなの困るよ!」
 やたらとスコットが大声であせる。
 してやったりのロディ。
 俺の言うことは間違ってなかった!
「だから医務室へ!」
「こんなんで大丈夫かよ!?」

 何だかんだで医務室の大きなベッドに寝かされた赤ちゃん達。
 そっと額に手をやるクレア。
「熱もあるみたい!」
 ぐっと口に手をやるバーツ。
「こりゃやっぱり病気かなぁ!?」
「病気!? 大変だっ! どうすればいいんだぁ!! まだ僕達は
若いんだぞ! あれもしたい! これもしたいぞ! まだ女の子と
文通だってしたことないんだぞ! それをこんなところで… あっ」
 さんざん騒いでいたスコットは、突然その場に座り込んだ。
「おクスリを投与しました」
 澄ました顔であっさりとやってのけたのはカチュアだった。
「そいつはナイズな発想だぜ、カチュア! おいケンツ、キャップ
を風呂にでも連れてって頭を冷やしとけ」
「アイアイサー!」
 スコットを担ぎ出すケンツ。騒ぎ出すと手に負えないのは、彼に
対するクルー一同の一致した見解だった。
 バーツのお褒めの言葉に気を良くしたのか、主人公には苦手な、
現状打開のための策をカチュアが提案する。
「じゃあこの子達にもおクスリを…」
 その言葉を耳にした瞬間、一同が提案者に飛びかかった。
「ちょ、ちょっと待って!!」
「そんなことしたら赤ちゃん別の病気になっちゃうよ!?」
「無駄だ! 死んでも仲間の居場所は教えないぜ!」
「成長期の子どもへの安易な薬物投与は毒でしかないわ!」
「何言ってんの?」
「いーや、こいつら絶対敵のスパイだ!」
「お前、スコットはちゃんと風呂場に放り込んできたのか!?」
「あかちゃんしんじゃうの?」
「しんじゃうの!?」
「そんなことねーけど、やっぱおクスリってのは違うんじゃねーか?」
「じゃあどうすればいいというの!?」
「こいつら腹減ってんだよ! ずっとなーんも食ってねーんだろ!?」
 単純明快な答えを導き出したのは、意外にもシャロンだった。
「ほれ、やっぱそうだ」
 彼女には指を吸わせるだけでわかるらしい。
 クレアがその意見に真っ先に賛同する。
「それじゃあ、やっぱりこの子達にはミルクかしら?」
 …ミルク?
 その言葉にバーツとロディがきちんと妄想した。
「そんじゃあミルクが出来るまでに、お風呂入ろうなぁ!」
 …お風呂!?
 その言葉にバーツとロディがきちんと反応した。
「みんなで入るわけじゃねーよ! こいつらだけで入れるんだから」
 …チッ!!
 その言葉にバーツとロディがきちんと悔しがった。

「こいつら、男の子ジャン!」
 風呂場で服を脱がせた時、シャロンがみんなに2人の赤ちゃんの
「しっぽ」をお披露目した。
 こんなのには負けねーぜ!→3人。いい勝負じゃねーか!→1人。
 かっわいーっ!→3人。ちっちぇーな!→2人。やべっ!→1人。
 などなど、いろいろな思いが交錯する中…
 パタパタ… パタパタ…
「何だ? この音…?」
「ケンツ、また何かやらかしたな?」
「俺じゃねーよ! 何でもかんでも俺のせいじゃねーっての!!」
 またも妙な音がする。
 シャロンの持っている方の赤ちゃんの背中を見て、ロディが叫ぶ。
「何だ! この…」
「この子達の持ち物、しっぽだけじゃないわ!?」
 カチュアが激しく割り込んでまで叫んだものは…
「ほんとだ! 羽根まで生えてるジャン!」
 やっとシャロンも気付いたらしい。
 いや、誰もがすぐに気付くはずのことではあるのだが。
 この赤ちゃん、二人揃って小さな羽が生えている。
 だが、彼らにはあまり重要な事ではないらしい。
「ま、いーか。おい帽子! 風呂と酒は人肌がいいんだぜ!」
 帽子、かぶってないよ…
 ジミーは言いたいことを我慢し、黙々と40度の湯に水を足す。
 ところが世の中には常に反対意見というものがつきまとうものだ。
「そんなことないわ! 40度が適温だって、おばさんが言ってた
もの!」
 ペンチである。
「なんだよ! 俺の経験が信じられねーのかよっ!?」
「あなたにはちゃんとした経験があるっていうの?」
「…ガキんちょ扱いしてもらっちゃ困るゼ!?」
「不潔よ! そんな歳でそんなこと!」
「ば〜か、オレはよく預かってたことがあるだけだぜ? 何が不潔
なんだよ!? これって花嫁修業ってやつジャン!」
「…わ、私だってその花嫁修業を積んでるのよ!」
「へぇ… 誰の為に、かな?」
「兄さん、そんなこと聞くのやめてよ!」
「何ぃ!? お前だっていつも俺の好みのタイプとか聞いてくるじゃ
ないか!」
「じゃあペンチとの交換日記、勝手に読むのはやめてよ!」
 いつもの兄弟喧嘩は放っておいて、いよいよ風呂に入れる。
 あまりに汚い赤ちゃんだが、やがて汚れが落ちてくると…
「髪の色が…」
「うつりにけりないたずらに… くしゅん!」
 <湯船にずっと浸かっていた>スコットが目を覚まし、どうでも
いい事を口走る。多少は頭が冷えたようだ。
「お、キャップのお目覚めだ」
 自分のしたことを棚にあげ、随分と調子のいい事を言うバーツ。
「おおっ! その赤ちゃん羽が生えてる!」
「ば〜か、今はもう次の話題だよ。この子、髪が緑色ジャン!?」
 スコットをけなした後、シャロンがまたまた赤ちゃんを湯船から
持ち上げる。
「さすがに天然パーマはかかってないな」
「あったりまえだろ!」

 風呂上がり。
 さっぱりした中での赤ちゃんx2のお食事はやっぱりミルク。
「補給物資の中にはほ乳びんは含まれていません! 何があろうと
絶対にありません! 1000ドル賭けませんか!? お支払いは
電子決済で…」
「…って、ボギーが力説してたよ?」
 フレッドが自信たっぷりに報告する。
 と、ひらめいたシャロン。ケンツや他の男子達に指示を出す。
「ケンツ、オマエスプーンを探して来いよ! 他のみんなはおしめ
探してこい!」「なんで俺が!?」「いいから!!」「チェッ! 
俺にばっか言うなってのによぉ…」
 二人の掛け合い漫才華やかなその時、クレアは一人でぼやく。
「あんなにたくさんかっぱらってもらってきたのに…」
 言葉とは裏腹に、彼女は他の事で残念そうだった。
 はぁ… このあたしが、アイドルの追っかけも出来ずに、こんな
パタパタ赤ちゃんの子守りだなんて…
 マルロとルチーナだけでも大変なのに…
 でもっていずれこの子達が大きくなったら「おいババァ金出せよ!」
とか言って、か弱い母親代わりのあたしを踏みにじるんだわ!
 まったく! 一体親の愛情を何だと思っているのかしらっ!?
 男の人もそうよ! 勝手に家の外で赤ちゃん作っておいて(?)
いざあたしが嫌になったら別れろ切れろ!? ひどいっ!!
 そうよ! いつも泣くのは女の方なんだからっ!!
 …彼女にとっては両親と再開するということと同じくらい切実な
問題のようである。
 そんな妄想の最中に、ケンツの思い付きから、
「おっぱいからやりゃいーじゃん! クレアだったら…」
などと、その視線と共にクレアに話題を集中したからたまらない。
「そんなのないわ! あたしはこれでも一所懸命やってるのよ! 
寝る間も惜しんでの掃除洗濯、食事だって結局あたしがいろいろと
指示してるんじゃない! マキはデキてるし、シャロンはフーテン
だし、ペンチは本読んでばかりだし、カチュアは暗いし、ルチーナ
なんて自分のパンツも洗えないじゃない! もうたくさんだわ! 
あたしだってまだやりたいことばかりたくさんあり過ぎて机の前に
なんてじっとしていられない年頃なのよっ!! それなのに、それ
なのに… あっ」
「おクスリを投与しました」
 さすがはカチュア、穏便に事を運ぶためには手段を選ばない。
「よし! ナイスだぜカチュア! ホラ、オマエらとっとと行って
来い!!」
 シャロンに放り出される男子達。もちろんずぶぬれのスコットも。

 ほ乳びんがなく、とりあえずスプーンでミルクを飲む赤ちゃんx2。
 美味しそうに飲んでいるその時…
「40度って書いてあるわ!」
 突然大声を張り上げて現れたのは、たくさんの本を抱えたペンチ。
「ほら、この本にお風呂の温度が書いてあるでしょ…!」
「あ、ちょっと見せて?」
 カチュアがそのうちの一冊を奪い取る。
「…昔々あるところに、太陽系外から来た仲の良い兄弟がいました。
ある日弟は大きな大きな青い神様と一緒に… これは?」
「間違えたわ! こっち!」
 慌てて本当の育児書を渡すペンチ。
 ここで緑の髪の少女が目を光らせていたことには気付かなかった。
「さすが本の虫だわ! 長い詩ばかり書いてるわけじゃないのね!
私、説明書なんてよく読まないから眼鏡なんて必要ないし」
「でも、説明書もきちんと読んでても、いきなりシャトルを動かす
ことなんてできないわ! だって普通の女の子ですもの!」
 目を合わせ、笑い出す二人。これだから女は…
「お前らに付き合ってらんねーよ!」
 シャロンも怒って出ていってしまうわけだ。
 もう京言葉まで飛び出しての言い合いの最中、カチュアがある事
に気付く。
「あら? そういえば、ミルクをあげるためのスプーンは?」
 さすが、観察眼は天下一品である。だが、自分の手で握っていた
はずのもの、いくらなんでも気付かないはずはないのだが…
「無いわ、本当にどこへ行ってしまったのかしら?」
 同様にペンチも驚く。目の前から忽然と消えたのだから。
「と、とりあえず、代わりのスプーン持ってくるわ!」

「タオルでいいだろう。おしめなんかもタオルでいいんじゃないか?」
 かなり適当な対応。これだから男は…
 そこへ、敵の遠距離からのビーム攻撃。
「うわぁっ!!」
 ドサッ!!
 ロディ達の眼前に現れたのは、男の子一同の夢が目一杯詰まった
欲望の権化! 艶やかな女性達の美の集大成! 有史以来の文化の
最終形態! はぁ、はぁ… ともかく、それはそれはありがたい、
大量のエロ本だった。
 買えば何十万ドルもすると思える程の膨大な数のエロ本に囲まれ、
いたく御満悦の3人。
「そうか、こっちにもあったのか。前にやっこさんが溺れてたのは、
あっち側の棚からのやつだったからなぁ…」
 やけに冷静な分析をするバーツだったが、ただでさえタレ気味の
目尻がさらに変化しているところからして、内心穏やかではない。
「あっちの棚になかった○○○の続き、あるかなぁ?」
 マニアックな話になるロディ。そんなことだから、主人公なのに
あまり使ってもらえないのだ。
「兄さんずるいよ! この前僕にそれ探させておいて自分は他のを
見てたじゃないか! おかげで僕が見たいのが探せなかったんだから!!」
 やけに向きになるフレッドだが、兄の事情も良く分かっている。
欲望を満たすためには互いに兄弟をも使う。やはり血は隠せない。
「俺の方が先に言い出したんだから、お前のは後回しだ!」
「おかしいよそんなの!」
 兄弟喧嘩の続くこの状況下で…
「って、そんなこと言ってる場合じゃないぜ、ダンナ!」
 まず、エロ本片手にバーツが正気に戻る。
 ここらあたりがやはりロディとは違う。経験は豊富な方がいい。
「ブリッジへ急ごう!」
 我らが主人公ロディの勇ましい台詞も、
「ねえ、タオル(とこの膨大な数のエロ本)は!?」
という弟の問いかけで台無しになる。
 ご機嫌斜めのロディはぶっきらぼうに答えるしかなかった。
「お前が運ぶ(だけじゃなくて、○○○も探しておく)んだ!」
「うん、わかった(けど僕のお目当ても一緒に探して)よ!」
「ちゃんと運んで(おいたあとは○○○を探して)おけよ!」
 いつまでやってんだよ、この兄弟は…

「何で風呂なんかに入ってたんだろう?」
 悩みの解決しないスコット。一糸纏わぬ姿で部屋をウロウロして
いるのにはわけがある。
「あー、替えの服は洗濯に出してるし… そうだ!」
 クローゼットを開けた途端、目に飛び込んできた衣装に対して、
急ににやける我らがキャプテン。
「ひとつ、試してみるか?」
 ルンルンステップで天国に行ってしまいそうな程のはしゃぎよう。
 手際良く着終わって、やっぱりニンマリ。
 バーツくらいにはウケるかなぁ…
 そこへ、敵の遠距離からのビーム攻撃。
 大きくひっくり返った艦長としては、まずブリッジが頭に浮かぶ。
 使命感に後押しされたスコットは、もう部屋を飛び出していた。

「みんな、大丈夫か!」
「ああ、どうやらおさまった… って?」
 振り返った途端、バーツもロディも仰天した。
「何だそのカッコは!」
「君こそ大丈夫か?」
 真剣に心配する二人。
「もちっと他になかったのか?」
「いくら何でもそれは…」
 彼ら、いや、ブリッジにいた全てのクルーが心配になるのも無理
はない。
 顔は確かに我らが艦長、スコット=ヘイワードだった。
 だが、風呂場で濡れた服を脱いでいるスコットの服装は、タオル
でごまかす等という半端なレベルではなかった。
 白のブラウス。やけにリボンが可愛い。
 真っ赤なミニスカート。薄くチェックの柄になっている。
 合わせて真っ赤なハイヒール。ピカピカに磨いてある。
 さらに、ご丁寧にストッキングまではいている。
 そう、彼は今、女装した変態そのものだったのである。
「いくらジョークがウケないからって、なぁ…」
「スコット、そこまで思い悩んでいたのか?」
 哀れみの混ざった虚ろな眼差しが、今のスコットには痛い。
「み、みんな、何か勘違いしてないか? その、これは今度…」
 動揺している艦長を、バーツが優しくなだめる。
「みなまで言うな、スコット。誰だってそういう時はあるさ」
 彼にはお見通しなのである。伊達に歯が欠けているわけじゃない。
「あたしはないけど… でも、大丈夫よ? みんな仲間じゃない?」
 クレアも心配そうに、だが力強くリーダーを励ます。さすがは、
カチュアにおクスリを打たれた者同士である。
「スコットさん、僕、信じてるから」
 フレッドは、こういう人物を見るのは初めてだった。
 後の宴会芸を彼に学んだことになる。
 などなど、やけに親身になって庇ってくれるクルーにスコットは
逆に恐怖を感じることとなる。
 いつもだったら「馬鹿!」とか「変態!」とか言うのに…
 みんな、どうしちゃったんだぁ!?

「ねえスコット、この子達お願いね?」
 まだ女装姿の彼に、子守りを任せて皆が各々の仕事に戻る。
 これでスコットの病んだ心が癒されればいいんだけど…
 赤ちゃんもイルカと一緒にされてはたまらないのだが、暇なのが
スコットだけなので仕方ない。
 最初嫌がったスコットも、徐々にその魅力に取り付かれていく。
 君達は僕を変な目で見ないんだね?
 ジョークもわからないんだろうけど。
 でも、何だか…
 こういうのも、いいかな…
 やはり疲れていたのだろう。思わず眠ってしまう。
 オルゴールの緩やかな調べとも相まって、スコットはひとときの
安らぎを得ることが出来た。
 ところが…
「みんな至急来てくれ! 赤ちゃんが、赤ちゃんが消えたっ!!」
 何だよさっき任せたところじゃないか、とみんなして文句の合唱。
「ここにいないのは… ケンツとシャロンだわ!」
「あいつら子連れで駆け落ちか!? あ、シャロン?」
「何? ガキんちょがいない? どうせそこらへんでころがって…」
 しゃがみこんで、遠くに転がっていた赤ちゃんを指差し、疑いを
あっさり晴らしたシャロン。
「お、いたいた… あれ? それでも一人だぜ?」
<<大変だ! みんな、すぐ来てくれ!!>>
 間髪入れず、ケンツの声である。

 というわけで今度は格納庫。今日のクルーは忙しい。
「うげっ!」
「何だぁ!?」
 先にたどり着いたロディやバーツ・フレッド・クレアの目にまず
飛び込んで来たのは、すっかり装甲が無くなりフレームむき出しの
トゥランファムだった。
「へぇ、こんな風になってるんだ? ケンツがばらしたの?」
 呑気なフレッドに軍曹は腹を立てた。
「馬鹿! 俺じゃねーよ! 第一俺が貴重な戦力をわざわざばらす
かよ! ホラ、あいつだっ!!」
 ケンツが指差す先、トゥランファムの顔面当たりに、何やらウロ
ウロする影。
「ああっ!!」
 皆その影の正体を知って、驚きを隠せない。
「あいつ、トゥランファムを食ってやがるぜっ!!」
 バーツが指差したあいつとは、拾ってきた赤ちゃんの一人だった。
 そして、彼の言葉通り、赤ちゃんは一心不乱にトゥランファムを
食べ続けていた。
 実に美味しそうに食べるその様は、皆驚く以上に感心するばかり。
「キーーーーーン!」
 眼鏡っ子ペンチが、もう一人の赤ちゃんを抱いて走ってきた。
「ペンチ、それはちょっと…」
「だってカチュアがやれってうるさいから…」
「私、何も言ってません」
「まあ! あの子、鉄を食べるの? そうか、だから…」
「スプーンが無くなっていたのね!?」
 強引に割り込んで説明するカチュアの影で、ペンチはそっと眼鏡
を外した。
「やばいぜ! このままだとラウンドバーニアン全部食われちまう!」
 と、その時…
 赤ちゃんは何故かミルクのなべを持ってきたジミーに飛びついた。
 そして最後に現れたシャロン。
「おい、これ使えよ!」
 それは、ほ乳びんの代わりとなる、ゴム手袋の改造品だった。
「おーおー、なんか喜んで吸っちゃって、このぉ!」
「ゴムは食べないみたいね!」
 ようやく満腹になり、機嫌良くパタパタ飛び回る赤ちゃん。
 まるで天使のようだ。油まみれになっていなければ、だが…
「この子達、ミルクを飲ませていれば大丈夫なんじゃないの!?」
 やっと台詞の回ってきたマキ。
 だが、問題山積みの状態で、素直に喜べるはずはなかった。

「こうして、邪魔なトゥランファムは1機減った。喜んでいいのか
 どうか… ともかく、このパタパタ飛んでるおチビさんが邪魔な
 存在なのは確かだ。もし何でも食べるのなら廃品回収なんて利用
 しなくてもばっちりだ。それにしても、みんなひどいよ。僕の事
 変態扱いして! 第一、どうして僕は服を来たまま風呂に入って
 いたんだ? まさか、それも変態の兆候…!? うわぁっ!!」