銀河漂流バイファム13
へなちょこストーリーダイジェスト
第4話
「謎の男女からのメッセージを聞いた僕達は、その扱いに苦慮して
いた。でもペンチはあれからケロっとしているし、クレアだって
相変わらずあの人絶対かっこいいわってうるさいし、僕としては、
どっちかというとメッセージの事は忘れた方がよさそうだ。それ
よりトゥランファムだよトゥランファム! みんな責任取れ!」
双子の赤ちゃん!
神様からの贈りもの?
ドッカーン!
ヒュー…
ドサッ!
「な、なにやってんだよ君たちは?」
大慌てでキャプテンシートから立ち上がるスコット。
太平の眠りを覚ます衝突音は、2台のカートが生み出したもので
ある。
カートのうちマルロの運転していた方が通路を越えてブリッジへ
進入、キャプテンシートの裏側に激突したのである。
手前でカートがスピンしたルチーナもマルロの車に激突し、二人
並んで何故かスコットの座るキャプテンシートに飛び込んだ。
というわけで、驚いて立ち上がったスコットなのである。
「二人揃って何だいこの騒ぎは!?」
「えへへ… いまルチーナと二人で…」
「レースやってたの! でもマルロがぶつかってきて!」
「モナコはみちはばがせまいからぬきづらいっていっただろ!?」
「そーゆーあんたこそむりなはばよせしてきたんじゃない!!」
「でもスピンしたのはそっちじゃないかーっ!」
「マルロだってブレーキつかってないじゃない!」
「ちがうよあれはエンジンブレーキっていうんだよ!」
「なによへたくそ!」
あらためてスコットが通路を見渡すと、あちこちにカートの車体
が擦ったと思われる傷がそこかしこに残る。
「はいはい、二人ともピットイン!」
「はーい…」
「まったく、やるなら落書き廊下だけにしてくれよ」
頭を掻くスコット。これでフケが出なければよかったのだが。
「うえっ、きったねー!」
シャロンの一言が、しょげ返っていたマルロとルチーナを後押し
した。
「わぁ、おにいちゃんきったなーい!」
「おふろはいってんのかな?」
これらの罵詈雑言は著しくスコットを傷つけた。
「さ、さあ! あっち行って遊んでて! 僕達は仕事で忙しいの!!」
それでも一応おチビさんへの態度はわきまえているのだが。
この甘さが幼い二人を助長させた。
「おしごとぉ?」
「どんな?」
「てきがきたの?」
「ママとパパにあえるの?」
「ちがうの?」
「いつあえるの?」
「わかんないの?」
「おにいちゃんがいちばんえらいんでしょう?」
「としよりなら、いちばんえらいよ?」
矢継ぎ早に質問を飛ばすチビ二人。
マシンガントークに流されつつも、スコットは「年寄」の一言を
聞き逃すことだけはなかった。さすが「年寄」である。
「そうだ!」
キャプテンの苦悩ぶりに見かねたのか、バーツが割り込んだ。
「そろそろおやつの時間じゃねーのか? クレアのところへ行って
みな?」
「さっきたべたよ?」
ちっ!
「じゃ、じゃあ、お昼寝の…」
「さっきねたよ?」
な、なに…!
「それじゃあ遊んで来いよ!?」
「いまあそんでたよ?」
こなくそ…!!
食う・寝る・遊ぶの全てをこなされているので、バーツとしては
他にいう事はない。
何か手はないか…?
思案するスコット。これ以上仕事の邪魔をされてはたまらない。
「そうだ! クレア達のところへこれを持っていってくれないか!?」
チェックのズボンのポケットから、一枚の紙切れを取り出す。
「いや、誰でもいいから渡してきてくれ! いいね!?」
本人曰く、まさに起死回生の素晴らしいアイデアだった。
「うん! おしごとおしごと!」
張り切って出て行くマルロとルチーナ。
「何渡したんだ、スコット!?」
ようやく我らが主人公ロディが問いかけるが、スコットは笑顔で
知らん振り。
「あのね、クレアおねえちゃん、これ…」
勢い良くドアを開けたのがまずかったのか。
クレアはヘッドフォンで何か録音したものを聴いていたらしい。
「誰っ!?」
振り向いた瞬間に、クレアの頭部に引っ張られたヘッドフォンの
プラグが抜ける。
「僕の名は…」プチッ。
尋常ではない素早さでステレオコンポの電源プラグを抜くクレア。
息遣いが荒い。
二人の方を見ず、その場でうずくまる。
ピクリとも動かない。
だが、たとえ乳幼児と言えど、その背中から「殺気」というもの
を感じ取れないはずはない。
何も言わず、マルロとルチーナはそっと部屋を後にした。
「カチュアおねえちゃん!?」
ライブラリールームに閉じこもるカチュア。
何やら調べものに余念がない。
「おかしいわ… どこにものってないなんて…」
「ねえ、何してんの、カチュアおねえちゃん!?」
「お願いだからちょっとあっちいってて。ね?」
「はーい…」
シャロンとペンチは補給物資の片づけをしていた。
「おねえちゃん! ねえねえ、これみて!」
倉庫の奥から胡散臭そうにシャロンが顔を出す。
「わたしてこいって、スコットおにいちゃんが」
「何だこりゃ?」
受け取るか受け取らない内に、シャロンはマルロに紙片を返す。
「こんなもんいらねーっての! あっち行った行った!」
トボトボと立ち去る二人を見て、同じく倉庫にいたペンチが同情
の念を抱く。
「ちょっと、かわいそうじゃない!?」
「いいんだよ、ガキもキャップも甘やかしちゃいけねーんだよ!」
この後十数分にわたる激論が繰り広げられるのだが、不毛なので
カットするしかない。
「そういえば、このかみなんてかいてあるのかなぁ?」
「さあ… あ、ジミー、これよんで!?」
今度は菜園にやってきた二人。
ジミーはじょうろを置き、その紙片を受け取るが、しばらくして、
「僕、いい…」
と、内容を教えずにマルロに返す。
どうしておしえてくれないんだろう? と悩む二人の足元へ…
「きょえーっ!」
「ナメクジだ…」
ジミーの指摘通り、ナメクジが数匹徘徊していた。
ちゃんとしゃがみこんで確認するジミー。
「最近、虫が多いんだ… 少しは除虫した方がいいかな…」
振り返ると、二人は姿を消していた。
「パパやママにあいたいなぁ」
「ぼくもパパやママにあいたいなぁ」
行くところがなくなって、格納庫上側通路でブラブラするマルロ
とルチーナ。
「ナメクジきもちわるいし」
「ぼくもナメクジきもちわるいし」
「クレアおねえちゃんこわかったし」
「ぼくもクレアおねえちゃんこわかったし」
「あたしがあれにのれたらなぁ…」
「ぼくもあれにのれたらなぁ…」
二人が見下ろした先にはラウンドバーニアンがあった。
「あんたねぇ、あたしのまねばっかりじゃない!」
「ちがうよぉ」
「じゃあナメクジくらいなんとかしてよっ!」
「ルチーナだっていやがってたじゃないかっ!!」
「そんなこというんだったらマルロあれにのって、ナメクジたいじ
してきてよ!?」
「え?」
二人が見下ろした先にはラウンドバーニアンがあった。
「あれだったらナメクジくらいどーってことないでしょ!?」
「そりゃそうだけど、あんなのうごかせないよ…」
「ふ〜んだ! あたしだってクレアおねえちゃんと乗ったもん!
あのときマルロったらおひるねしてたじゃない!」
「クレアおねえちゃんと、のったの?」
「そーよ! おねえちゃん、まえにとくしゃにかとかいうところに
いて、あんなのうごかすのかんたんだっていってたもん!」
怒ったルチーナ、一人エレベーターに乗り込んだ。
「ルチーナ… よぉし!」
一大決心のマルロ。そうまで言われては男がすたる!
そう思って見下ろすと、やっぱりラウンドバーニアンがあった。
「その足じゃ駄目だな!」
ラウンドバーニアンに乗りたいと申し出てみるマルロだったが、
いきなりケンツに一蹴される。
「大して変わんないみたいだけど?」
対してマキが関西人顔負けの鋭いツッコミを入れる。
「何言ってんだよ! いざとなりゃあ月夜の晩に…」
「月なんてどこにあるのさ!?」
何か言おうとしたケンツをたしなめると、いつもと違う雰囲気に
気付くマキ。
「あれ? ルチーナは?」
「喧嘩でもしたんだろう、お前ら!?」
付け加えられたケンツの言葉にカチンときたマルロ。
「しぃらぁなぁいっ!」
と言いつつ、ケンツのしっぽを踏みつけた後立ち去った。
「地球軍からの信号をキャッチしました」
ボギーの連絡はいつも唐突である。
もう少し心の準備が欲しいものだとスコットは思う。
「地球軍から?」
もしかして! はしゃぐクレア。
もしかすると! はしゃぐペンチ。
もしかするかも!! 大はしゃぎのカチュア。
「これで助かるぞ!? フレッド、モニターに転送してくれ」
張り切るスコットは上の三人とは違い、至って普通の思いである。
「地球軍第三方面軍カールビンソンタイプ駆逐艦カーター号からの
救助信号をキャッチしました」
一瞬、駆逐艦と聞いて嫌な物が目の前をよぎった気分のスコット
だったが、敢えて平静を装う。さすがは年寄である。
がっかりする三人と首をひねる一人をよそに、バーツがさっさと
行動を起こす。
「とにかく、俺とロディで偵察に出かける!」
駆逐艦カーターとククト側の宇宙ステーションが、ものの見事に
突き刺さっていた。
辺り一面、というか一宙域、機動兵器やら何やらの残骸が浮いて
いる。
ロディがジェイナスからの通信を拾って復唱した。
「マルロがいないって?」
「どうせどっかで居眠りこいてんだろ?」
バーツの意見はいつもかなりの確率で当たっている。
そして、自らその意見が正しいことを証明することになる。
バーツの乗るネオファムの近くで、浮遊している機動兵器が爆発
した。
「うわぁっ!」
「バーツっ!!」
「あうっ!!」
…
静かになった。
不安になるロディ。
「おい、バーツ、しっかりしろ!」
返事がない。
「バーツ!」
やっぱり返事がない。
「バーーーーーーーーーツーーーーッ!」
「なぁに?」
ギョッ! その声にロディは思わずコケた。
時同じくして一斉にコケるジェイナスクルー達。
だが、一番驚いたのは、右頬に靴底の跡がくっきりついたバーツ
だった。
「なんだぁ? マルロ?」
ようやく目覚めると、目の前にいないはずの人物がいる。
超能力か? オーラパワーか? まさか、俺ってニュータイプ!?
んなわけないか。
「何やってんだ、お前?」
「ナメクジたいじしたくてこれにのってたらしまってねてたの」
…わけわかんねぇ。
そうこうしている間に、宇宙ステーション&駆逐艦カーターへと
辿り着く。
「ちょっと調べてみる… 艦内に呼びかけてみる!」
ロディは状況を調べるためコンピューター接続用RS−232C
コード、通称ウニョウニョを伸ばす。類似品にご注意を。
長さ約10mのコードは想像以上にフレキシブルに動き、ポッド
から「何たらスネークショー」のごとく自由にコントロール出来る
はずなのだが…
「あれ? うまく繋がらない」
「何やってんだロディ?」
「いや、旧作ではやったことないから… もちっと右かな?」
苦闘5分。イライラもたまりにたまる。
「こうなったら!」
まさしく奥の手! ロディはポッドからマニピュレーターを2本
伸ばす。
こちらも指の部分が2本しかない安っぽい仕組みの腕だが、その
うちポッドだけでもドムを6機くらいは倒せそうだ。
「こうやって、こっちか、このぉっ!!」
ついに苛立ちが大爆発したロディはキャノピーを開け、外へ飛び
出すとさっさと手でウニョウニョを繋いでポッドに戻る。その時間、
わずか10秒。ロボット物アニメーションの主人公ならではだ。
「どうだロディ! 何かわかったか!?」
まったく、ひとの苦労も知らないで呑気なもんだ…
主人公だったからよかったようなものの、危険なので皆様決して
真似をしないように。
「いや」
ロディは一人ふてくされる。
そんな態度を知ってか知らずか、バーツが鋭い言葉を返す。
「他の方も調べた方がいいんじゃねーのか?」
嫌がらせかこいつ!?
一瞬頭にくるが自分のウニョウニョ操作の下手さ加減を考えると、
何も言えなくなる。
「も、もういいよ… 勘弁してくれよ、バーツ?」
「あーっ、女の人!」
突然マルロが叫んだ。
「ロディ! マルロが女がいるって言ってるぜ?」
…わかったよ、やればいいんだろ、やれば!
やけくそロディ、のはずだったが…
え? 女の人? …よぉし、やってやるぜ!
彼の張り切り様は、ウニョウニョが一発で接続できたことからも
伺える。
「うわっ!」
<<どうした、ロディ!?>>
「こ、これ、聞いてくれ…!?」
<<うら、クソガキども! わいら放ってよーいんでくれたのぉ!
ぎょーさん礼させてもらうさかい、あんじょー覚えとれやぁ!>>
ブリッジ含め皆が驚いたのは無理もない。
呼びかけに答えてくれたのは、何故か今は亡きローデン大佐。
そう、皆で見限った「あの」ローデン大佐である。
ところが、驚くだけでなく、一同呆然としている。
同じ地球人であるにも関わらず、誰も彼の言葉がわからないので
ある。
「今のメッセージ、解読出来る?」
「はい、ボギー、解読して」
言葉のわからん地球人より言葉が通じるククトニアン。
さすがはカチュア。既に準備段階に入っていた。ところが…
「あの、キャプテン…」
「何だい、カチュア?」
「どうしても解読しなければいけませんか?」
「地球語のようだけど、方言がきつくてよくわからなかった。もし
かすると地球軍との接触に関する情報が含まれているかもしれない」
「はい…」
もっともな意見を突きつけられては仕方ない。カチュアは解読が
済んでいるはずのボギーにもう一つ指示を出す。
ようやくボギーがメッセージを読み上げ始めた。
「親愛なるうんちお子様達へ、私達をおいて良く立ち去って下さい
ました。謹んでお礼を申し上げます。私達の事を忘れないで下さい…
以上です」
「さすがローデン大佐! こんなメッセージを残しておいてくれる
なんて! 素晴らしく優しい心の持ち主だ!」
ふぅ… スコットのボケに胸をなで下ろすカチュア。
「だけどよぉ、『うんちお子様』って何だ?」
ぎくっ! ケンツの問いで、前回のペンチの気持ちがわかる瞬間。
「そ、それは…」
<<もう少し中を調べてみる>>
ほっ! ややこしい疑問を送信で遮ってくれたロディは、やはり
カチュアの心の友である。
「お前、あれが女の人か?」
コツンと頭を叩くバーツ、叩かれるマルロ。
それでも彼は喋ることをやめない。
「なんかひかった!」
「ルザルガがいるよ?」
「あかちゃんがふたりもいるんだ?」
「くうきがなくなる!」
もう一発叩くバーツ。
「信用なくすぞ、マルロ」
「バーツにいちゃん!」
「今度は何だよ? ロゴ・ダウの遺跡でも見つかったか?」
「おしっこ!」
さすがにこれだけは信用せざるを得ない。
ネオファムから文字通り飛び出す二人。
「こなくそっ! 寝る前に宿題と歯磨きとトイレは忘れんなって、
土曜の8時にいつも聞かなかったのか!? あっ!」
「うわー、バーツおにーちゃーん!」
お小水振りまきながら彼方へ消えていくマルロを見送り、いっそ
このまま帰ろうかという思いを抑えつつ追いかけるバーツ。
まさかその先で赤ん坊を拾うはめになろうとは。
マルロの予言はことごとく当たり、二人と拾った赤ん坊は、空気
のない部屋へと吹き飛ばされそうになる。
ネオファムにしがみつくバーツ。
バーツの背中にしがみつくマルロ。
「いいかマルロ、絶対離すなよ… って、お前どこ握ってんだ!?」
背中から少しずつずれるマルロにバーツが叫ぶが彼もその小さな
身体でしがみついているので、思うようにいくはずがない。
「うん、はなさない!」
「離せ、ちょっとでいいから離せって! イテテッ!」
「しっかりにぎってるよ!」
「お願いだから、あ、そこは、ああっ!!」
戦闘を長引かせているロディを心密かに憎むバーツだった。
ジェイナスに戻ったロディ、バーツ、マルロ。
特にマルロは上機嫌である。
「赤ん坊!?」
双子の赤ちゃんの入ったかごをみんなで取り囲む。
お疲れ様のバーツに、あることを思い出したマルロが話しかけた。
「そうだ、おにいちゃん、これ!」
「ん? 何だこりゃ?」
受け取った紙片は、「スコット=ヘイワード ジョークショー」
と書かれたチケットになっていた。
「こんなもん誰が受け取るんだよ…」
無情にもスコットの目の前で破いて捨てるバーツだった。
「まったく、バーツのやつ、どうして僕のチケットを破るんだ!
かなり時間をかけて蓄えたネタ満載の、超絶ビッグショーになる
予定だってのに! え? 赤ちゃん? しょうがないか。クレア、
ちゃんと育てて… 何だって? 当番制? 僕も組み込まれる!?
おいバーツ、すぐ帰してこい! 今ならまだ間に合うから!!」