銀河漂流バイファム13
へなちょこストーリーダイジェスト
第2話


「ローデン大佐との連絡があっさり取れてしまう。話の展開を焦る
 気持ちはわかるけど、せめてとうもろこしの葉っぱで出来た髭を
 つけるくらいのことはさせて欲しかったなぁ。結構人気があった
 のに。よぉし、それじゃあ…」

戦場真っ只中!
必死の逃避行!

「あ、ありがとうございますぅ!」
 ジェイナスの格納庫内で、スコットはローデン大佐に感謝の意を
表した後、走り去っていった。
「ん? どうしたのかね?」
 せっかく補給物資を届けたにも関わらず、いきなり走り去る艦長
に対して、無礼者とすら思ってしまってもあながち間違いではない。
 だが…
「彼、感動屋なんです」
 スコットの性格を適切に言い表し、不敵に笑うクレア。
 天下一品のフォローである。
「それじゃ」
 いや、それじゃって…
 わしらどうしたらいいの?
 ローデン大佐と他数名は、ブリッジに置いてけぼりをくらった。

「どうだった?」
 ブリッジの艦長席に座るスコット。
 いつになく真面目である。
「最高の演技だったわよ? でも、どうやらこれ以上絞り出せそう
もないわね?」
「これだけ感動すれば、もっと物資をもらえるかと思ったんだけど
なぁ…」
 クレアの報告に、スコットは腕を組み、首を傾げる。
 余程演技に自信があったらしい。
「だめよ。やっぱり実力行使でなきゃだめなんだわ…」
 クレアが低くて深く重い声でそうつぶやいた。
「き、君、なんか物騒なことを考えてるんじゃあ…?」
「あら? そんなことないわよ?」
 いたって普通に、彼女は気さくに笑いかけた。
 気をよくするスコット。こーゆーところは相変わらずだらしない。
「そうだ。ロディとケンツはあっちの駆逐艦に行ってるんだっけ?」
「大変だ! まだ兄さんがあの艦に!」
「いや、まだ何も起こってないんだけど」
 台本を見せつつ、キャプテンは勇み足のフレッドをたしなめた。
 納得した素直な少年に、クレアが耳打ちする。
「あのね、フレッド、今思い付いたんだけどね…」

「なんで閉めちまうんだよぉ! 俺達がまだ残ってるってのにぃ!」
 駆逐艦レーガンに取り残されたケンツが、悲壮感たっぷりに叫ぶ。
 台本通り敵の攻撃が始まったのである。
 そりゃそうだ。
 大きな艦が何隻も集まっているのだから、バレバレの状態だ。
 我らが主人公ロディも、一瞬途方に暮れる。
 が、名案を思い付いたのか、ニヒルにほくそ笑む。
「来い、ケンツ!」
「どこ行くんだよロディ!?」
「小型艇で脱出するんだ!!」
「小型艇って、どこにあるんだよ?」
「知らないけど、格納庫にでも行けばあるだろう!?」
「いや、案外ないかもしれないぜ!? 戦闘に使ってたりしてさぁ」
「じゃあやめるか?」
「ブリッジに行って大佐に話そうぜ!」
「ケンツ… お前、案外律義なんだな?」
「あったりまえだろ! 軍隊じゃ上官からの命令が最優先だぜ!」
「ここに残れって言われてもか?」
「…格納庫に行こう!」
 この勝負はロディの勝ちで終わった。

「あれ? フレッド、なんでこんなところにいるんだ?」
 驚くのも無理はない。
 駆逐艦レーガンにはロディとケンツしかきていないことになって
いるからだ。
「見学しにきたんだよ」
 にやりと笑う弟の真の理由を、兄としても気付くはずはなかった。
「ジェイナスとの通路が閉められたんだ! ボヤボヤしてたら俺達
取り残されちまうぜっ!? 何呑気な顔してんだよ!」
 まくしたてるケンツにフレッドも当然のせられる。
「うそぉ! で、でも、今行くとさ、そのぉ… あっ!」
 フレッドが見やる先には…
「ああ、すっきりした! ありがとう、フレッド… どうしたの?」
 ピンクの花柄のハンカチで手を拭きながら出てきたペンチ、まだ
ロディ達の血相を変えた顔を見ても状況を把握しきれなかった。
「よかった、ペンチ! 無事だったんだね!?」
「当たり前よ、そんなの。それよりどうしたの? 怖い顔して」
「今、この艦が敵に襲われてるんだ!」
「大変! クレアやルチーナも乗ってるの!」
「あ、そういえばカチュアとジミーもついてきてなかった?」
「そうよ! 私達の後ろをずっとついてくるのよ! もう…」
「いや、そういう問題じゃなくて」
 弟と彼女の漫才をいつまでも楽しんでいるわけにはいかない。
 いくら主人公と言えど、けがをすれば痛いのだ。
 とはいえ、自分だけ逃げ帰るなど毛頭考えない、心優しき少年。
 それが命取りになりかねない。やはり主人公は辛い。

「何だって!」
 台本と違うじゃないか!
 バーツに事情を聞いたスコットは、半狂乱になって慌てた。
「ローデン大佐! そっちにロディ達が、えーっと、合わせて9人
も行ってるんです!!」

「何だと! 9人もか! 見学は2人までって言ったじゃないか!
約束が違うぞお前ら! 責任とれ!! なんだ! えっ!?」
 大人げない発言が自分の気に障ったらしく、慌てて取り繕う。
「…こほん。わかった、見つけ次第すぐにそちらに送り返す」
 嫌な予感がした。
 だが、約束した手前、今更渋るわけにはいかない。
 それが大人というものだ。
「すまんがそういうわけだ。彼らを見つけ次第片っ端から放り出せ!」
「はっ!」
 9人の捜索願いに、3倍近くの25人を動員した。
 これでは戦闘に勝てるはずがない。予感以前の問題である。

 艦内をくまなく走り回り、くたくたのロディ達。
「それにしても、やることが大胆だなぁ…?」
 兄は、これだけの人数が勝手にくるはずはないと、弟をシメた。
 フレッド達は、補給物資をもっと手に入れたくて、この艦の中を
さまよっていたと話す。
 確かに皆あちこちの部屋に散らばり補給物資奪取活動に勤しんで
いた。
 中には目的を見失った者もいる。クレアなどは…
「せっかくSMAPのポスター見つけたのに! あれ欲し〜い!」
と、女性士官の部屋の前で大騒ぎする始末。
「さあ、ジェイナスへ帰ろう!」
「小型でもシャトルがあればいいんだけどなぁ… ん?」
 ロディとケンツは、もう一人いることを聞かされてはいなかった。
「遅かったなぁオマエら!」
「シャ、シャロン!?」
 格納庫ではシャロンがコンテナーの上でリンゴをほおばっていた。
「のんきな奴だなぁ!?」
「オマエ程じゃねーよ、ケンツ!」
「何だとぉ! ちゃんとやることやってたんだぜ!」
「待てよ、今は仲間内で争ってる場合じゃない。ジェイナスへ帰る
ことが先だ!」
 う〜ん、決まった!
 さすがは主人公である、と言いたいところだが…
「なあ、オレ思うんだけどさ、あっち帰るのめんどくせーからこの
艦乗っ取っちまおうか? こっちの方が強そうジャン?」
 シャロンから想像を絶する答えを返され、茫然自失のロディ。
「色塗り替えりゃわかんねーだろ?」
「いくら何でも艦の形が違うから駄目よ!?」
 カチュアがやけに真面目に答える。
「じゃ、やっぱこいつで逃げるっきゃねーか!」
 シャロンの指差す先には、あこがれの新型RV「トゥランファム」
が立っていた。
 しかもそのうちの一機は、でっかいランドセルを背負ったような
姿になっている。
 コンテナーをワイヤーで機体にぐるぐる巻きつけてあるのだ。
「あれ、もしかして?」
「そーだよ、『補給物資』だよ? オレが括り付けたんだ!」
 何が補給だ、何が…
 コンテナーを背負うその姿は、夜逃げそのものである。
 想像するだけでロディは情けない気分を拭い切れなくなった。

「少尉が負傷したようです」
「こちらも重傷との連絡がありました!」
「第3ブロックの…」
 ええい、どいつもこいつも!
 胃の痛くなるのを抑え、ローデン大佐は陣頭指揮をとり続ける。
 まさか、いや、やはり彼らは…
 嫌な予感は当たっていたようだ。というより当然の結果なのだが。
「大佐! RVに誰か乗っているようです!」
「何? 回線を回せ! モニターは映せるか?」

「誰が乗っている!?」
「ローデン大佐! 僕です! ロディです!」
「おお、君か。連れも全員一緒か?」
「は、はい、それが…」
「どうした?」
 ぶしつけな質問の仕方に、ロディは苛立ちをおぼえる。
「…わかりませんか?」
 2人乗りと決められた乗り物は、よくて3人までしか乗ることは
出来ないものである。
「ぎょえーっ! くるしいーっ!!」
「あ、ちょっと、変なとこ触らないで!」
「ケチケチすんなって! ンクククッ!」
「やめろよ! それに、そんなこと言ってる場合じゃないだろう!?」
「そーだそーだ! それと、お前らもう少し痩せろよな!」
「あの、僕…」
「別にあなたに言ったわけじゃないわ」
「あれ? キャノピー閉まらないの? まさかあたしのせいで重量
オーバーなんてことないわよね? ね! ねっ!!」
「そんなこと言われても… あっ! それ、触るな!」
 トゥランファムが右足を前へ出し、一歩歩いた。
 機体が右へ傾く。
「ぐわっ!!」
 コックピットから見て一番外側になるシャロンが大きく右へ投げ
出されそうになる。
 補給物資満載のコンテナーを背負ってまともなバランスを保てる
はずがない。
「まずい!」
 当然その事に気付き、急いで姿勢を持ち直そうとするロディ。
「にゅにゅーっ!!」
 今度は当然左へ振り回されるシャロン。複座ポッドの先端部分に
しがみつくのがやっとである。
「バッキャロー! オレを殺す気かぁ!」
「伏せろシャロン! 前が見えない!」
 ここで伏せなければ、彼女は真っ先に整備クレーンの餌食になる
ところだった。

「大佐、すみません、勝手に持ち出して」
「構わん。操縦法はバイファム等と同じだ!」
「わかりましたっ!! でも…」
「そこのトゥランファムは元々君達のものだ。構わん、早く逃げろ!」
「やったぁ!」
 一斉に喜ぶロディ達御一行。
 皆、慌ててぎゅうぎゅう詰めのコックピットから降りる。
「い、いや、君達、そういう意味では…」
「あたしいちどらうんどばーにあんにのってみたかったの!」
「あたしもよ。でもこれ、調理器よりも難しそうね?」
 女性最年少のルチーナと最年長のクレア。
 あまりにも、あまりにも危険なふたりである。
「大体君達全員操縦出来るというわけでは…?」
「操縦は任せて! 砲撃手の方をお願いね、ジミー!」
「う、うん…!」
 歩く説明書のカチュアとジェイナス一の砲撃手ジミー。
 こちらは、なかなか戦力になりそうだ。
「何なら護衛を回してもいい! だから…」
「大丈夫だよ、ペンチ。僕が守ってあげるからね!」
「嬉しい! お願いね、フレッド」
 もはや説明不要のラブラブカップル、フレッドとペンチ。
 マシンもパイロットもオーバーヒート寸前である。
 ロディとケンツは最初のトゥランファムにそのまま乗り込む。
 もう、ローデン大佐は何も言えなかった。
 そして…
「お、おい、オレは!?」
「知らねーよ! 一人で乗れば!」
「んなのねーよぉ! おーい!」
 あわれ、シャロンの運命やいかに。

「な、何だあれは?」
 ローデン大佐はモニターを見てそう叫んだ。
 5機のトゥランファムが飛んでいく。
 ただでさえ大幅な戦力ダウンなのだが…
 彼が注目はそのうちの1機のみである。
 そう、ロディ&ケンツの操縦するトゥランファムが背中に巨大な
コンテナーを背負っていることに、今頃気付いたらしい。
 あいつら、鬼だ… 血も涙もない奴らだ…
 もう泣きそうである。故郷に帰りたいとさえ思う。
「大佐、よくあれでジェイナスが無事航行出来ますね?」
 部下の言葉をもっともだと思ったのか、静かに深く頷く。
「うーむ… アレの力か」
 ふと、スコットの、勘違いしそうな説明を思い出す。
 (ああ、あれっすか? ケイトさんのおもちゃっすよ!)
 (なんか変なもんを飛ばすらしいんすけどね?)
 (ま、粗大ゴミの日まで仕方なく置いてあるんすよね!)
 ローデン大佐は、今すぐにでもケイトのおもちゃ、もとい、あの
遺跡を自分のものにしたいと思った。
 もしアレがあったなら…
 せめて、総集編を除いても、あと2話くらいは出番が…
 その思いを胸に秘め、毅然とした態度で戦闘に臨む。
 さすがは大人の決断である。
 だが、先程からの不吉な予感は拭い切れなかった。
「やはり、噂は本当だったようだな」
「どうなさったのですか、大佐?」
「大人は… そう、彼らと行動を共にした大人は、皆…」
 これが大佐の最後の言葉だったとは、悲しい限りである。

 駆逐艦レーガンはジェイナスの眼前で、もろくも沈んだ。
「クレア! カチュア! ペンチ! ルチーナ! ロディ! はぁ、
はぁ、ケンツ! はぁ、はぁ、えーっと、あと誰だっけ?」
 スコットの叫ぶ様を見て、こいつ露骨だな、と鼻で笑うバーツ。
 要するに、彼の頭の中ではそういう順番になっているらしい。
 さすがのキャプテンでも、9人もの仲間に対して大声で叫ぶのは
たまったものではない。次からは4人以内にして欲しいと願う。
 その時である。
「ああっ!」
 爆発の中からジェイナスへ向かい飛び出したRVが、モニターに
映し出されたのだ。
<<スコット! 今、脱出した!>>
「ロディか! みんなは?」
<<ああ、多分無事だ!>>
 多分…?
 そう思ったのもつかの間。
 迫る! 迫る! 迫る!!
「ちょ、ちょっと待ってくれよ! うわっ!!」
 ゴイ〜ン!
 鋭く激しい音と共に、モニターに超アップで映るトゥランファム。
 というか、激突しているわけで…

「あれ、片付けなきゃだめだな。俺、ネオファムで出るぜ!」
「アタイも行く!」
「マキくらい残っててくれよぉ」
 勢いの腰を折る、なんとも情けないキャップである。
「そうだね。ブリッジ、がらんどうだもんね」
「おい、スコット。一つ言っとくがなぁ」
 慌ててキャプテンに詰め寄る戦闘要員。
「どうしたんだい、バーツ?」
「わかってんだろうな?」
「…わかってるよ」
 要するに、男と男の決まり事なのだ。
 だからこのやりとりを見ても、マキは首を傾げるばかり。

「シャロンの応答がないわ!!」
「きっと、射出時のGに耐えられなかったのよ!」
 いつになく冷静に推測を立てるカチュア。
「以前こんな場面をどこかで観たことがあるの!」
 相変わらず博学である。
 一番最後、少し遅れてトゥランファムに乗り込んだ、一人ぼっち
のシャロン。慌てて飛び出したのはいいが加速を付け過ぎて本人が
失神している。
 そりゃジェイナスにもぶつかるわな。

「クレアおねえちゃん、おもしろかったねーっ!」
「そうね、また乗りましょうね、ルチーナ」
「はーいっ!! あ、マルロにじまんしてこようっと!」
「ペンチ、大丈夫だった?」
「ありがとう、フレッド!」
 何だか楽しそうな面々。
 本当に、無事に帰ることができたからよかったようなものの…
「こんなにたくさんあったって、しょうがねーだろ?」
 ため息混じりのバーツ、もっともな意見である。
 誰が整備するってんだ? まったく…
 青いRVがぎゅうぎゅう詰めの格納庫。
 はしゃぐのはケンツばかりである。

「まったく、みんな無茶ばっかりして! 僕の苦労も考えてくれよ!
 とはいえ、予想以上に補給物資を整えることができたから安心だ。
 さあ、ガキんちょでもじーさんばーさんでも誰でも来いってんだ!
 いやあ、疲れた疲れた。あ、そうか。ローデン大佐、誠にお悔み
 申しあげます。ジェイナスを代表して、挨拶にかえさせて…」