<バイファムって、つよい?>

「あーあ、またまけちゃったぁ!」
「ルチーナよわいなぁ!」
「なによ! たまたままけただけじゃない!!」
「うそばっかり! さっきもまけたじゃないか!」
「そんなことないもん!」

「あれ? 二人とも、何やってるんだ?」
 ロディがふと立ち寄ったガラクタ倉庫のような部屋で、マルロとルチーナが取っ組み合いの喧嘩していた。
「あ、ロディおにいちゃん!」
「こんな所で喧嘩なんかしてちゃ駄目じゃないか!」
「ねぇ、おにいちゃん、バイファムってつよいんでしょ?」
「は?」
 ルチーナの突然の質問にしどろもどろのロディ。
「強いっていうか、その… うーん、何をどう言えばいいのかな」
「ルザルガっていうのよりつよいんでしょ!?」
「強いっていうのかなぁ? 互角だと思うけど…」
 鬼気迫るルチーナに押されながらも、ある種公平な立場を貫こうとするロディ。うーん、オトナだ。
「ごかくってなによ!」
「お、おちつけよ、ルチーナ。どっちも同じくらいってことさ」
 冷静に発言するロディだったが、彼の平常心はここまでだった。
「…じゃあ、よわいんだ、バイファムって」
 ガーン!!
 あまりに唐突かつ些細な彼女の一言により頭が割れそうな程のダメージを受けた、「自他共に認める」ジェイナスエースパイロット。
 バイファムが… 弱い!?
 一体、何がどう「弱い」っていうんだ!!
 そんなロディにマルロがもう一言お見舞いする。
「ほら、やっぱりそうだよルチーナ! いちどもかったことないじゃんか!」
 ガガーン!!
 弱いって「勝てない」ことなのかっ!!
 いや、待てよ… 「何に」勝てないんだ?
 一縷の望みを託して、必死の弁明を試みるロディ。
「あ、あの、弱いっていうのは、そのぉ…」
「だって、ぜんぜんかてないんだもん!! だからよわいの!」
 もう黙っていられない! と、「銀河漂流バイファム 逆上のロディ」状態。
「ちゃ、ちゃんと勝ってるじゃないか! この間の戦闘の時だって… あっ!」
 折角の勢いに自ら水を差す。
 ロディには思い当たる節があったのだ。
 そうか、この前バーツと撃墜数競争で負けてトイレ掃除やったのがバレたのか? もしかして、その時トイレで転んだのも… しかし、あれは俺とバーツだけの秘密だったはず… あいつ、バラしたのか!?
 メラメラと燃え上がる親友への疑惑の炎。
 違うんだ! あの時は、前の晩に昔エアチェックしてた頃のテープの整理でフレッドと徹夜してたから寝不足だったんだ!
 さらに燃え上がる弟への怒りの炎。
「でも、ほんとうによわいんだよ、さっきだって…」
 ギクッ!! 言及されたと思ったのか、慌てて言葉を遮るロディ。
「い、今まで無事にこの旅を続けられたのはバーツやみんなのおかげだけど、俺の乗ったバイファムもその中の…」
 自分も含めた「全員」の功績と、この期に及んでまだ優等生な発言をしたのが命取り。
「そうだ、ロディおにいちゃんがバイファムうごかしてるんだよね! じゃあバイファムだけじゃなくて、ロディおにいちゃんもよわいのか!」
 ガガガーン!!!
 マルロ! どうして話がそっちに行くんだーっ!!
 もはや議論の余地無し。マルロとルチーナはすっかり意気投合、ロディをエースパイロットの座から引き摺り下ろすことで合意した。ロディに勝ち目はない。
「くそっ! バーツ! フレッド!! どこだーっ!!」
 屈辱を晴らしにガラクタ倉庫から出た涙まじりのロディの行方を、誰も知らない…

「あーあ、ロディおにいちゃんどっかいっちゃった…」
「しょうがないから、またつづきしましょうよ、マルロ!」
「うん! …そっか、そのバイファムにはロディおにいちゃんがのってたんだね?」
「でもおにいちゃんじゃだめだったから、あたしががんばってバイファムをつよくしなくちゃ!」
「そうだね… あ! もう、ルチーナ! つうしんケーブルがはずれてるよぉ!」

「バーツ! あの事は誰にも言わない約束だったろう!?」
 血相変えてブリッジに飛び込んできたロディに一同唖然。
「は? おいロディ、何をそんなに…」
「とぼけても駄目だ! みんなにバラしたんじゃないのか!?」
 疑心暗鬼状態のロディ。エースパイロットの意地もある。
「誰にも言ってないって」
 あくまで普通の応対をするバーツ。
「しかし、バイファムが弱いって、マルロやルチーナが…」
「なーんだ、そのことか」
 その、こと?
 聞き返そうとする悪友を制止して、主のいないキャプテンシートに座り、コンソールへ手を伸ばす。
 艦内通話の受話器を取り出すと、ピッポッパとダイアルを押した。
「今のところどうなってる?」
 当たり前だが、どこかに繋がったらしい。
「ふむふむ、結構強くなってきたけど、まだまだってとこらしいぜ?」
 …それは俺に対して言ってる言葉なのか!?
 怒りのロディが詰め寄ろうとするのをさらに制止するバーツ。
「ふーん、使い勝手が悪い? 基本性能はいいって言ってるけど」
 なんだ、俺の事じゃないのか…
 ホッと胸をなで下ろすが、それでもバイファムの事を戦力的に劣ると決めつけられたようで、やはり腹の虫がおさまらない。
「だからバイファムは全然使ってないんだとさ」
「おいバーツ、一体誰と話してるんだ!?」
「マキだけど、それがどうかしたのか?」
「そりゃあ元々いつもパペットファイターで… あっ!」
 折角の勢いに自ら水を差す。
 ロディには思い当たる節があったのだ。
 まさか、マキは色々と冷静に分析して、パペットファイターの方がバイファムより戦力的には上だと判断したのか!?
 今までRVには乗らなかったのはそういうことなのか!?
 だとすると俺は、俺は…
「くそっ!」
 ブリッジを飛び出した涙まじりのロディの行方を、誰も知らない…

「ねぇバーツ、さっきなんで艦内通話であんなこと聞いてきたの?」
「ああ、ロディがブリッジで『バイファムは弱くない!』って騒ぎ出したから、一番進んでるお前に聞いてみようと思ってさ」
「でも確かに使い勝手が良くないように思うんだよね、バイファムって」
「そうかもしれねーな。確かに俺もいまいちコツが掴めねぇし」
「科学系のロボットだったら、やっぱレイズナーかな、アタイなら」
「確かにな。でも俺だったらドラグナー使ってみるけど」
「ふぅん、そうまで言うなら今ここで対戦しようか?」
「そうだな、レベルの差だけじゃないってことを教えてやるか!」
「アタイの『プリティーQ』ちゃんをナメたら痛い目に遭うよ!」

 終わり