<使い道いろいろ>
「ねぇバーツ、アレ、どうなったの?」
「ああ、アレか。いらねーって言ってたけど、結局オヤジとオフクロに、ぽーんとくれてやったよ。『好きなもん買え』ってな」
「ふーん、顔に似合わず親孝行なんだ」
「俺もフレッドも全部使ったけど、親のためとか家計の足しになんてちっとも思わなかったなぁ」
「じゃあ、マキやロディは、何に使ったんだ?」
「アタイは半分もらって、色々と小物をね」
「俺の場合は、知らない間に消えてったって感じだな。えーっと、何買ったんだっけ?」
「フレッドは何買ったんだ? 兄貴と似たようなもんか?」
「僕はね、貯金と合わせて自転車買ったんだ! ペンチ、今度一緒にサイクリング行こうね?」
「え、ええ…(私、約束破って志賀直哉文学全集とか買っちゃったんだけど…) そ、そうだわ! ケンツも何か買ったの?」
「俺はなんてったってモデルガンだな! 知ってっか? この前売り出してたニューモデルの…」
「…ジミーは?」
「話そらすなよっ!! 今、俺がしゃべってるとこだろ!?」
「バーカ、そんなくだらねーオマエの自慢話ばっか聞いてられっかっての」
「…貯金、しようかな、って」
「なーに行ってんだよおまえ! お金じゃねーんだから貯金なんてできねーよ!」
「…そう、なの?」
「おや? みんな、一体何の話をしてるんだい?」
「あ、スコット、遅かったな」
「『地域振興券』の話をしてたんだけど」
「ちいき… 何だい、それは?」
「知らないのか? 春にもらったろ?」
「ジーチャンバーチャンやガキんこのいる家にくれる商品券じゃん。マシで知らねーの、キャップ?」
「えーっ! ぼくそんなのパパからもママからももらってないよ?」
「あたしも! ねぇ、それってなんでもかえるの?」
「ま、まあ、マルロやルチーナがもらえないのはしょうがねぇよな?」
「なんで! どーしてよっ!?」
「小さい子どものいる『おうち』に配られる券だからなのよ? 直接私達のものというわけじゃないのよ」
「じゃあカチュアおねーちゃん、どーしてケンツにーちゃんはモデルガンかってんの!?」
「そ、そりゃあお前、俺ん家にも色々事情があってだなぁ!」
「そうか、そんなものが… クレア、君は知ってたかい?」
「ええ、もちろん。うちの場合は問答無用でパパやママの手元にあるけど」
「それじゃマルロやルチーナと同じか。渡したらあっという間に使っちまうからじゃないのか?」
「何か言った、ロディ?」
「い、いや、何も」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! それじゃあ、僕だけが知らなかったってこと?」
「ぼくもしらなかったよ!」「あたしも!!」
「…君達はいいとして、これはまずい! 今すぐもらいに行かなくちゃ!!」
「こうして僕は両親を探す旅に出た。『地域振興券』を手に入れるために、僕は何としてでも父さん母さんに逢わなければならない。辛く苦しい旅になるだろうが、みんなと力を合わせて、必ず『地域振興券』を…」
「ごちゃごちゃ言ってないで、さっさともらって来いよ? 家庭の事情によっては交渉次第かも知れないけど」
「わかってるよ! もう、雰囲気台無しだ…」
終わり