<ある軍曹の一日>

06:30 起床。
 食事当番のため、いつもより早起き。
 洗面所で歯磨き、洗顔。誰かさんと違って虫歯はないようだ。
 部屋に戻ると、3枚の写真を前に毎朝恒例の敬礼を行なう。
 「父ちゃん、兄貴、そして敬愛なる将軍に敬礼!」
 その直後、毎朝恒例の同僚の飛び蹴り。毎朝余程嫌なのだろう。
 同じく食事当番である別の同僚を起こすも、目覚めが悪い。
 強引に手を引き部屋を出るが、髪型のせいで寝ているのか起きているのかわからない。

06:50 朝食調理開始。
 「納豆だけはやめてくれ」とのキャプテンの要望を無視し、納豆主体のメニューを提案。
 同僚も応じたところで、最終的なメニューを作成。
 本日の朝食はコンソメスープ、ベーコンエッグ、納豆の3品。
 ちなみに御飯はジェイナス食堂御用達のクレアドコマチ。

07:30
 ブリッジ要員1名を除き食堂に集合。キャプテンの号令にて朝食開始。
 「なんだぁ? ベーコンかたすぎるぜ!」
 「ほんとだ。コショウも足りないみたいだし」
 「何、このスープ! 辛過ぎるよ、これ!」
 「ねえ、御飯もかたいわ!」
 「もっとメニュー増やせなかったのか?」
 「これじゃひどすぎるよ!」
 「ほんと、ひっでー出来ジャン!?」
 「納豆はやめてくれって言ったのに!」
 …クルーにはおおむね評判のようだ。

08:30 戦闘訓練。
 宇宙戦闘の訓練をシミュレーターを使用して行なう。
 本日の課題は「敵奇襲時の宇宙ステーション防衛」。
 最近はネットワーク上の情報転送量も飛躍的に向上しており、複数対戦が可能である。
 また、あるシチュエーションでの戦闘訓練中の飛び入り対戦などお手のものである。
 「な、なな、何だぁ!? いきなり入ってくんなよっ!」
 前方より軍曹機被弾。両手・右足大破。パイロット死亡確率70%。
 「戦闘中にそんなこと言えんのか? オマエがワリーんだよ! ンクククッ!!」
 「ちっくしょー! こんなのずるいぜ!」
 本格的な実戦向き仕様のシミュレーターはパイロット達の腕を確実に上げている。

11:00 30分間休憩。
 同僚とチェスを行なう。
 「はい、チェックメイト! へへえっ、また勝っちゃった!」
 「ほんとに弱いな、オマエ…」
 「何だよ! なんで俺ばっか負けるんだよっ!! こんなの詐欺だ! インチキだ! 敵の謀略だっ!!」
 「んなわけねーだろっ!!」
 「ってて… 何も拳骨で殴ることねーだろっ!」
 たった30分で5回もチェスの試合が出来る、幸せなひととき。

11:30 昼食調理開始
 当番の同僚を呼び出す。自らを省みず、菜園管理の同僚に徹底的に手を洗うよう指示。
 「じゃあ納豆入れといてよ!」とのキャプテンの嘆願を元に、納豆中心のメニューを提案。
 同僚も応じたところで、最終的なメニューを作成。
 本日の昼食は納豆スパゲティとツナサラダ。デザートはクレアドみかんを一人2個。

12:00 昼食
 ブリッジ要員1名を除き食堂に集合。キャプテンの号令にて昼食開始。
 「だからカタいって言ってるだろ!」
 「そうかなぁ、アタイ、このくらいの方が好きだけどなぁ?」
 「兄さんはタラコスパゲティの方が好きだよね?」
 「そうなの? ところであなたはどのスパゲティが好きなの?」
 「確かにタラコスパゲティは好きだ。でも俺は納豆スパゲティでもいいけどなぁ」
 「あ、何だか主人公らしい台詞ね、それ?」
 「やっぱ何やらせてもダメだな、アイツ!」
 「まんじゅうこわい、まんじゅうこわい…」
 …今回もクルーには好評のようだ。

13:00 休憩。
 任意で休息をとる。
 「バーカ! 勝手に寝てんじゃネーよ!!」
 「ちょっとくらいいいだろ! 食事当番で疲れてんだからさぁ!」
 「何言ってんだよ! お前今日は掃除係だろ!」
 「え? そうだっけか? もーいーだろ、勘弁してくれよ…」
 たとえつかの間でも、休息は次なる目標への活力につながる。

13:30 掃除開始。
 今日はブリッジの掃除である。
 床・壁・機材の外壁等を、同僚と丁寧に磨き上げる。
 「おい、そっち出来てるか?」
 「うん、オッケーだよ!」
 「あのね君達…」
 キャプテンが若き後輩を指導する。
 「ほこりってもんは、もっと丁寧に拭き取らないと… ほら、まだこんなにほこりが。上っ面だけ拭いたって駄目なんだからね! もっと懇切丁寧に…」
 「今日のキャプテン、すごく怖いね…」
 「ほんとだぜ。まるで小姑みてぇだな?」
 「何だって! 誰のせいでこんなに頭に来ていると思ってるんだ! えっ!?」
 分け隔て無く平等に後輩を扱うキャプテンの凛々しい姿は他のクルーの感動を呼ぶ。

15:00 ティータイム
 「お前食べてばっかりじゃないのか?」
 「んなことねーよ! 俺だってちゃんと仕事してるんだぜ! な?」
 「そうだよ。兄さんはすぐ僕達が遊んでるって思うんだ!」
 「そんなことないさ。だけど、今日のお前らは…」
 「ちゃんと仕事してるんだから文句ないでしょ! 大体ディルファムの時だって…」
 「何ぃ! あの時はお前の事を考えて…」
 「兄さんこそ何だよ! 本当に僕達の事を…」
 「考えてるさ! お前がわかってないだけだっ!!」
 「いーや、兄さんの方が何にもわかってないっ!!」
 …兄弟喧嘩は軍曹も食わない。
 ちなみに、今日のティータイムは手作りクッキーとハーブティー。

15:30 機動兵器類点検。
 艦内に搭載されている機動兵器類のチェックおよび保守を行なう。
 特に軍曹は丁寧に点検を行なうことでクルーからも一目おかれている。
 「ほんと、愛情たっぷりに磨いてるもんなぁ、軍曹は」
 「他にやることねーのかよ、あいつ?」
 「なんか危ないなぁ? このまま行くとRVと一緒に寝たりして!」
 「いやまったく。ありゃあいつの彼女だなぁ!」
 「何だよそれ! めちゃくちゃ言うなよな! それにいーだろ別に念入りに点検したって! 役に立つことやってんだからさぁ!!」
 その通りである。普段からの心構えの違いが成果となって現れるものである。

17:00 夕食調理準備。
 当番の同僚を艦内放送により呼び出す。

17:30 夕食調理開始。
 「ばーか、どこ行ってたんだよぉ!」
 「ご、ごめん、こんな時期にベルウィックアサガオが咲きそうだったから、見てた…」
 今回意見の無かったキャプテンの心意気を考慮し、納豆主体のメニューを提案。
 同僚も応じたところで、最終的なメニューを作成。
 本日の夕食は納豆ラーメン、クレアド菜チャーハン、ベルウィックギョーザの3品。
 チャーハンのお米はやっぱりクレアドコマチ。

18:00 夕食調理開始。
 ブリッジ要員1名を除き食堂に集合。キャプテンの号令にて昼食開始。
 「なんでラーメンまでカタいんだよ!!」
 「それに、昼にスパゲティ食べたところじゃない! アタイ麺が続くの、ヤだなぁ!」
 「今夜はチャイニーズだね?」
 「こういうのもたまにはいいわね? あ、チャーハンのお米がちゃんとカタいわ!」
 「うん、これ美味しい! 特にこのギョーザが!」
 「うっ、にんにくのにおいが… あっちいって!」
 「あれ、キャップ、食べないの!? 納豆ラーメン」
 「…」
 …軍曹はつくづくクルーに評判のよいメニューを出すのが得意なようだ。

20:30 入浴。
 全員が入浴を終えるまで、同僚と夕食の後片付けをしながら待機。
 「参っちまうよなぁ! でも俺達は最後でなきゃまずいからなぁ」
 「う、うん…」
 心優しき軍曹の一面を垣間見る瞬間である。

21:30 就寝。
 「やめろよ! なんで俺にばっか!!」
 「だって軍曹が一番丈夫そうだから! ね!」
 「う、うん…」
 「いててっ! いい加減にしろっての!」
 同僚との楽しいひとときの後、軍曹以外は就寝。

22:50 夜食。
 本日最後の仕事へむけ、夜食をとる。
 今度はキャプテンがいないため納豆抜きのメニューを検討。
 とは言っても、どのみちカップラーメンである。
 正規の三食調理以外の料理を調理をするためにコンロ等の食堂の機材を使う事は許されていない。

23:00 定期巡回。
 軍曹の本日最後の仕事は、深夜における艦内の警備と点検である。
 食堂から各艦内施設・格納庫をまわり、ブリッジへのコースを時間をかけて巡回する。

 <女子寝室A>
  「あっ! ああっ!! ああーっ!!!」
  「どうした!? 入るぞ!」
  「あ、ああ、足がつっただけだから、入らないで!!」
  「…」
 <菜園>
  「お前まだ起きてたのか!?」
  「だって、ベルウィックアサガオが…」
  「そりゃわかったから、早く寝ろって!!」
  「…うん、わかった」
 <格納庫>
  「今日は参っちまったなぁ… ぶぱーっ!!」
  「まったくだ。納豆も嫌いじゃないけどさ… ふぅーっ!!」
  「やっこさんの顔ったらなかったぜ! はぁーっ!!」
  「こらぁ!! 格納庫内は火気厳禁だっての忘れたのかっ!!」
 <ブリッジ>
  「むむ… むにゃむにゃ… だめだって… そんなとこ…」
  「ただいま巡回終わりましたっ!! 異常無しでありますっ!!」
  「わっ!! わわっ!! 何だ! 何かあったのかっ!?」
  「だから異常無しだって言ってるじゃんか!! では、失礼しますっ!!」

 こうして軍曹の長くて辛い一日が終わろうとしている。
 だが、これからも厳しい日々が続く。たとえ就寝するにあたっても、気を引き締め直すために三枚の写真を広げ、本日の報告を行なう。
 「父ちゃん、兄貴、そして親愛なる将軍閣下! 本日も無事平穏に…」
 「毎日毎日うるさいよー!!」
 同僚の飛び蹴りもあって、軍曹はようやく眠りについた。

 終わり