<アタックNo.13>

「さぁ、いよいよククトとの一戦ですねぇ、解説のロディさん!?」
「そ、そうですね、あはは。若干緊張してます」
「肩の力抜いて抜いて! では、今日の見どころはどのあたりでしょうか、同じく解説のジミーさん!?」
「あ、あの、ぼく…」
「ありがとうございました。あ、申し遅れました、実況は俺… い、いや、私、バーツ=ライアンでお送り致します。お、証明が消えました! いよいよ地球チームの選手にゅ〜じょ〜です!! ちなみに、既にククトチームのメンバーは入場を終えております」

♪ゆーあーまいそーそー いーつーも…

「地球の超アイドルのデビューソングにノって、まず入って来たのは、我らの誇るスーパーエース、マキ=ローウェル! いいぞ、マキーっ!!」
「あ、あの…」
「おい、バーツ!?」
「…失礼致しました。続いてはこちらもエース級アタッカー、カチュア=ピアスン!」
「ガンバレー! カチュアぁ!!」
「お前だって叫んでるじゃねーか!」
「ま、まあ、いいじゃないか。それより次、つぎ!」
「あの、ぼく…」
「今大会セッターとして大活躍のシャロン=パブリン!!」
「シャロンがセッター?」
「結構練習したんだとさ。続いて、魅惑のサーバーにしてバックアタックの名手、ペンチ=イライザ!」
「フレッド、練習台にさせられてたもんなぁ」
「ハイタッチが続いております。お次は名レシーバーにしてキャプテン、クレア=バーブランド!」
「いーぞ! 地球の誇る重戦車!」
「赤いヌリカベ!!」
「あのね、マキの…」
「スーパータイツレディ!」
「自称ジェイナスの小さなママ!! …シャツ引っ張るなよ、バーツ?」
「…えー、あまり誉めすぎると放送後に多大なクレームが本人より来ることになるため、ここらで控えさせて頂きます」
「そ、それがいいな、うん」
「そして最後は… リベロとして大活躍? のラッキーレディ、ルチーナ=プレシェット!」
「あれがレディ? ハイタッチ出来てないぞ!?」
「あ、あの、帽子、その…」
「本人がそう言えってうるさいからよぉ」
「なるほどな。あーあ、みんなしゃがんで…」
「ちなみに、一説によると、彼女は前回の試合であまりにもタッチネットがひどかったため、今大会より公式戦初の正式ルール化された『リベロ』というポジションになったとか」
「ありえるありえる! どうせピョンピョン試合に関係なく飛びついて… っていうか、ネットにタッチ出来るのか!?」
「あの…」
「ん? さっきからどうしたってんだよ、ジミー?」
「あの、マキ、帽子、かぶってるけど、いいの?」
「…」「…」

「さぁ、ついにギャラクシーカップ最終戦、試合開始! まずはククト側のサーブ!」

 そーれっ!!

「強烈なジャンピングサーブですねぇ、ロディさん!」
「まったくだ。メル選手のパワーには毎試合驚かされる」
「うまくレシーブしたぞ、クレア! そのボールを… あ−っ! なんと、ルチーナの顔面に直撃! いきなり泣き出したぞ! いけませんねぇ、ロディさん?」
「やっぱり、ルチーナのリベロには無理があるんじゃないのか?」
「じゃあ、ロディだったらどこ守らせるんだよ?」
「…」

「第一セットも早中盤、ここで地球側が2回目のタイムアウトです」
「みんな息があがってるみたいだ」

「ちょっとケンツ! どうするのよ!?」
「そーだよ! アタイんとこに全然ボールが集まんないじゃない!」
「待てよみんな! 落ち着けって!」
「落ち着けなんて無理よぉ!」
「どーでもいーじゃん、何とかなるって、ンクククッ!」
「シャロン! あんたクイックだって時にどうして」
「あんときゃブロック飛んでただろ! ペンチに飛ばせるのがセオリーに決まってんジャン!」
「あの時、すごくアタックし辛かったのよ! 合わせるならちゃんと合わせてちょうだい!」
「オレのトスが気にいらねーってのか!」
「いいから俺の話を聞けって!」
「みんな、ケンツが監督なんだから、話を聞きましょう!」
「…やっぱり狙うなら動きの鈍いリグレーだ。マキにボールを集めて、集中してリグレーを狙え!」
「…いいの?」
「…いいよ。あと、ルチーナを徹底的にカバーするんだ! ルチーナのところにボールが飛んだらこの試合は負けたと思え、いいな!」
「しつれいしちゃうわ!」

「ロディさん、このタイムアウトの後から、地球側がいい動きに変わりましたね?」
「ルチーナをかばう健気なチームメイトの姿が俺達の心を掴んで離さないんだ」
「じゃあ作戦はそれ一本に限って…?」
「いや、それだけじゃない。その健気な姿とは裏腹に、露骨なまでにリグレーを集中攻撃するしたたかさ、驚いたなぁ、こんなにまで」
「あ、あの、僕…」
「何だ、ジミー、今度はすぐ聞いてやったからな?」
「トイレ、どこ?」
「…」「…(ラジオドラマと同じ手を使いやがって)」

「さぁ、いよいよ第一セット大詰め、22−21で地球が逆転したところでククト側がようやく始めてのタイムアウトです」

「ふぅ…」
「どうしたの、ルービン? いつものキレがないわ?」
「いや、大丈夫、それにしても、やつら、リグレーを露骨に狙ってくる」
「こちらだって同じよ。ルチーナ狙いはこれからも変えないわ」
「ごめんなさい、デュボア。なかなかうまく合わせられなくて」
「いいのよ、気にしないで。でも、こうなると、メルのサーブだけが心強いわね」
「ルルド監督、リグレー狙いが続いていますが…?」
「このセットは今のメンバーでいく。次のセットは彼女の投入を考える」

「2セット目も中盤、5点差で地球側がリードしていますね」
「あれ、第1セット、終わったの…?」
「ジミー、遅いって。それにしても、まさか第1セットを地球が取るとは思いませんでしたねぇ、ロディさん」
「まったくだ。あんなに鮮やかに逆転勝ちするなんて、思いもしなかった。このままだとストレート勝ちしそうだけど、ククトには秘密兵器の存在が噂されている…」
「あっと、ククト、選手交代の様です… はぁ!?」
「ケイトさんっ!!」
「あ、あの、僕…」
「な、何と! ケイト選手です! リグレーと交代するぞ! ついにククトの秘密兵器が姿を現したのか!! でもロディ、いいのか?」
「何が?」
「ケイトさん、選手登録されてないぜ?」
「それで?」
「だから、だなぁ…」
「あの、ケイトさんが、その…」
「ケイトさーん! 僕がついてますーっ!!」
「…」

「シャロン、私にボールを回して!」
「で、でも、マキにボールを集めるんじゃ…」
「いいからっ! お願いっ!!」
「わ、わーったよぉ… でもいいんかなぁ、そんな大声出してさ」
「ほら、きたわ!」

「おおっと、格闘転校生マンガばりの空中戦だっ!!」
「す、すごいっ!!」
「スパイクの撃ち合い、軍配はケイトさんに上がったっ!!」
「あれ? ネット越しに何か話してる?」

「ケイトさん! お久しぶりです!」
「カチュア、たくましくなったわね!」

「なんだよぉ! せっかく調子よかったのに! 連続でセット落とすなんて、そんなのありか!」
「だって、ケイトさんのスパイク、すごく強力だから、受けるだけで精一杯なのよ!?」
「そうそう。アタイも手が痺れてきたし…」
「オレ達に恨みでもあったりしてなー」
「何だよそりゃ? だけど、このままじゃ負けちまうな」
「そんな! ねえケンツ、どうすればいいの?」
「ペンチ、それにカチュア、いいか、お前達は出来るだけメルの周辺を狙うんだ。今のククトの中ではそこが一番手薄だからな。ホルテさんやルービンさん、デュボアさん、あとあのわけのわかんない金髪ねーちゃんよりは攻めやすいだろ!?」
「えっ? アタイはどうすんのさ?」
「マキは対ケイトさん専用アタッカーだ。ケイトさんがブロックに来た時は、スーパーエースの腕の見せ所ってわけさ。もちろん逆もありだけど、そいつはタッパの問題で望めそうにないからな。ケイトさんのスパイクは何が何でも上にあげるんだ。いいな!」
「あたしは!?」
「ルチーナはじっとしてればいいの!」
「つまんなーい!!」

「さぁ、王手のかかったククト、この第4セット目で一気に勝負をつけるのか! さて、どうでしょう、ロディさん?」
「ケイトさん…」
「駄目だこりゃ。ジミーさん、このセットのキーポイントは?」
「あ、あの、僕…」
「おーっと、いきなりブロックが決まったーっ!」

「さすがだね、ケイトさん。そう思うでしょ、ホルテさん?」
「ええ、彼女はうちの真のスーパーエースだもの! それに、サーブだって…」
「いくわよ! 必殺ロボトミーサーブ!!」
「!?」

「す、すさまじい! 恐るべき必殺ロボトミーサーブ! ロディさん、解説お願い出来ますか!?」
「俺もあんな技を見るのは初めてだ。だけど、敢えて解説するなら、過去にロボトミー手術を受けた時の影響ではないかと…」
「ほぉ、それはどのような?」
「あの、ケイトさん、おかしいと…」
「あくまで推測なんだけど、自分が記憶を無くしたのと同じショックをボールに与える。そうすると…」
「そうすると!?」
「ボールの方も記憶が無くなり、サーブで打ち込まれたコートないのどこに落ちるのか、ボール自身でさえもわからなくなるというものです。誰にも予測不可能な動きをする、と」
「恐ろしい! そんなサーブがあるとは!! と、解説を聞くうちに、どんどん点差が開いていく! このまま負けてしまうのか? 銀河の藻屑と消えてしまうのか? そんなことはない! 頑張れ、地球代表!!」

<<いいぞぉ! ミス・ケイト!!>>

「ロディ! 俺が今、こんなに盛り上げているのにだなぁ!」
「いや違う、俺じゃない。第一これはハンドスピーカーの声じゃないか! ん、あれは…!?」

「オーナー!」
「? ケイト、あの人は?」
「私の勤めるホテルのオーナーよ。試合を見に来てくれたのね!?」
「あなたのフィアンセとか?」
「とんでもない、清く正しい雇用者と従業員の関係よ、デュボアさん。私の研究を手伝ってくれることもあるの」
「そう… あら、どうしたの?」
「そ、そんな! こんなオンナのどこがいいってのさっ!!」
「ちょっと、何を急に…」
「こっちはどうせ名前も出てないただの脇役さ!」

「おーっと、どうしたんだ!? 今まで一切名前の出なかった謎のククト金髪女性、かつらを取ってコートに投げ捨てたと思ったら、いきなりどこかへ走り去っていったーっ!!」
「選手交代するのか? といっても、リグレー選手しか残ってないと思うけど…」

「レポーターのフレッドです! 今日のMVPは、ルチーナ選手です!」
「どうもですぅ!」
「今日はリベロとして大活躍でしたね!?」
「リベロってなによ!?」
「え、いや、そのぉ… えっと、今日の勝利を誰に捧げたいですか?」
「そりゃあもちろんパパとママ! それからねぇ、マルロ!!」
「そうですか。今日の風呂野球ニュース、楽しみですね!」
「マルローっ! みてるーっ!?」

「以上、MVPインタビューでした… あーっ! ちょっと、物を投げないでーっ!! マイクお返ししまーす、兄さん助けて!!」

「結局、終始リグレー攻めに徹した地球代表の辛勝ってところでしょうか、ロディさん… おい、ロディ?」
「ケイトさん、ケイトさん… ケイトさーん!!」
「あ、あの、僕…」
「それでは、地球代表がフルセットの末3−2でククトチームをくだした試合をお届けしました。明日は移動日、明後日はジワイメルウ中央体育館に舞台を移して、地球対グラドスの模様をお送り致しますので是非ご覧ください! ふぅ…」

「それでは、次は風呂野球ニュース、スコットさーん? うふふっ!」
「はい、あれ、ミセスロビンソン、どうされたんですか? 何を笑ってるんですか? あ、まあいいですね、それでは風呂野球ニュース、今夜もマルロさんと二人でお送り致します。いやあ、凄かったですね、地球代表!」
「すごかったねーっ! ルチーナだいかつやく!!」
「それでは、試合会場で白熱の実況をしてくださったお三方と中継で繋がっているのでお呼びしましょう! ロディさーん!!」
<<そ、それが…>>
「あ、あれ? ジミーひとり? ロディとバーツは?」
<<帰っちゃった…>>
「まったく、あいつらときたら、どうしてそう勝手なことばかりするんだ、ブツブツ…」
<<あの、僕…>>
「えっ? どうかしましたか、ジミーさん?」
<<あの、思うんだけど… ケイトさん、地球人で、カチュアが、ククトニアンで、その…>>
「あーっ!! えーっと、それではマルロさん、試合内容をVTRで振り返りましょう!」
「あのね、ルチーナのね、がんめんレシーブがすごかったんだよ! でもルチーナいたくてないてたけどね! そんでね?」
「あ、ああ、わかったから、次はVTRだって。ほら、カンペ見て…」
「あ、えっとね、うーんとね、ぶいてぃーあーる、どーぞ!!」

 終わり