神様、お願い!  神様への願いは必ず通じるものだ。  家に帰ってきた男が一人、自室に入りベッドに横たわる。 「あの娘は…どうして僕の事が嫌いなんだろう?」  詩的な感情を表現するために女々しく泣くと、白い枕には、涙で オーストラリアが浮かぶ。  こうなると、やはり神頼みしかない。 「神様!」  彼が魂の叫びを放った途端、一筋の雷がこの部屋に落ちた。  そして、おどろおどろしい、ドライアイスのようなもやを足元に まといながら、狂僧のようなおっさんが一人現れた。 「わしゃ神じゃ。何か願い事でもあんのか!?」 「な、何だ、おっさんは!?」 「何だとは何じゃ! わしゃこれでも忙しい身なんじゃ。早う、願 い事を言うてみい、ほれ?」 「て、て、てめえ、新手の空き巣か!」 「無礼者! 最近の若い日本人は、わしの事を金儲けの道具位にし か思っとらんのか! 欧米や中東を少しは見習え!!」  神様と言うわりには、大変不謹慎な説法が飛び交う。 「ふ、ふざけるな! う、うちは金目のもんはないから、は、早く、 ど、どっかいけ! 近寄ったら、き、金属バットで殴るぞ!」 「何じゃと!? この年末のくそ忙しい時に、呼ぶだけ呼んどいで、 どっかいけじゃと!! 天罰をくらえ、このっ、このぉ!!」  彼の頭に、それはありがたいげんこつを3発お見舞いした。 「頼まれんでも出てってやるわい! まったく、こんな奴が現世に おるとは、神も仏もあったもんじゃないわい」  他人事でない内容の暴言をはいて、自称神様はこの場を去った。  彼は身の危険が遠ざかったのを感じとると、ベッドの上で手を合 わせた。 「史上最悪のピンチをお救い下さいましたことを、感謝致します。 ありがとうございました、神様…」  何を頼むかは、あなた次第だ。